危険な遊び。
その日の少女は庭で単眼と遊んでいた。
ただ単眼が「今日はちょっとだけ危ない遊びをしてみようか」と珍しい事を言い、少女は首を傾げながらも頷く。
素直に頷く少女に少し苦笑しつつ、何をするのかを説明する単眼。
そして説明を聞くうちに少女は段々笑顔になっていき、最終的には待ちきれないという様子で、手を広げて単眼の前に立つ。
「いくよー?」
単眼は少女の腋を持って笑顔で声をかけ、少女はワクワクしながらコクコクと頷く。
早く早くと言わんばかりの様子に苦笑しつつ、単眼はぐっと踏み込んで少女を真上に投げた。
少女はその高さと浮遊感にキャーと楽し気に笑顔を見せ、単眼は落ちて来た少女に衝撃が無い様にふわっと抱える。
そして顔の高さに持ち直すと、少女は手足をパタパタさせながら喜びを見せていた。
「あはは、楽しかった?」
単眼の問いに首が外れるかと思う程コクコクと何度も頷く少女。
その様子がまた可愛らしくて、単眼は笑顔以外の表情になる様子が無い。
「じゃあもう一回いくよー。それー」
そして一度少女を地面に降ろしてから、ポーンと上に投げる。
因みに一度目もそうだが、適当に投げてはいない。
ちゃんと綺麗に抱き留められる様に真上に投げ、危なげなく抱えられる高さに調整している。
少女は普段の自分では絶対に見られない高さからの光景に興奮し、落ちる浮遊感と優しく抱き留められる感覚にキャッキャッと喜んでいた。
「あたしもあたしもー」
そしてその光景を見ていた彼女が、何故か両手を広げて単眼の前でスタンバイしていた。
単眼は困惑の表情で彼女を見つめている。
「・・・え、何?」
「だからあたしも。早く早く」
「・・・ま、まあ良いけど。じゃあいくよー?」
少女を優しく降ろし、彼女の腋を抱えて高く真上に投げる単眼。
若干雑な様に見えたが、おそらく気のせいではないだろう。
「うわっはぁー!」
自分の力ではけして叶わない浮遊感に彼女は歓喜の声を上げ、落ちる感覚に少しだけ怖い気持ちを覚えつつも、それも楽しみながら単眼にキャッチして貰う。
「はぁー、これは楽しいね角っ子ちゃん!」
とても楽し気な彼女の言葉に力強く頷く少女。
ただ少女が楽しげなのはともかく、彼女が楽しげなのは嫌な予感しかしない単眼である。
「良い事思いついた。ちょっと待っててね!」
「え、ちょ・・・何するきなのよ・・・ねぇ・・・」
彼女は何かを思い出した様に走り去り、倉庫へ向かって行った。
その様子に不安を覚えながら少女に視線を向ける単眼だが、少女が解るはずもなく首を傾げている。
二人で首を傾げる事少し、彼女は何かをズルズルと引っ張って戻って来た。
「これ、ほら、マット!」
「・・・なんでこんな物が倉庫に」
彼女が持って来たものは、高所作業用の防護マットだった。
何故そんな物まであるのか解らないが、何故かあるのだから仕方がない。
彼女はそれの存在を思い出し倉庫まで走って行ったのだ。
「これの上に着地する様に投げたら楽しくない?」
「・・・うーん、出来ないことは無いだろうけど、狙って落とす自信無いよ?」
軽く近距離にポーンと投げるなら単眼も出来なくは無いと思っているが、高く放り投げてマットに狙って落とす程の自信は無い。
もし外して怪我なんてさせたら大事だ。そう思い楽し気な彼女とは真逆に渋る単眼。
だが困った事に、少女の視線がワクワクしたものになっていた。
単眼は当然それに気が付いており、彼女も解っているからこその笑みを単眼に送る。
「んー、解った。けどあんまり高くは駄目だからね。危ないから」
「はーい」
単眼の譲歩に素直に返事を返す彼女と、わーいと両手を上げる少女。
そしてその様子を屋敷から確認した複眼は冷めた目で彼女を見ていた。
単眼はいきなり少女を投げるのは怖いので、提案した彼女から試しにやる事に決めた様だ。
「それじゃいくよー」
「どんとこい!」
「せーの、あっ!」
彼女をマットに向けて放り投げようとして、手が滑ってしまった事に焦る単眼。
その焦りの言葉が耳に入り、背筋に嫌な寒気が走る彼女。
単眼は咄嗟に駆け出しスライディングの様に滑って何とか彼女をキャッチし、お互いに顔を見合わせながら心臓をバクバク鳴らして暫く固まっていた。
少女は慌ててパタパタと近づき、心配そうに二人に手をかける。
そこでやっと二人は少し落ち着きを見せ、はぁと息を吐いた。
「ははっ、中々スリリングなアトラクションだったね」
「何言ってるのよ・・・はぁ、怖かった。ヤッパリ危ないからこれは禁止ね」
「へーい。でも真上から落とすぐらいなら角っ子ちゃんも楽しめるんじゃない?」
「そうね、それぐらいなら良いかも」
やはり先程の遊びは危険と言う事で、単眼が思いっきり持ち上げてその高さから落とすという遊びに変更になった。
これならマットにちゃんと落ちるので危険は特にない。
気を取り直して少女とマットで遊ぶ単眼であったが、今度は角がマットに突き刺さって少々慌てるのであった。
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