第27話 志願兵と魔物達

 デクスシの町から、襲い来る魔物達を迎撃する為に飛行部隊が出陣した。

 ライズの使役する飛行能力を持った魔物達で構成された部隊は、その足に大きな袋を掴んでいた。


「みんなー! 敵の真ん中に来たよー! 袋を破っちゃえー!」


 飛行部隊のリーダーであるハーピーが号令をかけるとともに飛んできたグリフォンやヒポグリフといった猛獣型の魔物が横並びに並んでいき、自分の後ろ脚に縛り付けられた袋を前足の爪で破り捨てる。

 すると空いた穴から次々と銀色の輝きが地上へと落ちてゆく。

 それは金属塊だった。

 町の鍛冶屋や大工が廃棄する筈だった金属塊を武器として利用したのである。

 古くなった剣や斧を小さく砕いたものなので、投げてもそこまで大きなダメージを与える事は出来ない。

 だが、高々度から重力による加速のかかった金属塊は非常に恐ろしい武器であり、地上から多くの魔物達の悲鳴が上がる

反撃を受ける心配のない一方的な攻撃、しかも敵陣の奥深くまで容易に届くという、敵にとっては悪夢の様な光景であった。


 だが今回の敵は知性のない飢えた獣。

 集団の一部が大打撃を受けたからと言って撤退するような知恵はなかった。

 倒された魔物達の死体によって敵の集団が分断される。

 そして死んだ魔物の死体を後続の魔物達が踏み越える。


「今度は私たちの攻撃開始よー!」


するとハーピー達の後方から新しい魔物達がやって来る。

巨大な蝶の魔物、パピヨンをリーダーとする第二飛行部隊だ。



パピヨン達第二部隊が金属塊の追加を放出すると、ハーピー達の攻撃で死亡した魔物達の上を通り抜けようとしていた後続の魔物達に襲い掛かる。

再び魔物達が死亡し、更に後続の部隊が同じ場所で金属塊を落としては同じ場所で魔物達の死体が積み重なってゆく。

それを繰り返してゆく事で、ついには後続の魔物達が乗り越える事が出来ないほどの魔物達の死体の山が出来上がった。


敵を分断させる事で相手の進軍を遅らせる、それがライズ達の作戦の一つだった。

後衛の敵が遅らせてる間に前衛の敵をせん滅し、態勢を整えてから後続の敵を待ち受ける。


「今の内に前衛の敵をせん滅させるぞー!第三部隊撃てー!」


 民間人の志願部隊が一斉に弓を放つ。

 素人の弓である為まともに飛ばなずに地面に刺さる矢が多い中、一部の矢が敵陣まで届く。

 だが素人の攻撃が命中するはずがない。だが大量の敵がすし詰めで迫ってくる為、狙いをつける必要はない。志願兵達の攻撃は面白い様に敵に命中していった。

 しかし敵の数はまだまだ多く、攻撃を当ててもどんどん近づいてくる。


 このままだと城壁まであと少し、そんな時だった。

 ズボッ‼

 鈍い音と共に最前列の魔物達の姿が消える。

 そして、彼らの居た地面に黒い穴が開いていた。

 それは、落とし穴だった。

 ライズの従魔であるワンドワームが掘った、町を囲むように作られた円形の横穴だった。

 落とし穴は深さ7m、幅3mあり、一度落ちると登るのは容易ではなかった。 


「よし、接近戦部隊! 落とし穴に落ちた魔物を攻撃しろー!」


 指揮官の号令に従い、非常に長い槍を持った部隊が落とし穴に落ちた魔物達を攻撃してゆく。

 攻撃するのは戦闘経験のない志願兵部隊だった。

 レティは戦力として期待できない志願兵達を、魔物にとどめを刺す為の部隊に配属させた。

 落とし穴に落ちた魔物達は、こちらに攻撃する事が出来ず、狭い落とし穴に居る為に回避も満足にできない。その為、万が一にも反撃できない深さに落としてから、長い長い特注の長槍で上から一方的に攻撃する事で志願兵達を活用しようという作戦だった。


 そして、彼らが町に接近する魔物達を攻撃している間に、実戦経験のある冒険者達とライズの魔物達が動いていた。

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