完結編

#001 雨のゴールデンウィーク

#001-第一話「計画立案」

 猫耳娘こと、犬神万梨阿マリア先輩の襲撃事件があってから一週間。今日は四月二十九日・金曜日(になったばかり)、言うまでもなく「昭和の日」であり、ゴールデンウィークの初日である。


 残念なことに、五月二日は平日であり、残念ながら大学の講義も休講にはならず、三連休+平日+三連休という日程となった。今年の桜の開花は気象庁によれば、四月二十五日であり、丁度ゴールデンウィークの最中に満開になるんじゃないかななんて予想されていた。もうすでに場所によっては十分に花も咲いている。


 というわけで、ゴールデンウィークの風物詩といえば、円山まるやま公園での、という名の屋外パーティーである。そう、札幌の花見の時期はゴールデンウィークなのだ。卒業式はまだ雪が降り積もっている頃合だし、入学式の頃にもまだ雪が融け残っていたりもする。


 我らが漫研ティルヴィングもまた、その流行に乗っかって、ゴールデンウィーク初日の本日に……の予定だったのだが、なんと大雨である。しかも明日にはという予報が出るくらいの気温だ。ちなみに本日の最高気温は六度。さすがにこの気温とこの天気で屋外でジンギスカンというのは、吹雪の日に外でカキ氷を食うくらいの愚行である。


『というわけで、花見は明後日に延期でーす』


  広川赤音アカネ、通称レノレノ先輩が送って来たLINEメッセージを見つつ、俺とリオは「だよね」と頷き合った。本当なら今日、漫研の全メンバーが揃う予定ではあったのだが、延期になってしまったことにより、次々と離脱表明のメッセージが流れてきた。ちなみにリオさんはパジャマ姿で布団の上に寝転がっている。俺はリビングのテーブルの上に肘をつきつつ、ガラナを飲んでいる。


『あちゃー。まぁ、里帰りとかいろいろあるもんね』


 残念そうなレノレノ先輩のメッセージに、俺とリオはそれぞれのスマホを前にして苦笑する。結局残ったのは、俺とリオ、レノレノ先輩、そして、猫耳娘――マリア先輩だけだった。


『四人でジンギスカン、する?』


 マリア先輩の疑問文に、レノレノ先輩が神速で反応する。


『ちょっと寂しいですよね。カラオケとかボウリングとかのほうがいい?』

『寒いのはイヤ』


 マリア先輩が猫っぽいことを言う。それに続いたのがリオだ。


『ボウリング、私やったことないんです』

『えー、リオリオ、マジでー!?』

『まじでーす』

『俺も未経験です』


 俺も乗っかる。ここで言いそびれると何かと面倒くさそうだったからだ。


『そっかー。なら、してみる? 初・体・験♡』

『うふふー。してみたいです、初体験♡』


 ノリノリのリオである。反応に困る俺を、ニヤニヤニヤニヤしながら見つめてくるリオさんである。


『私、ハルくんと初体験♡します』


 ぶふっ。


 飲んでいたガラナを鼻から噴き出す俺氏。ものすごく痛い。文字通り涙が出る。


『いいよね、ハルくん。初体験、私とで』

『ちょっとリオさん!?』


 声に出しながら、メッセージを送信する俺氏の背中に、唐突にリオのおっぱいがふにっと当てられる。その間にまたメッセージ着信音が響き、レノレノ先輩のメッセージ文字列が表示された。


『よしー。じゃー決まり。今日の十時に駅集合ー!』


 そうこうしているうちに、なし崩し的に、ボウリング大会の開催が決定されたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます