かすみ燃ゆ

作者 坂水

耽美にして雅致なる《女と男》の愛憎奇譚

  • ★★★ Excellent!!!

その里では、女は男を慕えば、光を帯びる。されど十八歳をすぎても光らず、かすのみと蔑まれる女がひとり。
かすみは光らない。《里の男》には決して。
 

読みはじめてすぐに、嗚呼、凄い小説だと思いました。まさにこの著者さまにしか書けない小説でございましょう。
光らぬ女の奇譚は、耽美でありながら情緒のある繊細な文章で綴られており、言葉の細部からも深い知識が窺えます。美醜、清濁、そういったものを書ききった小説というのはなかなかに出逢えるものではありませんが、こちらの小説はまっこうからそれらを書き抜いていて、感服するばかりです。
重ねて、男女それぞれの優越感と劣等感が書かれているところが実に凄いです。男はみずからを慕い、濡れ光る女に優越を覚え、支配欲を満たす。故に女の呪縛からは逃れられない。女は光ることで男を縛りつけ、庇護され、優越に浸る。けれどゆがみがないはずはなく、里は男女それぞれの呪縛で雁字搦めになっている。
優越と劣等があるのは男女だけではありません。光っても慕う男に選ばれなかった女と光らない女のあいだにも、劣等感と優越感がある。
清濁がないまぜになって、されどもひとつにはなりきらず、怒涛のように打ち寄せるさまは見事としか言いようがありません。

まだまだ謎の多い幻想愛憎奇譚……今後の展開に期待を寄せて、星はふたつとさせていただきます。これだけのものを執筆するのは大変かと思いますが、これからも更新を御待ち致しております。


ずいぶんと物語が進展し、星ふたつでは辛抱たまらなくなりましたので、8月30日をもって星をみっつとさせていただきます。ほんとうに素晴らしい小説です。かならず最後まで追いかけます。

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