第13話『鋼鉄のバルバトス』
「貴様が魔王幹部を倒し、超級魔物と上級魔物を一人で狩った新入りか……?」
賞金を受け取った後、ギルドの掲示板の前で手頃な依頼を探していると声をかけられた。
振り返るとバカでかい大剣を背中に背負った精悍な顔つきの男がいた。
目つきが鋭くて身体もムキムキ。コイツ、身長何センチあるんだ?
190は軽くいってるだろ。
「ご、ご主人様ぁ……」
男の威圧感にベルナデットが震えて俺の後ろに隠れた。
「おい、バルバトスがゴールデンルーキーに話しかけたぞ!」
「バルバトスって、あの鋼鉄のバルバトス?」
「それ以外に誰がいるっていうんだよ! Aランク冒険者で魔王と互角に戦った男、鋼鉄のバルバトスといったらあの人しかいねえだろ!」
「バルバトスが話題の新人に何の用なんだ?」
「もしかして成り上がった新人にヤキを入れるつもりじゃねえの?」
「いや、自分のパーティに勧誘するのかもしれねえぞ」
「おお、あの一匹狼だったバルバトスがついに誰かと組むのか!?」
周囲のモブが騒がしい。
この男……バルバトスとかいうやつは有名人らしい。
Aランクで大層な二つ名を持つ実力者か。
すごいやつなんだろうな。
「答えろ……。お前がAランクに飛び級昇格した新入りか……? 宰相ヘルハウンドを倒したというのは本当なのか……?」
低く唸るような声でバルバトスが再度訊ねてきた。魔王と互角に戦った男。なるほど、確かに凄味がある。
「だとしたら、どうするつもりなんだ?」
「本当に貴様が一人で倒したのか……? 虚偽の申告は重大な規約違反だ……」
おうおう、俺の戦績にいちゃもんつけようってのか?
やっかみがあるとは思っていたが、早速ですか。
「俺が不正にのし上がったと思ってんの? なら確かめてみるか?」
「実力にそぐわない称号ならお前が苦しむだけだ……。力ずくで剥ぎ取ってやろう……」
言うなり、バルバトスは俺に掴みかかろうと手を伸ばしてきた。
俺はそいつを回避スキルですんなり躱すと、胸元と腕を掴んでふっ飛ばした。
自分でもびっくりするくらいスムーズに体が流れた。
格闘スキルすげえ。
「ぐっ……」
バルバトスは床に倒れたまま起き上がってこない。
あっさり片付いたな。こいつ、本当に魔王と互角に戦ったの?
いや、そもそも俺って魔王を一撃で倒してるんだった。
それと互角だった程度のやつに苦戦するわけねえわ。
チートサマサマだ。
「ひえぇん……!」
ベルナデットがうずくまって泣きべそを掻いていた。
言っておくけど、お前これから魔物を狩りに行くんだぞ。
これよりも荒っぽいとこに行くのに大丈夫か?
その装備は飾りで買ってやったわけじゃねえからな。
「さて、これでも実力に見合わないか?」
「いや、十分だ……。どうやらオレのお節介だったようだ……。疑って済まなかった……」
よろよろと立ち上がりバルバトスは埃を払った。
ありゃ、あっさり引くんだな。こんなにすんなり認めるとは。
てっきり投げ飛ばされた怒りで襲い掛かってくると思ったが。
――ざわざわ
モブが再び騒ぎ出す。
「バ、バルバトスが投げ飛ばされたぞ!」
「そしてバルバトスが認めた!」
「あの新人、本物だ!」
「名前なんつったっけ……?」
「変わった名前だったよな。ジロー……ヒョロイカ? とか」
広岡だよ。日本人の名前って覚えにくいのか?
変な名前で浸透したら困るぜ。
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