危うし、車田烈

 エンダーの内の一人が降りてくる。今度は赤いローブだ。


「ええ試合にしようや、ボウズ」

「へっ、お前を倒して、オレの強さをあいつらに署名してやる!」 


 今度のエンダーは、顔中に傷がある、中年のおじさんだった。


「威勢がええのぉ、ほんじゃあ始めるか」

「バトル開始だ!!」 


 始まった。 


 さきに攻撃を仕掛けたのは、熱血少年車田くんの方だった。


「はぁあああ! 火炎弾!!」 


 掌から炎の球を発生させ、敵に向かって投げつける。 

 火炎弾がエンダーを襲う。


「……無駄じゃぁ」 


 敵はゆっくりとしゃがみ、地面に手をつく。


「火山浪ぉ!」 


 エンダーの掌を起点に、大量のマグマが噴出した。


「何っ!?」 


 溶岩の壁に阻まれ、車田くんの火炎弾はかき消された。


「残念じゃったのぉ、ボウズ。わしの力は、全てを飲み込み燃やすマグマじゃ。お主の炎はわしには効かん」 


 敵の能力はマグマ。おそらく船を攻撃したのはこのエンダーなのだろう。 

 マグマの波が、車田くんに狙いを定める。


「くっ、ファイアウォール!!」 


 車田くんは自身の周りに炎の渦を発生させ、防御態勢に入った。 


 大量の溶岩が、車田くんに直撃する。


「ぐわぁああああ」 


 車田くんの痛みの込められた叫び声が島中に響き渡る。 


 結論から言うと、炎の鎧で防御したのは失策だった。 

 全てを飲み込むマグマは、車田くんの炎の盾さえも吸収し、その威力を増大させていた。


「はぁはぁ……」 


 溶岩の攻撃がやむと、そこには虫の息となった車田くんがいた。


「一撃で仕留めるつもりじゃったが……。ボウズもわしと同じ火系の能力者、熱には耐性があったか」 


 車田くんの足がフラフラしている。かなりのダメージを負ったらしい。


「車田くん、押されていますわね」

「最悪の対戦カードだな。あのマグマには、生半可な攻撃は通じないようだ。車田の攻撃はむしろパワーアップさせてしまう」

「この勝負、車田くんの負けですわね」  


 ユウと氷華ちゃんはそうそうに勝敗の行方を決めてしまう。そんな彼らの態度に、私はちょっとだけムッとした。 

 車田くんはまだ負けていない、戦いはまだ終わっていない。それなのに仲間である私達が諦めるなんて、おかしい。 


 でも、それを言葉にできなかった。 

 現状は車田くんの劣勢。彼が勝つ方法が思いつかない。


「何か、何か車田くんが勝てる方法はないの!?」

「あるにはある」

「え?」 


 私はユウの方を向く。

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