1000000000000人の敵
ユウは私のために、エンダー側についたのだ。
「その言葉を、敵の言葉を信じて、オレ達を裏切ったってのか! ふざけんな!」
「やつでさんのことが絡むと、周りが見えなくなるのは知っていましたが、ここまでとは……。呆れ果てて物も言えませんわ」
車田くんが炎の拳でユウに殴りかかる。氷華ちゃんが後方から水の援護射撃。
ユウはそれらの攻撃を紙一重でかわす。
「確かにマーザの言葉は嘘かもしれない。だが真実かもしれない。だから俺は、より可能性の高い方を、やつでを守ることのできる選択肢を選んだ」
ユウは背負い投げの要領で車田くんを氷華ちゃんのいる方に投げ飛ばす。
二人の身体が衝突し、車田くんと氷華ちゃんは倒れる。
「お前達はエンダーを倒すと意気込んでいるが、知っているのか。お前達が倒さなければならない敵の数を」
「へ、知るかよ! 数なんか関係ねえ、何人何十人で来ようと倒すだけだ」
「お前らしい答えだな車田。だがお前はエンダーの数を知らないから、そう言えるだけだ。教えてやる、お前達が倒すべきエンダーの数は……」
その場が沈黙になる。
そしてユウは、その数を言い放った。
「一兆、そしてその全員が能力者だ」
正直いうと、普段使わない桁数なので、一瞬その規模が分からなかった。数えてみると零が十二個もあった。
「仮に全人類七十億人にアビリティリングを持たせて戦うにしても、一人あたり百四十人のエンダーを倒さなければならない計算だ。だが、実際はもっと多いだろうな、人類全員が戦えるわけがない。幼い赤子や身体の不自由な老人もいるからな」
一人あたり百以上……。
「車田、お前はさっきこう言ったな。『何人何十人で来ようと倒すだけだ』と。できるのか? 百人以上の敵を、たった一人で倒せるのか?」
「そ、それは……!」
車田くんがたじろぐ。答えは明白だった。いくら車田くんが強くなったとは言え、百もの敵を倒せるわけがない。
「で、ですが本当にそれほどのエンダーがいるのですか? にわかには信じがたいですわ。それにそれだけの数のエンダーがいるのであれば、何故一体ずつ送り込んだのですか?」
確かに氷華ちゃんの言う通りだ。一体ずつちまちま送るより、百体くらいばーっと送れば、簡単に人類を破滅させられたはずなのに。
「俺もマーザにその数を聞いた時は耳を疑った。だから、この目で確かめた。星の大きさと、人口密度を考えると成人のエンダーは確実に一兆いる」
私は知っていた。ユウは嘘はつかない。だから彼が言う一兆という数は本当なのだろう。
「二つ目の疑問に関してだが、マーザがいうにはなるべく地球環境を維持するために小規模での侵略を行っていたらしい。最初は俺達人間のこともそれほど危険因子として認識していなかったようだ。……だが、この前の五対五の戦いで、マーザは考えを改めたらしい。本腰を入れて、人類を抹殺する気だ」
ユウは答えた。
自分が人類抹殺に失敗した場合、一兆人のエンダーが地球に向けて襲撃に来るという。
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