第18話『やっておしまいなさい!』




 この世界に来てから一か月が経過した。


「ベルナデット。そっちに行ったぞ!」


「任せてください、ジロー様!」


 俺たちは今日も元気に森の中で魔物を狩っていた。


 あれから俺たちはほぼ毎日森に入って狩りをしていた。


 最近ではベルナデットの腕も上がってきたので、森の奥まで潜って狩りをするようにもなっていた。


「シッ――!」


 俺が追い立てた獲物をベルナデットが一閃する。

 トカゲ型の魔物の首が一瞬で撥ね飛ばされて宙を舞った。

 ふっ、圧倒的ではないか……。


「なかなかいい剣筋だな。強くなったじゃないか」


「ありがとうございます。ジロー様のご指導のおかげです」


「俺なんかしたかな」


 後ろのほうで『強くなれ!』とか『もっと熱くなれ!』とか叫んでるだけだったけど。

 そういえばベルナデットはいつの間にか俺のことを名前で呼ぶようになっていた。

 心の距離が近づいたのか、そっちのほうが短くて呼びやすいからなのかは知らん。




 ベルナデットの成長は著しい。

 戦闘の腕前もそうだが、身体の成長も急曲線を描いて伸び盛りであった。


 出会った当初は10歳児相当の幼児体型だった彼女は現在、外見年齢13~14歳くらいにまで成長していた。


 身長は150センチ後半まで伸び、凹凸のなかった身体は胸に僅かな膨らみが出てきたり、腰が括れたり、尻が大きくなってきたりと、女性らしい体つきに変わりつつある。


 髪の毛も伸びるがままだったのを肩のあたりで綺麗に切り揃え、どことなく顔つきも大人っぽくなっているような気がした。


 一か月で変わり過ぎだろうと思うが、獣人の成長期とはこういうものらしい。


 彼女に関しては栄養状態の悪いこれまでの環境から一転したことで、抑圧されていたぶんが一気に解放されたというのもあるみたいだが。


 おかげでエネルギー消費が激しくて飯を大量に食うわ、服や武器はすぐに取り替えないといけないわで出費がかさむことかさむこと。


 俺の全体資産からすれば屁でもない額だが、すぐに使えなくなる服や武器などは非常にもったいない。


 ちなみにサイズの合わなくなった服や武器はアイテムバッグにすべて保存してある。


 使い道はないが捨てるのも惜しいので彼女の成長の軌跡としてとっておくつもりだ。





『きゃあああ――っ!』


 本日の狩りを終えて帰宅の途に就いていると森のどこからか女性の悲鳴が聞こえてきた。

 ベルナデットに視線を向けると俺に判断を委ねるように頷いた。

 この辺のやり取りがツーカーでできるようになったのは感慨深い。


「よし、助けに行くか。ここにいるってことは冒険者だろうし。助け合いの精神だ」


「了解しました」


 索敵のスキルを用いて気配を探る。

 大体の方角が頭に浮かんだ。


 森の中を走り抜けて赴くと一匹のオーガに追い詰められている少女がいた。


 一人か……。ここって森の深部だぞ。魔王城にもほど近い危険地帯。

 こんなとこにソロで潜るってアホなのかな。

 俺たちも二人で来てるけど。



「こ、こんなところであたしは負けない!」



 少女は叫んでいた。頭や口から血を流す大怪我を負った状態で。

 紫色のトンガリハットにローブ。値段が張りそうな荘厳な杖。

 格好からして魔法使い、メイジってやつか。


 メイジが盾ナシで単独行動とか死ぬ気なの?

 せめて鎧を着込むなりして装備を固めてくるべきだろうに……。



「あたしは魔王を倒すまで死ねないんだからっ……!」


 

 魔法少女はバタッと倒れて気絶した。

 覚悟を言い切って満足したのかな。あれは遺言のつもりか?



『グオオオオオォオォ――ッ!』



 意識を失った少女に襲い掛かろうとするオーガ。

 いけない。このままだといろいろ始まってしまう。

 異種間モノは趣味じゃないんだよ。


「ベルナデットさん。やっておしまいなさい!」


「…………? はい」


 変なもんを見る目で見られたわwww

 ネタが伝わらないって悲しいね。

 世界が違うと共有できることが少なくて寂しい。


 でもベルナデットさんはしっかりオーガを瞬殺してくれました。

 強くなっててパパ嬉しいぞ。

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