第66話 名前を呼ぶな、あの××の名前を
「そんな馬鹿な……初めてやってきたパークであのお方の声を十回も聞くだなんて……」
私マギヤ・ストノストは、タケシさんの発言に対して、ヴィーシニャさんやトロイノイ、あとメルテルさんなどが近くにいるのも忘れて、うなだれるしかなかった……。
……タケシさんがやたら聞けるなら私も聞けるのではと、耳をすますと、あれらは本物ではなく無駄に再現度の高い声真似でした。
気を取り直してパーク巡り及びトロイノイ他の見守りをしながら、聞き耳を立てても、本物のあのお方の
「それにしても皆、キャラ達のこと種族とか特徴で呼んでるけど、あれら個別の名前ってないのか?」
「ありますよ、ただ名前を口に出すと災いが起きると言われてまして。あの白猫は名を呼んでから丸一日『出来立てのポップコーンはいかが?』しか言えなくなり、黄色ネズミは呼んだ翌日の雷の日に木の下にいると高確率で死にます」
「黄色ネズミの後半、当たり前のことじゃ……?」
「あと、あのお方の名を呼んだあかつきには、極寒の地あるいは宇宙の果てまで飛ばされたり、首をはねられたり、砂にされたり、魔力を全て奪われたりなど、とにかくろくなことが起きないので決して呼ばないように。二度以上呼ぶなどもっての他です。私、それを実行して夜の砂漠へ飛ばされながらも、めげずにまた名前を呼んで魔力を持ってかれた人を一人知っています」
まあ、あの人は砂漠に着いてすぐに目覚めて戻ってきたのですが、並みの人間なら死んでるので、そこはいらない情報でしょう。
ついでにゲストキャラ二体の名前を呼ぶとどうなるか――バツ口の白兎の名前を呼ぶと、一日口が聞けなくなる。青いボディと白いポケットが特徴的な丸い手足の雪だるまもどきの名前を呼ぶと、ネコをタヌキと呼んでしまう――もタケシさんに教えておきました。
名前を呼んだ後にどんなキャラか説明するとき、タヌキ型ロボットと呼ぶはめになっちゃうあいつ、かなりのネズミ嫌いだけど、黄色ネズミはいいのかと内心思いながら俺、タケシと皆はお土産店にいた。
各キャラクターが描かれた文房具類やキーホルダーや服やお菓子などが並んでいる。
マギヤ曰く三つの
「そういえばトロイノイのことはいいのか?」
「ああ……あのお方をお慕いしてること自体は伝えているのですが、どれほどかはちょっと控えめに伝えていまして……」
「いや俺が聞きたいのは誘っといてトロイノイ放置でいいのかっていう……いや、けど、好きをお慕いしてると言う時点で相当だと思われてないか?」
「いえいえ、貴重なあのお方グッズとトロイノイのどちらかしか選べないとしたら、トロイノイを選ぶ程度の好意ですよ。あのお方グッズはまた手に入れればいいですが、トロイノイはこの世に一人だけですし代わりも存在しませんから」
そう言った後、……さすがにこれは、わがまま過ぎるでしょうか、とタトゥーチョーカーを吟味しだしたマギヤ。
俺も当初の目的たるグッズを眺めてたら、見覚えのあるものを見つけた。
色のついた三つの
でも……黒は無いんだよな。マギヤのあのお方が俺の知ってるあれだったら、黒が無いと、と思うし。初めてあのキーホルダー見かけたとき一番下以外の石が黒かったから、黒と赤オレンジの奴を二個持ってて、うまい具合に繋いでたと思ってたら違うのか。
あ、キーホルダーになんか説明書きが付いてる。何々………………え?
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