#001-第二話「豪雨、ついでに寒い。」

 翌朝、半裸にされた俺は寒くて目を覚ました。俺は上半身をすっかり剥かれてしまっていたが、リオさんはしっかりとパジャマを着こんで、毛布も二枚、完全に独占しているという状況である。辛うじて羽毛の掛布団は一枚確保できていたので、ぎりぎり生きて目を覚ますことができたというような具合だ。


 パジャマを着直してからカーテンを開けて外を見ればまだ暗く、スマホで時間を確かめてみるとまだ午前五時前だった。黒々とした雨雲と、洪水すらあり得そうな雨、遠くで聞こえる雷鳴……ある意味でこれ以上ないと言うほど素晴らしい連休の初日である。正直に行くのすら躊躇うような天気である。


「おはよ、ハルくん。どうしたの?」

「あ、起こしちゃった?」

「ううん。雨の音でびっくりして」


 リオは目を擦りながら上半身を起こした。確かに、目が覚めるほどの雨の音である。


「ハルくん、おきぬけのおっぱい、いる?」

「なななにを言ってますか、朝から」

「いらない?」

「い、いります」


 俺がそう言うと、リオは微笑んで自分のパジャマのボタンを上から二つ外した。たちまち胸の谷間とやらが姿を現す。


「くるしゅうない。ちこうよれ」


 男なんて、こうなったらもう、誘蛾灯に誘われるウスバカゲロウみたいなものよ――。


 俺は内心溜息を吐きながらも、リビドーに突き動かされる人形のように、リオの胸にダイブしたのだった。


 さてそんな具合で、一時間ばかりリオ様の素晴らしいおっぱいを堪能した俺氏であった。え、おっぱいだけですよ? 俺たち、まだそれなりに健全なお付き合いをしているつもりですからー!


 まぁもっとも、 はそれ以上を求めてやまないのは事実なのだが、これから出かけますって時にそんなことをするわけにもいかない。外で二人でキョドったりしたら余計に恥ずかしい。


「私はいいんだよ? シたかったらいつでも言ってね♡」


 とか、リオさんが天使の微笑みを見せながら言ってきたりもしたが……平常心平常心。心頭滅却である。


 その後、俺たちは食パンとサラダの朝食を時間をかけて堪能し、テレビでニュースを一通り眺めてから出かける準備を開始した。ちなみに姉は、ゴールデンウィークも大半が出勤になっているらしく、昨日の日中にげんなりしたメッセージが送られてきたりもしていた。


「今日は寒いけど、リオ、服大丈夫?」

「うん。昨日の天気予報で分かってたからね。ちゃんと温かいのを用意してきたよ」


 リオはそう言って洗面所(鏡がそこにしかない)から出てきた。


 オリーブグリーンのミリタリージャケットを白い厚手のシャツの上に羽織り、薄い水色のデニム地のホットパンツを穿いている。短い丈の白ソックスを着けていて、フトモモから足首近くまでは生足である。どこがのか、理解に苦しむファッションである……。


「リオさん、それ、足寒すぎでしょ」

「へ? そうかな?」

「だって今日の気温、最高六度って言ってたしょや。足、寒いでしょ」

「気合い気合い。女子のオシャレは気合いあってのものなのだよ、ハルくん」


 リオは腰に手を当てて、胸を張った。

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