4 真っ白なキャンバス3
3
アラームの音で目が覚めた。
華の家に泊まる時は朝飯と弁当はオレが作るから六時半に起きる。ふかふかのベッドでくっついて寝てる華を起こさないよう、オレに張り付いてた手をどかして布団の中へ入れてやる。瞼と頬に軽くキスしてからベッドを下り、両手突き上げて体を伸ばした。
トイレに行って顔を洗ってから台所に立つ。
ついこの前持って行く人が来たっぽくて、食パンが大量にあるから弁当はサンドイッチにしよう。
鍋にお湯を沸かして作ったゆで卵を潰し、華が大好きな卵サンドにする。昨日買ったトマトとアボカドを使った野菜サンドも作って、余った具は朝飯用のサラダにした。最後にもう一種類。前のリンゴがダメになる前に作っておいたリンゴジャムを挟んだデザート代わりのサンドイッチ。サンドイッチは小分けにしてラップに包んで、昨日の弁当箱を包んでた色違いのバンダナで包んだら完成。
朝飯はホットケーキミックスに潰したバナナを混ぜて焼く。焼いてる横で牛乳を温めて、華のホットミルクとオレのカフェオレを淹れた。
完成した朝飯を机に並べてから華を起こす為寝室へ向かう。
「華、起きて」
肩を揺すれば華は起きる。眠そうに視線彷徨わせて、オレを見つけてふにゃっと笑ってから伸びをする。猫みたいで本当に可愛い。
「おはよ、華」
上半身起こした華の唇にチュッチュッチュッと連続でキス。
「おはよう、秋」
またふにゃりと笑った華をベッドから立たせて、寝室から連れ出し朝食にした。
パンケーキとサラダの朝飯を食ったら歯を磨いて制服に着替え、華の髪を結う。今日は緩い感じの三つ編みを作ってサイドに垂らした。イチゴリップと桜の香りのハンドクリームを塗った後で、スマホの画面で時間の確認。まだちょっと時間があるからイチゴ味の唇を食べる事にする。
「華、可愛い。大好き」
オレを見上げた華の頬に右手を添え、触れるだけのキス。左手は腰に添えてぴったり体を寄せた。イチゴ味の甘い唇をゆっくり、舌先で撫でる。
「甘くて美味しい」
唇が触れた状態で囁くと華の目元がうっすら赤く染まった。
「かぁわいい」
ちゅぅっと唇に吸い付き、潤んだ瞳を覗く。
「ねぇ、舌出して?」
オレがねだると華の瞳が揺れた。躊躇いがちに差し出された舌を、尖らせたオレの舌先でつつく。逃げようとしたからそのまま吸い付いて絡める深いキスをした。苦しそうに華がオレの胸元を掴んでくるのが堪らない。
深く、深く華を味わって、離れた。
乱れた息を零す唇を最後にペロンと舐めてから親指で拭い、蓋を口で咥えて開けたイチゴリップを塗り直す。このキスすると華は自分で立っていられなくなるから、左手で腰を支えたまま。イチゴリップの蓋を戻してズボンのポケットに仕舞ったオレは、両腕で華を抱き締めた。
「華、大好き。可愛すぎ」
もっとしていたいけど、時間だから我慢して学校行った。
バイトないし母親が休みで夕飯作らなくていいし、放課後は制服デートをする事にした。華と指絡めて手を繋いで校門から出たら、今日はいつもと逆方向。駅に向かう。電車に乗ってのデートはまた次の機会にして、駅前のゲーセンに入った。華は音にびっくりして目を丸くしてる。お札を小銭に崩したらまずはシューティングゲーム。この前のデートで楽しそうにやってたから、ゲーム機の前へ連れて行きやってみるか聞く。
「やる」
興味津々の華が可愛くて、笑顔が溢れた。
「ゾンビとか虫が出て来るからひたすら打って。弾がなくなったらこうやって振れば補充されてまた打てるよ」
「わかった」
やり方の説明をしてから百円玉投入。
「ほらゾンビ! 打って!」
隣で一緒にやりながら華の様子を窺うと、キラッキラした顔でバンバン打ってる。
「あ! 華、あれ回復だから狙って打って! そう、上手い上手い」
「秋、蜘蛛!」
「蜘蛛も敵! 打って打って!」
華が途中でゲームオーバーになったから百円追加で復活させた。華、すげぇ楽しそう。
「ゾンビ気持ち悪い」
最終ステージまでは行けなかったけど、華は満足げに笑ってる。
「楽しかった?」
「楽しかった!」
笑顔が満開! シューティングゲームを選んで正解だったみたいだ。
「次は……車の運転してみる?」
シューティングゲームの側にあったカーレースのゲームを指差したら、華はすぐに頷いた。これもまた興味津々の様子の華にやり方を説明して、レーススタート!
「華、それ逆走してる。反対」
「逆? どっち?」
「そうそっち。そっちにずっと走って」
「秋、秋、壁が邪魔!」
不満の声を上げてる華が可愛くて、オレはぶはっと噴き出し笑う。
「壁避けて! スピード調整してハンドル切って。そうそう、上手いじゃん」
横目で華の走りを見ながらレクチャーしたら、段々華が上手く走れるようになってきた。華って飲み込み早いんだよな。
「秋、楽しい! 次は?」
カーレースが終わったら華のテンションがすげぇ上がってた。ゲーセン、気に入ったみたいだ。華が楽しそうなのが嬉しくて、オレも自然と笑顔になって手を繋ぐ。
「次は…音楽のは? 音に合わせてボタン押すの」
「やる!」
即答した華を連れて音ゲーがあるコーナーに行った。
「これはね、こういうのが音に合わせて落ちてくるから、この線ぴったりの所でボタンを押すの」
たくさん並んでるボタンを二人で半分ずつに振り分けて百円玉を入れた。華がわかんないって言うから曲は簡単そうで有名なものを選ぶ。
「聞いた事ある」
知ってる方がタイミングを掴み易いから、知ってる曲だったみたいで安心した。最初は容量掴めなくてミスしてたけど、コツを掴んだら華は上手かった。隠れた才能だ。その後はクレーンゲームで黒猫のでかいぬいぐるみとお菓子をゲットして、また来ようって約束してゲーセンを出た。
「秋とは全部楽しい」
ぬいぐるみとお菓子抱えての帰り道。にっこり笑顔の華がオレを見上げて言ってくれた言葉が嬉しくて、危うく泣く所だった。
※次回更新は2日。連続で三話、更新予定です※
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