新たなる脅威が育ちつつあるのよ!
私は箕輪まどか。高校生の霊能者だ。
先日、女子バスケ部の一年生が三人練習中に転倒して捻挫するという事件が起こった。
転倒させたのは、女子バスケ部の前部長である遠藤千秋さんだったが、遠藤さんがかけた呪詛を増幅させたのは、同じ女子バスケ部で三年間補欠だった小杉佳代子さんのお
それを見抜いたのは、私でも、綾小路さやかでもなく、気功美少女の柳原まりさんだった。
まりさんとの合同攻撃で、騒動の元となった負の気を吹き飛ばし、事件は一応の解決を見た。
しかし、遠藤さんが生徒会の役員だった事を考えると、あの上田博行が関わっている公算が高かった。
翌日は何と偶然にもG県民の日で学校が休み。
私はさやかと待ち合わせて、私の彼氏の江原耕司君のお宅に伺った。
とは言え、今は江原ッチは親友である美輪幸治君の家に居候状態だ。
何故なら、江原邸には、西園寺蘭子さん、八木麗華さん、小松崎瑠希弥さん、神田原明蘭さん、そして、まりさんがいるからだ。
思春期真っ只中の江原ッチには、刺激が強過ぎるので、美輪君の家に移転させられたのだ。
その方が、私としても安心である。
江原ッチはかっこいいいんだけど、どうも女の子に弱いから、心配なのだ。
「私もここにいるんだけど?」
さやかはまた私の心の声を盗み聞きしていたようだ。
「だって、さやかは大久保君一筋でしょ?」
ニヤリとして言うと、さやかはムッとした。大久保君とは同じクラスの男子で、さやかが真剣に好意を寄せている。
「違うって!」
顔を真っ赤にして否定するさやか。可愛いんだから。
「いい加減にしないと、メールであんたの恥ずかしい話をばらまくわよ!」
さやかが小声で告げた。これは本気だ。私は苦笑いして、
「わかったわよ」
そう応じ、江原邸の玄関に入った。
出迎えてくれたのは、江原ッチの妹さんの靖子ちゃん。彼女はまりさんから おおよその事を聞いているようだ。
「どうぞお上がりください。父と母には話してあります」
私とさやかは邸の奥にある道場に通された。
「おはようございます。話はまりさんから聞きました。新たな動きがあったようですね」
そこには、江原ッチのお父さんである雅功さんとお母さんである菜摘さんがいた。
「はい。気になるのは、呪詛を使った遠藤さんなんです」
さやかが言うと、菜摘さんが、
「呪詛のかけ方を教えたのは、間違いなく上田博行でしょう。でも、遠藤さんは博行に縛られている様子はありませんね」
「はい。上田は私達が気づいた時点で、遠藤さんとの繋がりを断ち切ったようです」
今度は私がさやかを押し退けて 言った。すると雅功さんが椅子を勧めながら、
「相変わらず、引き際が鮮やかです。恐らく、上田は遠藤さん絡みで何かするつもりはないのでしょう。遠藤さんがこのタイミングで呪詛を使ったのは、彼にしてみれば、余計な事だったようですよ」
「そうなんですか」
ここぞとばかりに幸せになるお題目を唱えた。隣に座ったさやかの視線が冷た過ぎて風邪をひきそうだ。
「西園寺さん達は、今度は上田親子が微かに残した痕跡を追っています。出羽の遠野泉進様も力を貸してくださるでしょうから、連中を見つけるのは時間の問題でしょう」
菜摘さんがお茶を淹れてくれた。
「まりさんも行ったのですか?」
さやかが尋ねると、雅功さんは微笑んで頷き、
「ええ。富士の気脈を辿るには、柳原さんがいないと難しいのですよ。さすがの西園寺さんも、裏の蘭子さんがいないために、その辺りは少し力が不足しているようです」
「そうなんですか」
更にすかさず幸せのお題目を唱えると、今度は雅功さんと菜摘さんまで呆れ顔になった。
嫌な汗を掻いてしまったまどかである。
「お父さん、まゆ子さんがいらっしゃったわ」
靖子ちゃんが道場に入って来た。え? まゆ子さん?
我がエロ兄貴の慶一郎の奥様だ。何だろう? あれ、この気はもしかして……。
「おはようございます、江原先生。お邪魔します」
まゆ子さんは、我が姪の小町を抱いて登場した。
「可愛い!」
さやかが反応し、小町に近づいた。小町は眠っているようだ。
『お邪魔します、江原先生、菜摘先生。お久しぶり、おばちゃん』
小町のテレパシーが聞こえた。
「うわ、凄い。この子、もうこんな事ができるんですね」
さやかが目を見開いて雅功さんを見た。
『お姉さんが、まどかおばちゃんのライバルのさやかさんね。私、小町。よろしくね』
小町は眠ったままで会話しているのだ。凄過ぎる……。脅威だ。
「こちらこそよろしくね、小町ちゃん」
さやかは私を見てクスクス笑いながら言う。私はムッとして、
「小町、その『おばちゃん』はやめてよね。まどかお姉ちゃんにしてよ」
『わかったわよ。タラちゃんと同じにすればいいんでしょ』
小町も笑っているようだ。癪に障るが、仕方がない。
まゆ子さんには全く話の流れが掴めていないので、顔を引きつらせていた。
「申し訳ないですね、まゆ子さん」
雅功さんはまゆ子さんを椅子に座らせて言った。まゆ子さんは小町の顔を見て、
「いえ。今まで、私と慶一郎は何度も皆さんに助けていただいています。小町がその恩返しをできるのであれば、嬉しいです」
私はその言葉を聞いてホッとした。
まゆ子さんも、小町の力を受け入れてくれたのだ。良かった。
「そう言っていただけると助かります」
雅功さんは菜摘さんと微笑み合った。そして、
「小町ちゃんのテレパシー能力は、私も菜摘も及びもつかない程です。その力を使って、私達の連携を補助してもらいたいのです。決して戦いの
げ。小町、零歳にしてすでにそこまで頼りにされているのか。
『オチオチしていられないよ、まどかお姉ちゃん』
小町の声が聞こえた。
身内に敵以上の脅威を感じてしまったまどかだった。
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