恐ろしい敵が現れたのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者だ。


 どうやら、これで落ち着くのね。


 もう何も言わないわ。


 この前、自称イケメンの叶秀明を懲らしめて、それ以降奴がチョッカイを出して来る事はない。


 おかげで私と私の絶対彼氏の江原耕司君は、今まで以上にラブラブだ。




 そんな中、少しだけ気になっている事がある。


 私の尊敬する西園寺蘭子お姉さんと連絡が取れないのだ。


 携帯は繋がらないし、以前聞いた事務所の電話も不通になっている。


 何かあったのだろうか?


 ちょっと嫌だったけど、エロ兄貴に相談してみた。


「え? 蘭子さん? 誰?」


 今は県警鑑識課の同僚である里見まゆ子さんとラブラブな兄貴には、すでに蘭子お姉さんは過去の人らしい。


 全く、なんて冷たいの!?


 次に私は、オカリナを吹いてみた。


 兄貴の婚約者と思い込んでいる小倉冬子さんなら、何か知っていると思ったのだ。


 でも、冬子さんも来てくれない。


 どういう事? 何かあったのかしら?


 で、もう本当に嫌だったんだけど、関西のおばさんの携帯にもかけてみた。


 おばさんも出ない。


 何これ? もしかして、どっきり?


 更に、一度しか会っていないけど、名刺をもらった蘭子お姉さんのお弟子さんである小松崎さんの携帯に電話してみた。


 でも出ない。


 もしかして、私って「パジキ」っすか?


 泣きそうになったが、蘭子お姉さんの事務所の電話が「不通」だったのが気にかかった。


 嫌な予感がしたので、私は江原ッチの家に行った。


「まどかりん!」


 いきなり現れた私を、江原ッチがもの凄く喜んでくれたが、


「ごめん、江原ッチ、お父さんいる?」


「え?」


 何故か顔を赤らめる江原ッチ。何を考えたのだろう?


「まどかさん、お待ちしていましたよ」


 ヘラヘラしている江原ッチの後ろから、彼のおとうさんの雅功まさとしさんが現れた。


 


 私はまた、あの道場に通された。但し、今回は椅子が用意されている。


「おかけ下さい」


 江原ッチのお母さんの菜摘さんもいた。私は椅子に座って、


「あの、何かあったんですか?」


 お父さんはお母さんと顔を見合わせてから、


「貴女のお友達の西園寺蘭子さん達が、警察に指名手配されているのです」


「ええ?」


 何の冗談だろう? 蘭子お姉さんが指名手配?


「どういう事ですか?」


 私はようやく言葉を言えた。お母さんが、


「西園寺さんは、日本の闇を牛耳っているサヨカ会に睨まれてしまったのです」


「サヨカ会?」


 随分とふざけた名前だ。


「それで、罠に嵌められ、警察に連行されたのですが、その後脱出したようです。しかし、そのために全国指名手配にされたのです」


 お父さんが続けた。私は思わず江原ッチと顔を見合わせた。


「西園寺さんは、八木麗華さん、小倉冬子さん、小松崎瑠希弥さんと一緒にいるようです」


 ああ。八木麗華って言うんだっけ、関西のおばさん。


「サヨカ会は政界にも財界にも、そして警察や検察にもその勢力を及ぼしているカルト教団です。西園寺さん達が危険です」


 お父さんは深刻な顔で言う。


「どうすればいいんですか?」


 私は泣きそうになるのを堪えて、お父さんに尋ねた。


「何とか西園寺さんとコンタクトを取って、サヨカ会を壊滅させるしかありません」


 お父さんの言う事は正しいだろうけど、そんな大きな組織を壊滅させるなんてできるのだろうか?


「私は、サヨカ会の宗主である鴻池大仙に辿り着ければ、勝機があると思っています」


 お母さんが言った。江原ッチが、


「どういう意味?」


 お母さんは江原ッチを見て、


「鴻池大仙は、邪悪なものと取引して、強大な力を手に入れたの。だから、大仙さえ倒せば、組織は壊滅するわ」


「そうなんですか」


「で、その親玉はどこにいるのさ?」


 江原ッチは俄然がぜんやる気だ。


「本部は山梨県側の富士山麓にある。しかし、大仙には影武者がいて、どこにいるのか遠くからではわからないのだ」


 お父さんが答えた。


「そこにはいない可能性もあるわ」


 お母さんが付け加える。


「どうしてですか?」


 私は疑問に思って尋ねた。お母さんは深刻な顔をして、


「西園寺さん達をそこへおびき出そうとしている念を感じたのよ」


「蘭子お姉さん達は、それに気づいているのですか?」


 私はドキドキしながら重ねて尋ねた。


「もちろん。だからこそ、その前に合流したいのよ、西園寺さん達と」


「はい」


 私は江原ッチを見た。江原ッチが笑顔で頷く。


「彼女達の気を感じる事はできますが、交信はできません。恐らく、サヨカ会の陰陽師集団の妨害工作でしょう。ですから、彼女達の気を探り、合流するしかありません」


 お母さんが言った。私と江原ッチはお母さんを見た。お父さんが立ち上がる。


「では、参りましょうか、まどかさん」


「はい」


 私はかつてない敵との戦いに震えていた。

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