綾小路さやかと仲良くお勉強なのよ!

 私は箕輪まどか。中学二年生の美少女霊能者だ。


 もう好きにして。突っ込んでも無視しても一緒なんでしょ?


 


 あの鴻池仙一率いるサヨカ会残党との戦いも私達美貌の戦士とイケメン戦士達の勝利に終わった。


 仙一は、私の彼氏の江原耕司君のお父さんの雅功さんが、お師匠様のところに連れて行き、改心の修行をさせるらしい。


 


 サヨカ会残党との戦いがあまりにも壮絶だったため、私はGWも楽しめず、中間試験もどうしたのか記憶にない。


 それもこれも、作者が話を長引かせたせいだ。恨みます。


 


 そして今日は土曜日。


 私は何故かお休みなのにお勉強中だ。


 え? お前が休みの日に勉強するなんて、雪でも降るんじゃないか、ですって?


 相変わらず発想が「昭和」ね。違うわよ。


 私は、江原ッチの邸に来て、綾小路さやかと勉強中なのだ。


 さやかは、この前の戦いで彼氏の牧野徹君が危ない目に遭ったので、もっと霊能力を高めたいと言った。


 それを受けて、雅功さんが企画したのが、「小松崎瑠希弥さんの集中講座」だったのだ。


 まるでタイトルが予備校みたいだけど、気にしないで。


 それを聞いた私も、急遽その講座に参加する事にした。


 さやかとは以前随分いろいろあったけど、今では友達だから。


 あいつ、私以外に友達がいないのよ。可哀想でしょ?


「全部聞こえてるんだけど、まどか」


 さやかが言った。しまった、こいつには私の心の声が丸聞こえなんだ。


「少しは自覚しなさいよね」


 さやかはムッとして言った。私は苦笑いをして、


「冗談よ。怒らないでよ、さーやかちゃん」


と、G県警鑑識課の最古参である宮川さんの物真似をした。


「何、それ?」


 白い目で見られた。


 


 私とさやかは、江原ッチの邸の道場で瑠希弥さんの講義を受ける。


 板の間に正座なのはきついが、さやかには負けたくないので、我慢だ。


「よろしくお願いします」


 瑠希弥さんと相対して、お辞儀をする。


 さやかも、瑠希弥さんの事は心から尊敬しているようで、いつもと違ってにこやかだ。


「軽く悪口言わないでよ」


 また聞かれていて、睨まれた。私は大袈裟に肩を竦めた。


「まずは気の高め方を覚えてもらいます」


 瑠希弥さんは私とさやかの「コント」を軽くスルーして、講義を始めた。


 私もさやかも真剣に瑠希弥さんの話を聴く。


「まずは下腹部にある丹田たんでんに気を集中します」


 瑠希弥さんが自分のお腹を触って説明する。


 ちなみに私達は全員、汗を掻いてもいいようにTシャツに短パンだ。


 だから、さやかに付き添って来た牧野君も、私を心配してくれている江原ッチも出入り禁止だ。


 江原ッチのお母さんの菜摘さんの配慮だ。


 Tシャツ短パンの瑠希弥さんなんて、江原ッチと牧野君には刺激が強過ぎるからだ。


 それに私とさやかも、結構悩殺的な姿だしね。


「あんたはお子ちゃま体型だから大丈夫でしょ」


 さやかに嫌みを言われた。私は反論できなかった。


 ちなみに丹田とは、気を集めてる事により霊薬の内丹を作り出すための体内の部位の事だ。


 要するに身体の中の気を集約する場所。


 ここをうまく使いこなせないと、霊能力も高まらないと言う。


「意識してみて下さい」


 瑠希弥さんが言う。私とさやかは、下腹部に手を当て、気をそこに集める事を意識した。


 おお! 自分の気がそこに集まり出すのを感じた。


「いいですよ。そのまま、限界まで高めてみて下さい」


 瑠希弥さんがにこやかな顔で言う。


 下腹部の気は、そこを打ち破りそうなくらい集中して来た。


「それではその気を身体の様々な場所に移す事をイメージしてみて下さい」


 瑠希弥さんの指導で、私とさやかは、集まった気を右手、頭、左手、右足、左足、胸と、様々な場所に移動させた。


「それを意識せずにできるようになるまで訓練します」


 瑠希弥さんが立ち上がり、手本を示す。


 本当に自然に気を移動させる瑠希弥さん。驚きだ。


 私とさやかは思わず顔を見合わせた。


「さあ、やってみて下さい」


 私達も立ち上がり、気の移動を試みる。


 しかし、移動がぎこちない。


 それに異常に疲労する。


「気を意識し過ぎると、体力と精神力を消耗します。なるべく意識せずに移動させるように」


 瑠希弥さんは私とさやかの気の動きを見ながら、いろいろとアドバイスをしてくれた。


「はい、それまで。少し休みましょう」


 瑠希弥さんが言うと、私とさやかはその場にドスンと座り込み、ベタンと倒れた。


「疲れたあ」


 私は大声で言った。すると瑠希弥さんが、


「最初は相当消耗しますが、慣れれば大丈夫。二人ともスジがいいですよ」


「そ、そうですか」


 私は起き上がって瑠希弥さんを見た。瑠希弥さんは呼吸も乱れていないし、汗も掻いていない。


 それに比べて私とさやかは、Tシャツが汗でグショグショだ。


「はい。汗を拭いて下さい」


 瑠希弥さんがタオルを渡してくれる。


「ありがとうございます!」


 私とさやかは礼を言い、タオルで汗を拭った。


「へえ、まどかもブラしてるんだ」


 さやかがまた嫌みな事を言う。汗で下着が透けて見えているのだ。


「う、うるさいわね!」


 確かにスカスカだけど、してるわよ! って、何言わせるの!


 しばらく休憩してから、私達は再び気の巡らしを行った。


 時間が経つにつれ、私達は気をスムーズに移動できるようになった。


 でも、どうしても意識してしまうので、疲れが溜まる。


「はい、そこまで。今日はこれで終わりにします。また来週ね」


「ありがとうございました」


 私達は互いに向き合って正座し、お辞儀をした。


 


 そして、その後は楽しいランチタイム。


 江原ッチと牧野君も同席するので、私達はシャワーを浴びてから着替えをすませ、江原家のキッチンに行った。


 菜摘さんお手製のよだれが出そうな料理の数々を見て、疲れが吹き飛ぶ。


「さあ、召し上がれ」


 菜摘さんの言葉を合図に、


「いただきます」


と私達は食事を始めた。


「残念だなあ。まどかりんの短パン姿、見たかったなあ」


 江原ッチが囁いた。


「嘘ばっかり。本当は瑠希弥さんの短パン姿を見たかったんでしょ?」


 私が言い返すと、江原ッチはわかりやすく動揺した。


 全く、男って奴は……。


 さやかは仲良く牧野君と歓談しながら食事をしていた。


 こいつも、あの嫌みな性格を直してくれれば、いい子なんだけどなあ。


「聞こえてるわよ、まどか」


 さやかが私をチラッと睨んだ。私はテヘッとおどけてみせる。


 


 まだまだ憧れの人である西園寺蘭子さんは遠い存在だと思うまどかだった。

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