第62話 個人戦は隠し持ってた技術《スキル》とともに

 ついに魔法等実技試験男子の部・本戦、もとい私達聖女親衛隊男子の個人戦の日が、やってきました。

 私、マギヤ・ストノストの初戦の相手は、なんとウリッツァ……。何度考えても何度トーナメント表などを見直しても最初からクライマックスですね。



 衣装よし、弓矢と剣共によし。タケシさんから、上ぶちのないブルーライトをすごくカットしそうなハ○キルーペと言われ、象などの巨大な足で踏まれたり人が上に座ったりしても壊れないことを説明したら「超頑丈なハ○キルーペだな……」などと返された眼鏡――念を押しますが拡大鏡ルーペではなく眼鏡です――よしと、戦闘用の諸装備を整えて試験会場へ足を進め、ウリッツァと対峙する。

 ああ、ウリッツァ……。去年、私は班長に勝る副班長は存在しないとばかりに貴方に負けてきましたが、もう私はウリッツァ班の副班長ではありません。

 私の中の絶対的法則absolute ruleの一つに、緊急時やあの人以外を相手に接近戦をしないというのがありましたが、あの人亡き今、ルールを書きかえなくては。

「去年あの人を斬ったり蹴ったり殴ったり出来なかった分……貴方に、その諸々をぶつけてやります……!」

 

 去年は遠距離戦ばかりしていたせいで、私の近接武器が剣であることしか言及されなかったので改めて紹介すると私の剣は片刃の剣。刃渡り六十センチ弱、全長およそ七七ななじゅうななセンチ。つばはなく、通そうと思えば柄まで通せる形状です。

 去年やむを得ずウリッツァに近接攻撃を仕掛けた際は刃のない方……みねを利用していましたが、それもやめます。

 試験のルール上、時は止められませんが、あの人以外を一方的に攻撃するのは二度とごめんなので、そこはいいでしょう。

 とはいえ、私、今でこそ遠距離戦闘重視ですが、あの人の全てを無に帰す力を知る以前は近距離戦闘を中心に鍛えていたんです、特に武器を持てない状況であの人に出くわしたとき用の格闘技術を。

 おっと、離れたって無駄ですよウリッツァ。私に弓矢があるのを忘れたんですか?

 私は多量の矢を降り注がせ、ウリッツァから一番近い矢の刺さった地点へ瞬間移動テレポートしてウリッツァをワンツーで蹴り倒しながら装備を凍らせ破壊し、後ろへ飛び退く。すると試合終了の合図が響いた。



 二回戦で戦うことになったのは、私の去年の夏の初戦の相手にして、フィー班副班長を務めているアーサー・ジーオ。

 去年の夏のアーサーは儚い人でした……。弓で両手が塞がっている私に真正面から向かってきて、そこに私が氷の矢を放ち、着弾を確認した直後、拳を握ったら氷と共にアーサーの格闘装備各種が砕けましたから。……一撃で仕留めるのは一方的に入りませんよね?

 ――ああ、今年のアーサーも儚い……。私になにか恨み言の一つでも言えるほどには粘って欲しかったです。そんなんだから私がフィーさんのことで割を食うんですよ。

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