今日、私はモテモテ?なのよ!
私は箕輪まどか。中学生の霊能者だ。
今、私は、小松崎瑠希弥さんと入浴中。
恥ずかしい。
瑠希弥さん、おっぱい大き過ぎ。
腰、くびれ過ぎ。
それに比べて……。コホン。
「どうしたの、まどかさん?」
瑠希弥さんは不思議そうな顔で私を見る。
「いえ、別に」
まさか、巨乳が羨ましいです、とは言えない。
瑠希弥さんは身体を洗い終わり、湯船に浸かった。
私はその隙を突いて素早く髪を洗い、身体を洗い、ソッと湯船に浸かる。
「昔、ばっちゃとこうして一緒にお風呂に入りました。懐かしいな」
瑠希弥さんはニコッとして言った。
「そ、そうですか」
私は瑠希弥さんの巨乳を視界に入れないようにして言った。
すっかり忘れかけていたが、今私達がいるのは、山形県鶴岡市の山奥にある遠野泉進という修験者のお爺さんの家だ。
私と瑠希弥さんは、お風呂から出ると食事の支度を手伝いに行く。
「あ、瑠希弥、抜け駆けしたな。まどかと風呂入りおって」
麗華さんが言った。え? いつから私、この人に呼び捨てにされるようになったの?
まあ、「子供」って呼ばれるよりはマシだけど。
「え? そうなんですか? 申し訳ありません、八木先生」
素直な瑠希弥さんはあっさり謝罪した。しかも、NGワードもあっさり言った。
「まどかは覗きジジイ除けなんや。まあええ、もう一度一緒に入ろか、まどか?」
麗華さんは有無を言わせぬ雰囲気で私に言う。すると蘭子お姉さんが、
「何言ってるの、麗華。貴女は一人で入りなさい」
「え、何でや? ウチがジイさんに覗かれてもええんか、蘭子は?」
麗華さんは蘭子お姉さんに食ってかかった。しかし蘭子お姉さんは、
「貴女がお風呂に入っている間、私が泉進様の相手をするから、大丈夫よ」
「そ、そうか。わかった」
麗華さんは大鍋を覗きこんで、
「もうええんちゃうか、これ?」
と味見をした。
「まどかちゃん、私と一緒にお風呂入って」
蘭子お姉さんが小声で言って来た。私はドキッとした。
「頼むわね」
蘭子お姉さんはウィンクして、また料理に取り掛かる。
「あ、手伝います」
瑠希弥さんが蘭子お姉さんの危なっかしい包丁捌きを見かねて言った。
そして夕食がすみ、一休みしてから、蘭子お姉さんに付き合って本日二度目の入浴タイム。
泉進さんの話だと、蘭子お姉さんは麗華さんの半分しかおっぱいがないという事だったが、それはどうやら嘘のようだ。
蘭子お姉さんも立派な胸だ。
「な、何?」
身体を洗っていた蘭子お姉さんが私の視線に気づいた。
「蘭子お姉さんも、胸、大きいじゃないですか」
「ありがとう。そう言ってくれるの、まどかちゃんだけよ」
お姉さんはよほど嬉しかったのか、抱きしめてくれた。
何だか恥ずかしいし、おっぱいが直に顔に当たってるんですけど。
「麗華と一緒にいると、どうしても自分の胸が貧相に思えて……」
他人が思う以上に、貧乳だと思っている人は大きさに敏感なのだ。私も含めて。
「私ももっと大きくなりたいです」
「まどかちゃんは成長期だから、まだこれからよ。でも私はもう……」
あらあ。また落ち込ませてしまったみたい。
お姉さんには胸の話はNGのようだ。
すると、
「こら、蘭子、何抜け駆けしとるねん!」
麗華さんがどこも隠さないでいきなり入って来た。
爆乳だ。それと……熊の手? そっちは解説不要か。
「れ、麗華、何なのよ!?」
「何なのやあらへんがな!」
しばらくパニック状態だった。
結局、麗華さんが乱入したせいで、泉進さんは覗きたい放題だったようだ。
私まで見られたの?
そして翌日。
まだ夜も明けない時間に、私は起こされた。
「修行に行くそうです。まどかさんはどうしますか?」
同室の瑠希弥さんが尋ねた。私は欠伸をして、
「無理みたいです。ご遠慮します」
「わかりました。ごめんなさい、起こしてしまって」
瑠希弥さんは爽やかな笑顔で言い、部屋を出て行った。
私も、二度寝する気にはなれず、起き出して部屋を出た。
「おはようございます」
廊下で泉進さんと会った。何故か顔が少し腫れている理由は訊かないでおこう。
「おう、嬢ちゃん、おはよう。修行には行かんのか?」
「はい。朝は弱いので」
泉進さんは豪快に笑った。
「まあ良い。嬢ちゃんにはまだ早いからの。あと二、三年したらまたおいで」
「はい」
私は愛想笑いをして応じた。
「蘭子ちゃんは、裏の人格を何とかしたいと思っておるようだ」
泉進さんは急に真顔で話し始めた。
「裏の人格?」
私は見た事がないのだが、とにかく滅茶苦茶強くて、残忍な人格らしいのは知っていた。
「あの子は優しい。その優しさ故にいろいろと危ない目にも遭っている。裏の人格は、その優しさが生み出した影。そして、心のどこかで、霊能力を疎ましく思っているために、裏の人格の凶暴性に拍車をかけてしまっている」
「そう、ですか」
私は何とかNGワードの危機を乗り越えた。
「蘭子ちゃんは、嬢ちゃんに随分と心を開いておるようだ。あの子の力になってあげてくれ」
「はい」
私は何だか凄く嬉しかった。蘭子お姉さんが私に心を開いてくれていると聞いて。
やがて蘭子お姉さん達が早朝修行から戻り、朝食タイムになった。
「瑠希弥が
麗華さんが舌なめずりして言う。蘭子お姉さんは苦笑いして、
「私も麗華も、お料理苦手だからね」
「わはは」
麗華さんは大笑いして、
「やっぱり瑠希弥もここにいたらええねん」
「ええと、私は……」
瑠希弥さんは困り顔で蘭子お姉さんを見た。
「瑠希弥には瑠希弥の役目があるのよ、麗華。勝手な事言わないの」
蘭子お姉さんは瑠希弥さんを笑顔で見ながら言った。
ちょっぴり悲しそうだったのは、気のせいだろうか?
瑠希弥さんもそうだった。
そして、私と瑠希弥さんは、帰る事になった。
「お世話になりました」
泉進さんにお礼を行った。
「いつでも遊びに来なさい。特に瑠希弥ちゃん」
「はい」
瑠希弥さんは只一人、泉進さんの魔の手を逃れているので、全然警戒する事なく応じている。
「嬢ちゃんもな」
付け足しのように言われた。
「はい」
私は苦笑いして応じた。
「またね、瑠希弥、まどかちゃん」
蘭子お姉さん、心なしか涙ぐんでる。
「はい」
私達は声を揃えて返事をした。
「またな、瑠希弥、まどか」
「はい」
麗華さんも、蘭子お姉さんに影響されたのか、涙目だ。
私達はたっぷりと別れを惜しみ、出発した。
「ありがとう、まどかさん。まどかさんが一緒に来てくれなければ、私挫けてしまって、西園寺先生に叱られてしまっていたわ」
「そうなんですか」
うわあ! また言ってしまった。
「このままここにいられたら、なんて思ってしまったわ。それでは、菜摘先生に申し訳ないのにね」
瑠希弥さんはやっぱり強い。私なら残ってしまっただろう。
「瑠希弥さんて、本当に素敵です。尊敬しちゃいます」
「ありがとう」
瑠希弥さんの涙が、太陽の光を反射した。奇麗だ。
帰りは、特に何事もなく、私達はG県に戻って来た。
「付き合ってくれてありがとう、まどかさん」
「こちらこそ、ありがとうございました」
私は家の前まで送ってもらった。
瑠希弥さんの車が走り去るまで、手を振る。
あれ? 何か忘れているような……。
ハッとして財布を見る。
出がけに入れた
兄貴にお土産買ってくるの忘れてた。
まあ、いっか。可愛い妹が無事に帰って来たのが、一番のお土産だから。
結構、ポジティブシンキングなまどかだった。
ところで、ポジティブシンキングって何?
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