最終章 皆の願い

私達の願いは

「諸君、ご苦労だった。君達の活躍のおかげで、人類は守られた」 


 ディーノ社長が私達に労いの言葉を掛ける。 


 戦いが終わり、傷が完治した私達は、再びDCの社長室に呼び出された。


「約束通り、君達一人ひとりの望みを叶えよう。何でも言いたまえ」 


 私の、望み。それは、ユウを学校に通わせてあげることだった。 

 一緒の学校に通って、一緒の授業を受けて、一緒に学園生活を満喫する。それが私の願いだった。 


 でも、今はそんなことどうでもいい。 

 今、私が願うのはたった一つだけだ。


「……お願いします、ユウを」 


 助けてください。そう言おうとした時だった。


「頼む、社長さん! ユウを、助けてやってくれ!!」 


 車田くんがそう叫び、勢いよく土下座をした。だん、と彼の頭と床がぶつかる音が社長室に響き渡る。


「わたくしからも、お願いしますわ。ユウさんを救ってください」 


 氷華ちゃんが頭を下げる。


「……ユウお兄ちゃんを、助けて」 


 空くんが懇願する。


「……君達には、別な望みがあったはずだが、それはもういいのかね?」 


 社長さんが鋭い目でこちらを見る。


「夢を諦めたわけではありませんわ。ですが……」

「……僕達が生きていられるのは、ユウお兄ちゃんのおかげだから」

「あいつを差し置いて、自分達の望みを叶えるなんてできねえ!!」 


 皆……。 


 彼らにはそれぞれ願いがあったはずだ。車田くんの望みは知らないけど、氷華ちゃんは孤児院の再建、空くんはお母さんの病気を治す。皆大切な願いがあった。 


 でも三人は、社長さんに頭を下げた。ユウを救うことを願った。


「凩くん、君はどうだね?」


「……私も、同じです。ユウを、助けてください」 


 私は泣きながら、社長さんに頼んだ。 


 社長さんの応えは……。


「残念だが、その願いは聞くわけにはいかない」

「そ、そんな……」 


 私達四人の願いは聞き入れてもらえなかった。 


 異空間フィールドを、アビリティリングを開発したディーノ社長なら、ユウを助ける術を持っていると思っていた。そんな期待を私達は持っていた。 


 でも、社長さんの応えはノーだった。 


 がっかりしている私達に社長は、次のように言った。


「地球を救ってくれた英雄を助けるのは当然のことだ。君達には別の望みを言ってもらわなければ、私が困る」 


 ……。 


 え、そうじゃあ……。 


 呆気に取られている私達を放置し、社長さんはデスクの上に設置しているマイクに声を当てた。


「『全研究員に告ぐ! 異空間フィールドに取り残された不動ユウを、ディノコーポレーションの威信にかけて、何としても救い出すのだ!』」 


 DCのビルに社長の力強い声が響いた。

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