1999年8月7日 『混濁と混沌』
あのセツラという青年の出現で
私は元より、花音君も困惑している。
確かに、花音君達の抱える体質を考えれば、
容易に想定できることではあった。
しかし、花音君達の身に起きている事は、
今現在の医学で言われる
その病気の症例と特徴とは様相が違う為
一概に『もうひとり居ただけ』と
簡単には片付けられはしない。
今までは、
シオン君の動向と彼の存在意義を知る事が
最優先事項だっただけに
完全に意表を突かれたカタチとなった。
あのセツラとかいう青年、彼自身は
事の総てを把握しているかのようだった。
しかも、あの口ぶりからして
シオン君が言っていた『終わりの刻』が
近いというのもどうやら事実らしい。
いよいよ、何が起きるというのだろうか。
シオン君に課せられている事とは・・・
そんな時、手にしていた携帯が急に
光ると共に震えた。
あまりのことにビックリして、
携帯お手玉状態になったが
どうにか落とさずに済んだ。
「こんにちは、花音です」
「こんにちは、花音君」
「こんにちは。
今、よろしいですか?」
「構いませんよ。
どうかされましたかな?」
「おととい、母に話しました。
さすがというか・・・
顔色ひとつ変えずに聞いていました。
一通り話し終わると
一言だけ口を開いたんです」
「ほう、なんと?」
「いよいよのようね・・・と・・・」
「いよいよ・・・ですか・・・」
「えぇ」
「ユリアさんには分かるのでしょうか?
これから起こることが・・・」
「何が起こるのかは分からないようでした。
ですが、何かが起こることは
確信していたようです」
ふと詩音君のことが頭を過ぎった。
ユリアさんに聞いた話と
病院で眠る詩音君、
そして花音君に現れるシオン君。
これらの点が結びついて
総ての謎は解けるのだろうか・・・
シオン君の言う『最期の刻』、
ユリアさんの言う『いよいよ』
この二つの言葉が耳に残る。
勿論、答えの出ない想像による話のまま
電話での会話を終えた。
取りあえず、内なる彼らが
動き出すのを待つしかないようだ。
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