週間ご飯。
その日の猫と犬はご機嫌であった。
犬自身は静かに伏せてはいるのだが、パタパタと動く尻尾からご機嫌が隠せていない。
そしてその犬の上では猫がぶなーんぶなーんとご機嫌そうに鳴き声を上げている。
ただ猫の前足が犬の耳と頭をぐにぐに潰しているのだが、はしゃいでいて気が付いていない。
とはいえ猫が楽しそうだなぁと思うと何だか自分も楽しくなっている様で、犬は特に気にしていない様だ。
猫が軽いというのも有るのだが、おおらかな犬である。
そんな二匹の仲の良さにクスクスと笑いながら、少女は調理をしていた。
犬と猫がご機嫌な理由は、週に一回の少女の手作りご飯の日だからだ。
今日はお肉が有るらしく、じゅーっと焼ける匂いに二匹とも鼻がひくひくしている。
音にも反応して耳がピクピク仲良く動いているのが可愛らしい。
「もうちょっとの我慢だからねー」
まだかなまだかなという様子の二匹を撫でながら、二匹と一緒に少女を見守る単眼。
複眼は用事が有って今日は屋敷に居ないので、少女が代わりに監督をお願いしたのだ。
と言ってもレシピは少女の手元に有るし、それになぞって作るだけ。
今の少女ならその程度の事は難しい事ではないだろう。
とはいえ少女自身は自分のうっかりミスを危惧している。
火を使う時は何時もより気を付けているとはいえ、まだ不安なのだろう。
そもそも自分が台所を使う時は昇降台が要る時点でまだまだ色々足りないと思っている様だ。
主に身長が足りないのではあるが、それによる動作のスマートさの無さが気になるらしい。
少女の理想は女であり、屋敷の使用人達だ。
屋敷の皆全員を足したような女性になるのが少女の理想で願望ある。
あくまで理想なので実現するかどうかは誰にも解らない。
ただ少女はきっとなれると信じている。信じるのは自由だ。
男は大好きだけどちょっと違う項目なので理想には入っていない。
同じく少年の事も凄いなーと思いつつも、憧れとは何だか違うので除外だ。
なにせ少年は仕事は出来るけど、少女の前では色々とやらかすのでプラマイゼロだ。
その原因は少女自身なのだが、本人が解っていないのでどうにもならない。
まあそんな感じで少女は日々皆に近づこうと頑張っている。
頑張っているので、近付けているかどうかは目を瞑ってあげて欲しい。
一応少女はお仕事は出来るのである。ただうっかりが多いだけで。
後どうしてもチマチマと小動物感溢れる動きなので、スマートとは程遠いだけで。
そんな頑張る少女の手料理も今丁度出来たので、単眼に確認をして貰う様にお願いしていた。
人間と違い犬猫に料理を作るには色々と気配りが必要だ。
もし何か手違いをしていたら、という事で単眼に最終確認をお願いしたかったらしい。
「ん、大丈夫だよ。上手に出来てるよー」
単眼に上出来と頭を撫でられながら言われ、ニパーと満面の笑みを返す少女。
犬と猫は「出来たの? ねえ出来たの?」という様子だが、まだ熱々なので食べさせては上げられない。
だが今回は少女も学習している。前回の様に手で仰いだりはしない。
準備万端に用意していたミニ扇風機を手に取り、ムフーと得意げに料理を冷ます少女。
「かっわいい」
今回はちゃんと出来たよ! と言わんばかりの態度に単眼が口元を抑えてにやついている。
そんな単眼の様子には気が付かず、冷ました料理をつついて冷めているか確認する少女。
そしてちゃんと冷めている事を確認出来たら、犬の前にお皿を置き、その隣に小さな皿を置く。
今回は二匹ともお揃いの食事だ。
猫はワタワタと犬から降りようとして落ちそうになっていたので、少女が優しく抱えて降ろしてあげると、待ちきれないとばかりにぶなーっと鳴いてもっちゃもっちゃと食べ始めた。
犬は猫が頭から退くとお利口にお座りして待っていたので、頭を撫でて食べて良いよと促されてから食べ始める。
二匹とも美味しいというかの様に鳴きながら食べるので、少女はご満悦の様だ。
「満足してくれて良かったね」
頭を撫でながらの単眼の言葉にコクコクと頷き、美味しそうに食べる二匹を嬉しく思いながら見守る少女であった。
尚よっぽど美味しかったのか、犬と猫は皿がピカピカになるまで舐めていた。
猫に限っては「おかわり」と言うかの様に、皿に前足を乗せながらぶなぶなと鳴いていた程に。
普段のカリカリにはそんな反応をしないので、二匹とも本当にお気に入りの様である。
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