首の長いディーノ社長

「少し話が変わるが……君達は恐竜がどうして滅んだのか知っているかね?」 


 突然ディーノ社長が、理科の先生のような質問をしてくる。 

 その質問に答えたのはユウだった。


「一説には隕石の衝突が原因だと考えられているな」

「隕石の衝突によって、大量の土砂が舞い上がり、太陽の光を遮った。そして地上の温度がどんどん下がって氷河期になり、恐竜は絶滅したと言われています」 


 ユウの解答に私は補足する。理科の授業で習ったことを、私は述べた。


「半分正解だ」 


 ディーノ先生がそう告げた。私、何か間違ったこと言ったかな?


「半分とは、どういう意味ですか?」 


 私の代わりに氷華ちゃんが質問した。


「隕石によるという点は正しい。だが真実は違う。正しくは隕石と共に地上に現れたエンダーによって滅ぼされたのだ」 


 社長の口から出てきたのは、驚きの言葉だった。


「『滅ぼされたのだ』ですか……まるでその目で見たようなセリフですね」 


 氷華ちゃんの意見に賛成だ。


「『見たような』ではない。私はこの目で『はっきりと見た』のだよ」 


 そう言うとディーノさんはおもむろに服を脱ぎだした。 

 私は慌ててユウの背中に隠れて、社長の裸を見ないようにする。 


 しばらくすると、皆がどよめく声が聞こえた。何だろう。


「これは驚いたな……。やつでも隠れていないで、きちんと見ろ」 


 ユウに言われ、私は固く閉じていた瞼を開く。 

 暗闇から解放された私の視覚に飛び込んできたのは、驚きの光景だった。 


 そこには、私達の眼の前には、恐竜がいた。 


 図鑑や特撮やCGでしか見たことのない、恐竜。広い社長室を圧迫するかのような巨大な身体、キリンよりも長い首。首長竜。正式名称は分からないけど、ブラキオサウルスの類だ。


「もう一度言おう。私はこの目で、恐竜がエンダーによって滅ぼされるのを見たのだ」 


 恐竜が喋った。しかもディーノ社長の声で。 

 部屋を見回すと、社長の姿がどこにもない。 

 もしかして、この恐竜が社長?


「え、えっと……社長さんは恐竜に変身できるんですか?」

「少し違うな、凩くん」 


 首長竜がこちらを向いてくる。ちょっと怖い。


「確かに私は変身能力者だが、これが私の本来の姿だ。人間であるディーノの方が、能力を駆使して作った仮の姿だ」 


 そう言うと恐竜がどんどん小さくなっていく。 

 そして人間に、ディーノ社長になった。 

 人間に戻った社長は、服を着る。この時、私はまたユウの背中に隠れた。


「細胞レベルでの変身……まさか恐竜がこれほどの能力を持っていたとは。これは驚きを隠せないな」 


 私も驚いた。まさか恐竜が眼の前にいるなんて。しかも能力者ときた。


「おかしいことではないさ、不動くん。恐竜が栄えた期間は二億年以上、それに対し人間は数百万年。恐竜が人間以上の進化を遂げていても、なんら不思議ではない」 


 その理論だと、虫の方が凄いのではないかな。そう思ったけど、言わないことにした。

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