小休止

 あぁ、どうも。おかえりなさい。

 薄暗い夜道からようやく戻ってこられて何よりです。

 随分と生意気だったでしょう、昔の私は。振り返ってみると、これはまた酷いものですね。しかし、相手は登志世……ではなく、鳴海だったのでどうにもああいった振る舞いになるのです。

 あいつをいびるのは昔から面白いもので。あぁ、これはここだけの話にしてくださいね。


 とどのつまり、男女の色恋にはもつれが生じるものでして、あの男も遊びのつもりがあれよという間に深い関係になってしまった。隣町へ行ったのも、一体何をしていたのやら……まぁ、私にはもう関わりのないことですが。

 ここまでは、私と鳴海の初仕事を語りましたが……あぁ、まだお時間があるようですね。また別の話をしてみましょうか。

 遠慮は要りませんよ。どうぞ、ごゆるりと、なんなら聞き流して頂いても構いませんが――


 ……おや? 誰かが来ましたね。

 失礼。ちょっとお待ち下さい。


「……ごめんください。やぁ、仁科くん」

 なんだ、彩﨑さいざきさんではないですか。どうかなさいました?

「珍しく、君が店番をしているなんて。これは驚きですね。明日は嵐かな」

 いやいや、私だってたまには仕事をしますよ。

 なんです、冷やかしですか。わざわざここまでやって来て、美味い菓子もないのですか。

「あぁ、ははは。まったくその通りで参るよ。菓子は真文ちゃんにあげてしまったから……申し訳ないです」

 ふうん……あぁ、そうだ。これから彩﨑さんの話をしようかと考えていたのですが、一緒にどうです?

 おや、そんなに渋い顔をしてどうしました。そんなに思い出したくない話でしたっけ?

「それはまぁ……あまり愉快な話じゃありませんしね。しかし、僕が出て来るならば仕方ない、か。それじゃあ、お邪魔します」

 えぇ、是非。なんなら彩﨑さんの方がお詳しいでしょうし。

 というわけで、彩﨑さんにもご同席されますが構いませんよね?


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