かすみ燃ゆ

作者 坂水

妖しく燃える、人の業

  • ★★★ Excellent!!!

舞台となっている安是の村では、女は恋をすると、それこそ蛍のように光を放つ。

だがこれは、可愛らしいおとぎ話ではない。人間の生々しい感情が煮こごりのように混ざり合い、凝縮された恐ろしい作品だと思う。

近代化の節目にあって、今なお執り行われる因習。見えもしないものを怖れた人々によって繰り返される血みどろの惨劇。

ヒロインであるかすみも含め、登場人物に正義はない。皆等しく業を背負い、それぞれの愛憎や保身のために欺き、殺し、滅びを願う。

醜い争いには違いない。だがその感情は剥き出しであるがゆえに切実で、真に迫るものがある。

そしてフォークロアへの確かな理解が、本来はおぞましいものであるはずのその争いに厚みを、一文一文に詩のテンポと豊さを持つ圧倒的な文章力が美しくも妖しく彩りを持たせることに成功している。

ファンタジーにして、ここまで人の感情の機微や美醜と向き合った作品は、昨今見たことがありません。
疑いようもない、珠玉の名作です。

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