共に。
段々と暖かくなり、また少女が転寝をし始める季節がやって来た。
既に玄関先で太陽の光を浴びながら、隣で座る彼女に寄りかかってウトウトしている。
少女の膝の上には猫も転がっており、同じ様にウトウトしている様子だった。
「あっはは、角っこちゃん、期待通り過ぎる」
そんな少女と猫を見て、彼女は楽し気に呟いていた。
ただ彼女の言葉には少し理由が有る。今この状況は彼女の言動が発端だからだ。
今まで暖かい日は良く転寝をしていた少女だが、今年こそはと気合を入れていた。
そんな矢先に彼女が「今年もまた角っこちゃんの居眠りが見れるかにゃー?」と言ったのだ。
少女はぷくっと頬を膨らませて抗議し、じゃあ今日は暖かいので庭で試してみよう、という流れになった結果である。
暫くは彼女と談笑していた少女だったが、気が付くと少し返事が鈍くなっていた。
そうして段々と頭が揺れ出し、返事もあやふやな物になり始め、最終的にこの状態である。
既に意識は殆ど無く、呼びかけても何だか変な鳴き声の様な返事が返って来るだけであった。
「ま、子供は寝て育つっていうし、今の内だよねー、こういうのは」
彼女はクスクスと笑いつつ少女の頬をプニプニとつつき、楽しげに呟いていた。
少女はあうーと眉を寄せながらも起きる気配はない様だ。
猫は小さく揺れる少女の膝の上で、ぶなぶなと小さく寝言を言っている。
大人になればこんなに気軽に何時も転寝、なんて事は出来ない。こういうのは子供の特権だ。
たとえ奴隷であっても主人の男が許しているのだから、彼女的には全く構わない。
むしろ可愛らしいし、揶揄いがいのある今の状態の方が良いと思っている。
「あー、でも角っこちゃんじゃないけど、これ眠いわ」
少女が倒れないように手で支え、半ば抱き締める様にしながら彼女は座っている。
その手の先に猫の背中も触れており、少女と子猫の暖かな体温を感じていた。
空からは柔らかな太陽の暖かさと、寒くも暑くもない心地良い風。
彼女でなくとも睡魔が襲ってきそうな程に転寝の環境が整っている。
「まず、これ・・・ほんとに・・・ねる・・・」
だがそれに気が付いた時は既に遅く、彼女はすやぁっと寝息を立て始める。
いや、実際は別に遅くはなかったのだが、全く抗わずにそのまま寝てしまった。
眠気を覚まそうとするならばこのままの体勢では耐えられない。
ならばもういっそ寝てしまえ、という実に潔い彼女らしい決断である。
口では不味いと言いながら「しょうがないよね☆」と心の中で言い訳をしている彼女であった。
子供の特権とは一体何だったのか。
因みに現在、少女と共に転寝をしていない人物は居なかったりする。
何気に複眼も一緒に台所でウトウトしていた事が有り、ばっちり羊角に撮られている。
尚自分が転寝して撮れなかった時は、血の涙を流すかの勢いで悔しがった羊角であった。
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