第81話『シルバリオン・ソード』
数日後。
執務室で書類にハンコを押すだけの仕事をしているとベルナデットがやって来た。
「ジロー様に会いたいという客が来ています」
「客? 誰が何の用で?」
「シルバリオン・ソードという老齢の男で自分を武官に召し抱えろと言っています」
「知らん名前だな……」
まあ、この世界で知ってる名前なんてほとんどないけど。
「帰らせますか?」
「うーん……」
とりあえず会ってみるか。
俺の直感が何となくそいつと会っておくべきだと告げていた。
そういえばベルナデットは気づいたらまた成長してるな。
今の外見年齢は16~17歳くらい。
身長はそろそろデルフィーヌを抜いてしまいそうだ。
エレンにはまだ及ばないけど。
実年齢は教会の子たちと変わらないはずなのになぁ……。
彼女が違法ババアと呼ばれる日も近い。
「ジロー様? どうされました?」
「いや、なんでもない」
きょとんと首を傾げるベルナデットを残し、俺は来訪者の待つ部屋に向かった。
◇◇◇◇◇
応接室で待っていたのは白髪の老人だった。
口と顎に長い髭を蓄え、鋭い目つきをした仙人っぽい見た目の爺さん。
彼の身体は細身だが、服の下には鋼のように硬い引き締まった筋肉があるように見えた。
ゴリマッチョのゴルディオンとは対照的な細マッチョなジジイか……。
種類が違うとはいえ、マッチョジジイが続くとか胃もたれしそう。
「……あんたは俺に雇われたいんだっけ?」
「はい、我輩を武官として召し抱えてはいただけないでしょうか?」
厳めしい顔つきと凄味のあるキビキビした声で答える細マッチョジジイ。
面接する側なのにこっちが怒られてるみたいに感じちゃうね。
「うーん、じゃあ経歴とかを教えてくれる?」
「かしこまりました。我輩は――」
「ヒロオカ卿、仕官したいという武人が訪れたと聞きましたがッ!?」
バターンッ。
勢いよくドアが開いてゴルディオンが入ってきた。
耳が早いな、ゴリマッチョジジイ。
ちょうどいいや、騎士団長になった彼も同席させて意見を参考にしよう……と思っていたら、
「ぬおっ? 貴様は瞬銀のシルバリオンではないか!?」
「そういうヌシは剛金のゴルディオン? なぜこんなところにいる!?」
こ ん な と こ ろ (二回目) 。
「なんだ、ゴルディオンの知り合いか?」
顔を合わせるなり驚きの声を上げた二人のジジイ。
ここにいるのは両者とも予想外だったようで微妙な空気が漂っている。
「は、はい。この男はシルバリオン・ソード。『瞬銀』と呼ばれ、共和国軍で武術顧問を任されていた武闘家です。こやつの格闘術は幾度となく戦場で魔王軍を退け――」
うん、説明ありがとう。
ゴルディオンと似たような内容だったのでカットした。
要するに彼も魔王軍とやり合える指折りの実力者ってことらしい。
「大した経歴だけど、共和国の武術顧問がなんでウチみたいなチンケな領地に?」
「それは……少々お恥ずかしい話になるのですが――」
シルバリオン氏は僅かに逡巡をした後、そう前置きをして語り出した。
シルバリオン氏はこれまでの武功と実力を評価されて勇者のパーティメンバーに選ばれていたらしい。
そして、先日まで共和国の勇者や他のメンバーたちと魔王討伐の旅をしていたという。
ふむふむ……。
【名前:シルバリオン・ソード】
【元スペルマ共和国軍武術顧問 元勇者パーティメンバー】
【スキル:槍術Lv3 格闘術Lv4 剣術Lv3 物理耐性Lv3 回避Lv4 暗視Lv4 隠密Lv4 危機察知Lv4 気配察知Lv4】
ゴルディオンと同じくらい強力なステータスである。
てか、今さらだけど他の勇者は歴戦の猛者で俺にはフランクだったの酷すぎませんか?
「ですが、我輩は勇者パーティをクビにされてしまいまして」
「…………」
数日前にも聞いた話だなぁ!?
横を見ると、ゴルディオンがプルプル身体を震わせていた。
「なんと、シルバリオン……貴様も追い出されたのか……!?」
「なぬ? ゴルディオン、もしやヌシも……!?」
同じ境遇にシンパシーを感じたのか、二人のジジイは互いに熱い視線で見つめ合い出した。
やれやれ。
まーた、勇者パーティが追放者を出してしまったのか……。
ねえ、勇者パーティは仲間を追い出さなきゃいけない決まりでもあるの?
そういうテンプレがあるの?
俺も誰か追い出さないといけなかったりするんでしょうか?
なんだか不安になってきたゾ。
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