第60話『資源』
山に入り、何班かに別れて探索を開始する。
薄暗い洞窟を俺の光魔法で照らしながら奥に進んでいく。
ひんやりとした空気。
何かしら資源があればいいんだが。
「うぎゃあ、転んだっぺ!」
「なにやってんだぁ。ほら、手を貸してやるだよ」
「おお、すまんさ。……って、あれ? なんかこの地面しょっぱいだよ?」
手に付着した砂を舐めた騎士の言葉が耳に入ってくる。
しょっぱい……? もしや! シュパンッ!
近くの岩を適当に斬り裂く。
断面から透明感のあるピンク色がキラキラと現れた。
指で破片をすくって舐めとると、
「ペロッ……やはり岩塩か!」
よく見れば洞窟の天井、壁、地面すべてが塩で覆われていた。
こいつはすげえぞ。
「おい、ジャードを呼んで来い! それから――」
「りょ、領主様ぁ! 大変だぁ! ちょっと来てくんろぉ!」
「お前は他の山に行かせた別動隊! どうしたぁ!?」
ズダダダダ。隣の山に移動。
「ジロー様、この石についているコレは銀じゃないでしょうか?」
「ほんとだ……銀だ……!」
テンションが上がって隣にいるベルナデットの頭をなでなで。
尻尾もふさふさぁ~。
「りょ、領主様ァ!」
「お前はさらに他のやつに任せたどっかの別動隊の!」
「大変ですぅ!」
「一体どうしたぁ!?」
ひょっとして温泉が見つかったのか!?
「あっ、ジロー様ぁ……」
ベルナデットを残して高速移動。
シュバババッ!
到着。
ええっ、温泉じゃないの?
そんなこと最初から言ってない?
そうだったね……。
「こいつは金……なのか?」
「ふふふ、きらきらだっぺよ……」
報告に来た女の騎士がニマニマ笑ってる。
とりあえず、ネコババすんなよと言っておいた。
「領主様ぁ!」
「なんだぁ!?」
そして――
複数の山を調査した結果……。
俺たちはいくつもの鉱床を発見することができた。
温泉は見つからなかったけど。
くそうなぜだ、温泉は金鉱と関係があるって聞いたのに……。
「たった一日でこの成果とは、大したものですね」
騎士に呼ばせたジャードが舌を巻く。
「のはは! せやろ? 俺ってすごいやろ?」
「……はい」
ジャード曰く、ここまで多くの資源が眠る領地は他に聞いたことがないという。
これで収入も安泰だな! ガッポガッポいけるぜ!
ニコルコを富ませる道筋が見えてきた。
探せばもっといろいろあるかもしれん。
そう、温泉だってきっとあるはず……。
俺はまだ諦めちゃいない。
明日も探検隊だ!
今日も今日とて魔境へ向かう。
整備した道は通りやすいな。
木がなくなった場所にはなぜか魔物も寄ってこないし。
これなら資源を掘り起こす段階になっても安全に作業が進められそうだ。
俺のうろ覚えな知識によると、金鉱のある場所には温泉がある可能性が高い。
地熱水がアレで熱によって地中の金が混じるからうんぬんかんぬん……。
詳しいことは覚えてない。
とにかく、金鉱の近くで温泉を見つけやすいのは間違いないのだ。
頑張って探してみよう。
俺は連れてきた騎士十五名に厳命する。
今日は金鉱付近を捜索して温泉を見つけろ!
温泉を知らない?
地面から熱い湯が沸いてるヤツだよ!
「ヒョロイカ卿、その温泉というのを見つけてどうするんですか?」
今日は初めから着いてきたジャードが訊いてくる。
「ん? ジャードも知らないの? 地面から湧くお湯にお風呂として浸かるんだよ」
「それは何か意味があるのでしょうか?」
「効能とかいろいろあってさ。肩こりとか腰痛に効くんだ」
「大聖国にある聖水を用いた療養法に似てますね……。しかし、そんなものよりも今は見つけた鉱山をどのように運用していくかのほうが重要だと思いますが。まだ発見しただけで正確な測量は終わっていないでしょう?」
バカ野郎! 大事だよ、温泉は。経済効果がスゴイんだかんな!
断じて俺が入りだけじゃない。ホントだぞ?
「はあ……ヒョロイカ卿がしたいなら好きにすればよいのでは? 鉱山のほうは私が見ておきます。我々の邪魔をしない限りは自由にどうぞ」
ジャードは溜息を吐くと、騎士を三人ほど連れて鉱山のなかに入っていった。
さり気に舐めた態度を取られた気もしないではない。
だが、面倒くさそうなことを引き受けてくれたから不問にしておこう。
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