行方知れずの温子2

結局、何とか学園は後にして――


予定外ではあるものの、

爽と繁華街まで行くことになった。


温子さんとの約束を破ることになってしまうけれど、

早めに帰れば問題はないだろう。


「そういえば、温ちゃんってどこ行ったの?

晶に頼まないで一緒に帰ればいいのに」


「あー、何か昔の知り合いと

会う約束があったみたいだよ」


「昔の知り合いかー。

誰に会いに行ったんだろ?」


「まさか片山のバカじゃないと思うけど、

あたし他に知らないんだよね」


片山のバカ……。


「爽は片山くんのこと知ってるの?」


「一応ね。何考えてるか分かんないやつ」


「爽がそれを言いますか……」


「だって、あいつ頭おかしい感じだもん。

人をゴミを見るみたいな目で見てくるっていうか」


……大当たり。

爽はきちんと人のこと見てるんだなぁ。


「ま、温ちゃんも片山は嫌いだったから、

片山はないか」


「へー、嫌いだったんだ」


「何かキモいこと言われたとか?

詳しいことは聞いてないんだけどさ」


「ただ、ゲームで対戦するぶんには、

丁度いい相手だったみたいだよ」


「お、ライバルみたいな?」


「ううん。

適度に強いサンドバッグとか何とか」


「何かそれ聞くと、

片山くんが可哀想になってくるんだけれど……」


「ゲームで温ちゃんに挑むほうが悪いと思うから、

あたしは同情なんかしないけどねー」


「爽はゲームとかしないの?」


「あたし? たまにスマホでやるくらいかなー。

何か育てる系のやつとか」


「あー、じゃあ対戦系はやらないんだ」


「トランプくらいなら、

たまーに部活のメンバーとかでやったりするよ」


「ばば抜きとか、大富豪とか、ダウトとか。

言っとくけど、あたしマジ無敵だから」


「お。じゃあ今度、

みんなでやってみようか」


「あー、温ちゃん入るならやめといたほうがいいよ。

遊びが遊びじゃなくなるから」


「いやいや、さすがにそれは大袈裟でしょ」


「知らぬが仏ってやつですなぁ」


あたし知ーらない、と、

苦笑いを浮かべて茜色の空を仰ぐ爽。


その横顔に、『そんなに凄いの?』と

声をかけようとしたところで――


「……!」


背後から注がれる、

誰かの視線に気付いた。


「ん、どしたの?」


「いや、何でもないよ」


爽に手を振って、雑談を継続。

同時に、後方の気配を探る。


相手は……一人か?


っていうか、何だこれ?


つたない尾行なんてレベルじゃない。

前に、片山の部下にされてた尾行よりも酷い。


真面目にやってるんだろうか?

それとも、逆に存在をアピールしてる?


っていうか、足音くらい消そう。

爽もじきに気付くぞこれ。


……ともあれ、明らかに素人の仕事だとして、

僕に尾行をつけてくる相手か。


心当たりがあるのは、

黒塚さんくらいかな?


ただ、プレイヤーたる黒塚さんが、

爽と一緒にいる時を狙ってくるとは思えない。


となると……これは誰だ?


「……振り向いちゃうか」


「うん?」


えいっと後ろを振り向く。


それとほぼ同時に、

自販機の陰に誰かが飛び込んだ。


けれど、あんまり隙間がなかったのか、

髪の毛だけが自販機の向こうから飛び出ている。


うーん、頭隠して尻隠さずとはこのことか。


「……おーい」


髪の毛が微妙に揺れるものの、

返事はなし。


まだ見つかっていないと

思ってるんだろうか?


「ねえ晶、あれ何?

あそこに誰かいるんだけど」


「あー、今呼ぶからちょっと待ってて」


この様子なら恐らく行けると思い、

携帯へとコール。


途端、自販機の向こうから着信音が鳴り――


慌てすぎてお手玉と化した携帯と共に、

尾行の犯人が姿を現した。


「え、琴子ちゃんっ?」


「……何やってるの?」


「え? えーっと、

ジュース買おうと思って……」


「後をつけてたんだよね、僕の?」


「……うう~」


琴子が顔を俯けて、

そわそわと体を動かす。


それだけで、

もう十分過ぎるくらいバレバレなわけで。


「あのね……どうしてそんなことするの?

僕が悪いことしてるとでも思った?」


「ううん、そんなことないっ!

お兄ちゃんは悪いことしないって分かってるし!」


「じゃあ、どうして?」


「それは……」


「ちょっとちょっと!

可愛い子をいじめるのは感心しないんだけど?」


「……いや、どこもいじめてないでしょ。

話を聞いてるだけだってば」


「だったら、そんなねっちょりした聞き方じゃなくて、

もっと普通に聞けばいいじゃん」


「普通に聞いてるつもりなんだけれどなぁ」


ぶーぶー文句を言ってくる爽に背を向けて、

琴子と向かい合う。


「どうして後をつけたの?」


「うう、それは……」


「最近、お兄ちゃんの帰りが遅かったから、

何やってるのかなって思って……」


あー……そういうことか。


「なに? 晶、そんなに帰り遅かったの?」


「まあ、最近ちょっとあってね」


「わー! 不良だー!

いーけないんだーいけないんだー!」


「小学生か!」


っていうか、

爽だって遅くまで遊んでるだろっ。


だからこそ、今日こうして、

温子さんに送っていくように頼まれたんだから。


「はぁ……とりあえず、

琴子が心配するようなことはしてないから」


「でも、今日も真っ直ぐ帰ってないよ?」


「それは、爽を家まで送るように、

温子さんに頼まれたからであって」


「ついでに鯛焼きもおごってくれるんだよねー?」


「まあ、不本意ながらこういうわけで」


「ちょっとー、不本意ってなにさ!

晶からおごってくれるって言ったくせに!」


「……ねえお兄ちゃん、こっちの人は?」


「ああ、クラスメイトの爽だよ。

三大問題児の一人って言えばいい?」


「ああ、あの……」


「朝霧爽でっす!

笹山琴子ちゃんだよね? 初めましてっ」


「あ、初めましてっ。笹山琴子です」


「っていうか、

私のこと知ってるんですか……?」


「それはもう、

学園の可愛い子は全員チェックしてますから!」


「一応、補足しておくと、

美少女大好きなんだって。爽は」


「う、うん……?」


曖昧な返事と共に首を傾げる琴子。


至って正常な反応で、

お兄ちゃんは安心です。


「あの、朝霧先輩」


「ん、なになに?」


「朝霧先輩って、

女の子にしか興味ないんですか?」


「え? いや、そういうわけじゃないけどね。

美少女は趣味なだけだし」


「……じゃあ、お兄ちゃんとは、

付き合ってたりするんですか?」


「ぶっ――!?」


「えっ? ……えっ!?」


「ちょっと、いきなり何を言い出すんだよ琴子?

話が飛躍しすぎじゃない?」


「だって、お兄ちゃんが、

那美ちゃん以外の女の子と歩いてるから……」


「いや、そりゃクラスメイトなんだし、

一緒に歩くくらいはするでしょ」


「そ、そだよ! あたしと晶は、極めてフツー!

ぜんっぜん怪しいことなんてナッシング!」


「本当ですか?」


「ホントもホント!

嘘ついたら針千本、晶が飲むくらいホント!」


「何で僕が飲むの!?」


「だいたい、あたしがこんな晶みたいな……

ほほ、ホーケー野郎に惚れるわけないし!」


「顔真っ赤にしながら人をディスらない!」


琴子が何かキツい目で僕を見てるだろっ。


「もう……分かったでしょ?

爽はこういう人なの。僕とは何にもないの」


「……うん。分かった」


やっと分かってくれたか……。


「じゃあ、僕は爽を送ってから帰るから。

琴子は先に――」


「あ、私も一緒に行くね」


「え、マジで!?」


……はい?


「私も一緒に行って、問題ないでしょ?」


「いや、問題はないけれど……本当に来るの?」


「行っちゃダメなの?」


「ダメじゃないけれど、

やめておいたほうがいいと思う。本当に」


理解不能とばかりに

琴子が首を傾げる。


「こら晶、なに余計なこと言ってんのさ?

琴子ちゃんを一人で帰す気?」


「だって、爽から身内を守るのは、

兄としての役割だし」


「守るだなんて人聞きの悪い。

あたしは琴子ちゃんとお喋りするだけだもん」


「お兄ちゃん、大丈夫だよ。

私も先輩に色々聞いてみたいし」


「ほら見ろ晶!

琴子ちゃんだってこう言ってるんだよ」


「……まあ、本人がどうしてもって言うなら」


命の危険があるわけじゃないし、

いざとなったら僕が間に入ればいいか。


でも、結果が予想できてるだけに、

回避できないのが何とももどかしい。


せめて、爽と琴子の初対面の時くらいは、

温子さんがいてくれればなぁ――





「えーと……大丈夫?」


「すっごい疲れた……」


家に帰ってくるとすぐに、

琴子はソファへと飛び込んだ。


色々声をかけてみるも、

ぐったりと伏したまま顔をあげようともしない。


まあ、やっぱりこうなったか。


琴子は真ヶ瀬先輩とも相性よくないし、

三大変人と付き合うにはちょっと負担が大きいらしい。


「まあ、今日の夕飯は僕が作るよ」


「あ、それは琴子がやるよっ。

琴子の仕事だもん」


「いや、大丈夫だよ休んでても。

疲れてるのに料理したくないでしょ?」


「でも……」


「いいから。最近、帰りが遅かったお詫びに、

琴子のために何かさせてよ」


「……分かった。

じゃあ、お願いするね」


ソファから体を起こして頭を下げる琴子に、

心中で安堵の息を漏らす。


琴子が尾行するほど不安に思ってたってことは、

僕の行動が少なからず不自然に映ってたということだ。


確かに、最近は隙だらけだったというか、

気が抜けていたかもしれない。


周りにABYSSだとバレないようにするためにも、

琴子のためにも、極力気を遣っていかないと。


「何か食べたいものある?」


「えっと……じゃあ、オムライス!」


「いいよ。すぐに作るから」


「ケチャップでハートマークも書いてね」


「はいはい」


鯛焼きを食べてきたけれど、

いつも通りの量で作ってしまっていいか。


もし残ってしまったとしても、

寝る前までに僕が全部消化できるだろうし――







「お兄ちゃん、電話鳴ってるー」


「誰からー?」


「えっと……さっきまで一緒にいた、朝霧先輩」


「分かった。今行くー」


洗い物を切り上げて、

急いで手を拭いて琴子から電話を受け取る。


爽からか……何の用だろ?



「もしもし?」


「もしもし、晶っ?」


「……どうかしたの?

ちょっと、声が荒くない?」


「あのさ、晶のところに

温ちゃん行ってないよね?」


「いや……来てない。

もしかして何かあったの?」


「温ちゃんがまだ帰ってこないの。

携帯に連絡しても、全然反応なくて」


時計を確認――夜も十時近くか。


いつもの温子さんなら、

出歩いているのは考えづらいな。


「昔の知り合いに会いに行ったんだよね?

その人のところには連絡してみた?」


「連絡したいんだけど、全然分かんないの。

温ちゃんの昔の付き合いって全然知らないから」


ああ……そうだったな。


「他の人のところにも電話してみたんだけど、

誰のとこにもいないって」


「どうしよう、晶……

温ちゃん探しに行ったほうがいいかな?」


「……ちょっと待って。考える」


温子さんが家に帰ってない……。


手元の情報は、二つ。


温子さんが、旧友と会う約束をしていたこと。

温子さんは、夜遅くまで遊ぶ人じゃないということ。


その二つから想像できるのは、

温子さんが帰宅できない状況に陥っていることだ。


旧友がそもそも温子さんを監禁してるのか、

それとも旧友と別れた後にトラブルに巻き込まれたのか。


……まさか、ABYSSか?


でも、聖先輩が温子さんを選ぶとは思えないから、

もしやるとしたら片山だけれど……。


「もしもし、爽?

ちょっと後でかけなおしていい?」


「いいけど……

どれくらいかかりそう?」


「すぐにかけなおすから待ってて」


それじゃあと、返事を待たずに電話を切る。


それから、急いで部屋へ。





「もしもし?」


「……俺だ。どうした?」


備品として支給された携帯の向こうから、

片山の面倒臭そうな声が返ってくる。


不在だったらどうしようかと思ってたけれど、

ちゃんと出てくれてよかった。


「ちょっと聞きたいことがあるんだけれど、

今って大丈夫?」


「問題ねぇ。何だ?」


「率直に言うよ。

温子さんが、まだ家に帰ってない」


「はぁ!?」


「今日、昔馴染みに

会いに行く約束があるって言ってたんだ」


「それで、片山くんが

何か知らないかって思って」


「いや、俺のほうでは全然聞いてねぇ。

というか、温子が……? マジか?」


「前はゲーセン閉店する頃までいたもんだが、

そういうことじゃなくてか?」


「それだったら、身内の連絡に反応すると思うんだ。

でも、今回は音沙汰がないらしくて」


「……なるほどな」


「あの温子がその辺のカスに捕まるとは思えねぇ。

すぐにこっちでも探す」


「連絡は定期的に入れる。

そっちも何かあったら速攻で連絡をよこせ」


「分かった。ありがとう」


「礼を言ってる暇があったら動け。

じゃあな」



……片山も知らないのか。


となると、ABYSSの関与はない?


いや。何にしても判断するのは、

自分の目で確かめてからだ。






「爽、お待たせ」


「何かあったの?」


「いや、色々考えてみたんだけれど、

やっぱり僕も探しに行ったほうがいいかなって」


「オッケー。んじゃあたしも出る」


「爽は家で待ってて。

最近、治安が悪いの知ってるでしょ?」


「はぁあああ? 何で自分ちの問題なのに、

人任せにできんのさ?」


「それは……」


「あたしも絶対に探しに出るかんね。

晶が止めようが何しようが絶対に行くから」


……こうなったら、爽は止められないか。


「分かった。

それじゃあ、何かあったらすぐ連絡して」


「危ないところに入っていく前と後には、

必ず僕に連絡入れてもらえると助かる」


「オッケー。

っていうか、晶こそ無理はダメだかんね?」


「もちろん。

僕も何かあったらすぐに連絡するから」


「オッケー。じゃあね」



……結局、

爽も探しに出ることになっちゃったか。


一応、片山に連絡しておいて、

爽の安全を多少なりとも確保しておいたほうがいいかな。


さっきの様子だと、

部下にも連絡を回すだろうし。


「お兄ちゃん、出かけるの?」


「うん。爽のお姉さんがまだ帰ってきてないらしくて、

僕も探しに行くことになった」


「琴子も行こうか?」


「いや、琴子は危ないから家にいて。

最近、治安悪いって言われてるでしょ?」


「それに琴子は、

温子さんの顔を知らないと思うし」


「あ、そっか……」


「だから、しっかり戸締まりして待ってて。

誰か来てもドアを開けたりしないでね」


「分かった。

お兄ちゃんも気を付けてね?」


「もちろん。

僕も危ない目に遭いたくないしね」


安心してよと、琴子の頭を軽く撫でてやる。


「それじゃあ、行ってくるから」


琴子に手を振って、部屋を後にする。


さて、急ぐか――








ABYSSの儀式が行われていないか確かめるため、

学園までやってきた。


けれど、誰かが周囲に潜んで、

人払いをしているような気配はない。


やっぱり、ABYSSは絡んでないのか?


「……一応、確かめてみるか」


黒塚さんが潜んでいないかが不安だけれど、

さすがに四の五の言っていられない。




「おい、何してるんだ?」


「鬼塚さん?」


色々と見て回っていたところで、

物陰に潜んでいた鬼塚に声をかけられた。


「何やってんだ、オイ?

夜の校舎には近づくなっつっただろうが」


「それを言うなら、

鬼塚さんこそどうしてここに?」


まさか、温子さんを生け贄に、

儀式を始める気なんじゃ……。


「俺はプレイヤーを調べに来ただけだ」


「プレイヤーって……

黒塚さんじゃないんですか?」


「それを確定しておかねぇと、

いざ会った時に攻撃していいか分からねぇだろ」


「誰だかさんの時みてぇに、

一般人が紛れ込んでましたなんてのはごめんだからな」


……誰だかさんって、僕のことだよな。


あの時のことを、

一応、鬼塚も気にしてるってことか。


「で、お前はなんでここにいるんだ?」


「僕は……友達がまだ帰って来ないらしくて、

学園にいないか探しに来たんです」


「……学園に残ってるってことか?」


「いえ、違います。

一応、もう下校はしているんで」


「昔馴染みに会うって聞いてたんですけれど、

まだ帰っていないって、友達の家族から電話があって」


「その子は、普段は夜遅くなることはないし、

なっても家族には連絡をしていたそうです」


「なのに、今日に限って、

全然連絡がつかないって……」


「……それで、ABYSSに浚われたと思って、

学園に来てみたってところか」


「はい」


鬼塚たちを疑っているという意味で、

失礼かもと思いつつも、頷きを返す。


けれど鬼塚は、特に怒るようなこともなく、

『なるほどな』と短く呟いた。


「とりあえず、しばらくは儀式を行う予定はねぇ。

プレイヤーも確定できてねぇしな」


「それから、部長に限って、

お前の友達を浚うとは考えられねぇ」


「だから、もしもABYSSが噛んでるとしたら、

そいつは片山たちの可能性が高い」


「それが……片山くんにも連絡を取ってみたんですが、

彼も全然知らないみたいでした」


「……お前が片山に連絡を取ったのか?」


「あ、はい。

電話番号は教えてもらってたので」


……片山との繋がりを提示するのは、

微妙にまずかったか?


いやでも、温子さんを探すためと思えば、

背に腹は代えられないか。


鬼塚から情報を得るためには、

こっちもできる限り材料を提供しないと。


「片山くんは、

その友達の昔の知り合いだったそうです」


「でも、友達が今日会うと約束していたのは、

他の友達だったみたいで」


「片山が嘘ついてんじゃねぇのか?」


「その可能性も考えたんですが、

電話で聞いた限りだと、嘘じゃないと思います」


「というか、今、

彼もその友達を探してくれているみたいです」


「片山が人捜しねぇ……」


「あー……片山くんが、

その友達を猛烈に気に入ってるみたいで」


「それはそれで面倒そうな話だな。

まあ、片山のバカなんかどうでもいいんだが」


「それより、お前の友達だ。

[学園'ここ]には俺以外誰もいねぇが、どうするつもりだ?」


「……手掛かりが他にないんで、

後は足を使って探すしかないですね」


「俺も手伝ってやろうか?」


「えっ?」


「大事な友達なんだろ?」


「それはもちろんですけれど……

いいんですか?」


「今日はプレイヤーが来る気配がねぇし、

別に構わねぇよ」


「……ありがとうございます」


まさか鬼塚がという感じだけれど、

人手が欲しい今は凄くありがたい。


「んじゃ、名前と顔写真をくれ。

あの生徒会なんだから、それくらいあるだろ?」


「あ、そうですね。それじゃあ――」



そうして、鬼塚に温子さんのデータを渡して、

みんなで温子さんを探した。


現状で打てる手は全て打った。


けれど、日付が変わっても、

僕の携帯が鳴るようなことはなく――


結局、温子さんを見つけたという報せのないまま、

その日は調査を打ち切ることになった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る