第60話 告解者ホイホイ、トロイノイ。よいよい……わけないマギヤの態度。

 マギヤに恋愛的な意味や懺悔的な意味などで、いろいろ告白され、夏を迎えることになったトロイノイ。

 夏を迎えるということは制服も夏仕様、つまり、よほどの寒がりでなければ薄着になるというわけで。

 一年経っても相変わらず気持ち程度な自分の胸のふくらみと、ヴィーシニャの圧倒的ボインや他の同級生の胸を見比べ、もう気にしないって決めたのに……! と、ぶんぶん頭を横に振るトロイノイ。

 というのも、自分に告白してきたマギヤが、この頃、自分以外の女にうつつを抜かしているように見えるのである。



 魔法実技の授業を終えて、聖女親衛隊魔力50以上110未満ハイマナ三銃士ことマギヤと、リカ班副班長レイ、そしてもう一人、タケシ班副班長メルテル・スマートが何か会話しながら歩いてくるのが見える。

 メルテルの背丈はトロイノイと同じくらい、胸囲は現役日常警護班女子十一人の中で胸囲三位なレイの次の次、つまり何気に上から五番目であるが、同学年の女子としては平均程度に過ぎない。まあ、それでもメルテルの胸がトロイノイより豊満なことに変わりはない。


 レイへの態度は日頃のマギヤと大差ないの無関心そうというかツンツンというかだが、問題はメルテルへの態度である。

 トロイノイと二人だけでいるときのマギヤは、精神年齢や知能指数が極端に下がったような態度で甘えてくるか、まばたきかトイレ休憩しか許さないでじっと見つめてくるかなのだが。

 マギヤがメルテルに見せる態度や表情は上記のいずれでもない。

 話し口調こそ敬語のままだが、小気味よさそうな笑顔でメルテルに接しているのである。

 要するに、マギヤの性格等を考慮すると、ツッコミ側の口調が口調なら「そんな顔できたんか、われぇ!?」とか「どちら様?!」などと言われそうな感じなのである。


 あんなマギヤの顔を見てトロイノイは冷静を保てるのか?

 答えは……否である。端から見たらいつも通り振る舞っているように見えるかもしれないが、内心は結構暴れている。

 なんだったらこんなに落ち着いていられない自分に本人も戸惑っている。



 マギヤもトロイノイも聖女にまつわる出番がない休日。トロイノイは目の前のマギヤにメルテルとのことについて問いただした。

「マギヤ……、メルテルに、ああいう顔できるのは、なんで?」

「……確認しますが、ああいう顔、とは?」

「……笑顔よ。あんな、あんな笑顔、ウリッツァ班にいたときも、あたしと二人のときも見せなかったのに……」

「……ごめんなさい。トロイノイを不安にさせたようでごめんなさい。……それと、最初の質問への回答が全く出なくてごめんなさい。私がメルテルさんにそんな顔していたなんて、貴方に言われるまで自覚がなくて……」

「班離れてる間に、あたしのこと、どうでもよくなった?」

 その質問にマギヤは、いいえ! と強い語気を伴って答える。

「私、言ったでしょう、貴方以外を選ぶのは余程の事態だって。貴方が今ここで生きている以上、貴方以外の異性を選ぶのはありえない。これは私の、マギヤ・ストノストの絶対的法則absolute ruleです」

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