第41話 『彼』と罠の裏側
時はロリアス・パソビエの正体が彼だとウリッツァ班等にバレた翌翌日、つまり、彼がヴィーシニャに「おはようのぎゅっ、しよ?」と言った日の翌日、あるいはウリッツァ班他がヴィーシニャを取り戻しに行く前日に巻き戻る。
朝からそわそわしているヴィーシニャに彼は一言。
「ねぇヴィーシニャ。今日は聖女親衛隊、こっちに来ないよ?」
「……どうしてそう思うの?」
「思うって言うか、事実だよ。昨日は言い出しっぺことウリッツァが魔力切れで目覚めなくって、キミを救う作戦会議が今日に延期されたからね。
いくら強者が多いと言われてる聖女親衛隊とは言え、キミの存在を無視してこのボク、
ヴィーシニャは淡々とした彼の言葉に、表情が強ばる。ヴィーシニャは彼の中にいたウリッツァと、彼のことを探る段階で、彼が自作の人形をはじめ、なんらかの形で彼の魔力が込められたもの達を通してウリッツァ班や聖女親衛隊などの実情を把握していることや、彼の真の実力などを思い知ったからだ。
「……お仕事、しなくていいの? 今日は定休日じゃ、ない、はずだけど……」
「ああ、大丈夫だよ、ボクに代わってお人形さんや他の従業員皆が頑張ってくれてるし。
ていうか、そんなこと気にしてどうしたの? ……ボクのエカテリーナになる決心でもついた?」
ヴィーシニャは、今彼が薄ら笑いながら言った『エカテリーナ』に込められた、もう一つの意味も思い知っていた。
あるがままの彼をあらゆる意味で受け入れる母であり、彼の大いなる想いを、生けるときも、彼に殺され死ぬときも、それ以降も引き受け続ける、永遠の、彼だけの花嫁。
「……あ、そうだ。あの約束、覚えてるよね? いずれ来る戦いでボクが勝ったらキミをボクの好きにするって約束」
エカテリーナになる決心についても、約束についての質問にも答えないヴィーシニャに、彼はさらに言葉を続ける。
「あの時キミは二つ返事で『うん』って言ってたけど、ボクの真実を知る前だったからね……取り消してほしい?」
その質問に小さく頷くヴィーシニャ。
「……そっか。あ、待てよ……確かキミ、あの時『うん』じゃなくて『う、うん』って答えてたような……」
彼は、うーん、としばらく考え込むような仕草をヴィーシニャに見せた後、結論を告げる。
「決めたよ、ボクは、キミの本来の処女を取らない。そっちを取って絶望する顔を見たくない……と言ったら嘘になるし、キミの本来の処女が欲しくない……と言っても嘘になるけど、『本当にボクの好きなようにしない』って点では、せめてもの情けに……なる、かな……?」
首を強く横に振るヴィーシニャ。
「あ、そういえば、ボクの部屋の記憶を見たってことは……エニスくんとのエッチも見られてるってことだよね……。あと、マナの後ろの処女からもらったみたいなこともキミに言った気がする……それでそんなに拒んでいるの? ……むしろ経験者だからってことで、安心していいポイントにならない……みたいだね」
それからお互いほとんど何も話さないまま、昼食を作って食べて片付けたり、それぞれの自室などで過ごしたり、夕食を作って食べて片付けたりした後、彼がまた話しかけてきた。
「……どうしてボクはキミをさらったんだと思う?」
「わたしとエッチなことをするため……?」
「……否定はしないけど、理由そのものではないかな」
「理由そのもの……?」
「正解はね――――」
「……え?」
彼もといロリアスから自分をさらった理由などを聞かされた次の日、ヴィーシニャは彼の部屋にあるベッドの布団の中で目が覚めた……ベッドのそばで彼にその寝姿を見つめられながらコンドーム内に射精されるオプション付きで。
「……おはよう、ヴィーシニャ。今日はキミが待ちに待った聖女親衛隊やウリッツァ班が来る日だよ……あ、よかったらこれ飲む?」
さっき出したての精液入りコンドームをヴィーシニャに差し出す彼。無論ヴィーシニャはそれを断る。
「ふーん、まあいいや。ボクが勝って、ここへ戻ったら直接飲ませてるまでだよね」
布団から起き上がったヴィーシニャは身震いの後、自分の服の上下がキャミソールとショートパンツレベルの露出度の高さで、それぞれの下の方からどんどん布地が減っていくのに気が付き、かけ布団で体を隠した。
「ああ、その服ね、ボクを拒めば拒むほど露出度が上がっていく服なんだ~。『
頭のリボン……? と呟くヴィーシニャに彼は手鏡を渡す。
いつの間にかヴィーシニャの髪型はツインテールにされていた。
それだけじゃない、頭頂部に白い蝶結びのリボン、ヴィーシニャが何気なく触れた赤い首の紐リボンはエカテリーナのロリータ服に付属していた物と思い出し……ヴィーシニャは完全にエカテリーナに姿を寄せられているのに気付き、手鏡を離してしまう。
その落ちていく手鏡を彼はスッと受け止めた。ヴィーシニャが鏡を見ていた間に彼は、いつもの服装の上にフード付きマントをはおり、頭の帽子は
「ねえロリアス、確認したいんだけど、今ここにいるあなたは、本物のロリアスよね?」
「? 当たり前じゃん。じゃあボク、戦いにいってくるよ。あ、そうそう、あそこのおまる、トイレに行きたくなったら使っていいからね。
そう言って微笑んで黄金の杖を手に取った彼は、フードをかぶって――どういう原理かフードで帽子のとんがりが隠れる――自室の部屋の出入口から出ていった。
戦闘で使う用の人形達の準備は事前に済ませて各所に配置しておいた彼ことロリアス・パソビエが向かったのは触手生物の部屋である。
リカ班に使ったあの触手生物は、凌辱及び快楽責め用にして、責められた者の思考に寄生する多機能タイプだった。
が、あれとは違い、ここにあるのは、さまざまな太さの長い触手だけがうねうねとしていて相手を拘束や、魔力や攻撃の吸収など相手の戦闘的無力化に特化したタイプの触手生物だ。
触手に彼の魔力を与え、彼は部屋を出て早々、彼の部屋へ向かう、ヴィーシニャを取り戻しに来た者達に出くわし戦うことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます