図書館でお勉強するのよ!

 私は箕輪まどか。セーラー服が似合う中学生の美少女霊能者よ! キャピ☆


 ……。


 作者様、無理しなくて良いから。若ぶっても仕方ないでしょ?


 今までいろいろ嫌味を言ったけど、本気じゃないからね。


 お身体、大事にしてね。


 え? お前が優しいと気味が悪いですって!?


 フンだ!


 


 この前、悪役少女の綾小路さやかが騒動を起こした。


 結局彼女も寂しかったのだ。


 これからは優しくしてあげようと思った。


 ホントよ。


 ってか、私は元々優しいしね。


 何よ、みんなして白い目で見て!


 まどか、負けないから!


 ってな訳で、今日は絶対彼氏の江原耕司君と図書館で仲良くお勉強の約束。


 親友の近藤明菜と、彼女の彼氏で江原ッチの親友である美輪幸治君も合流する。


 二人はさやかの策略で別れかけたけど、今はもう大丈夫だ。


 そして何故か、力丸ミートの跡継ぎ、力丸卓司君も、江原ッチの妹さんの靖子ちゃんとやって来るらしい。


「どうしてリッキーが来るのよ」


 明菜はリッキーが苦手なのだ。しかし美輪君が、


「そんな事言うなよ、アッキーナ。靖子ちゃんがお兄ちゃんと勉強したいんだってさ」


と言うと、


「仕方ないわね」


 明菜は美輪君にはメロメロなのだ。絶対行動には出さないけどね。


 そして私達は図書館で落ち合い、お勉強タイム。


「きゃあ!」


 館内に響く、女性の悲鳴。


「何?」


 私と江原ッチは、霊的な波動を感じて、受付へと走った。


「痛いよおお」


 受付の前で、小学校低学年の男の子が、腕から血を流して泣いていた。


「何があったの?」


 私と江原ッチは周囲を見渡した。


「いない……」


 さっき感じたのは、強い怒りの波動。その怒りの波動は、血を流して泣いている男の子に向けられていた。


「まどかりん、危ないぞ、これ。無差別に襲いかかっているのかも」


 江原ッチが囁く。私は、


「しばらく様子を見ましょう」


 その男の子は、間もなく駆けつけた母親に付き添われ、図書館を出て行った。


「またよ」


 図書館の人が囁くのを私は聞き逃さなかった。


「どうしたんですか?」


 私はすかさず尋ねた。図書館の人はビクッとしたが、


「ああ、あの子、いつも借りた本に落書きするんですよ。母親に言っても、取り合ってくれなくて」


「そうでしたか」


 それにしても、最近はマナーの悪い利用者が多いらしい。


「いたっ!」


 今度は中年の男性が叫んだ。その人も同じく手から血を流している。


「大丈夫ですか?」


 図書館の人が声をかけた。男性は痛みのあまり、膝を着いてしまった。


「江原ッチ!」


 私はまたさっきの怒りの波動を感じ、江原ッチと辺りを見回した。


 いた。フロアの隅に、老人の霊が。


 怒りの波動は、その老人の霊から出ていた。


「何であんな事をするのよ、おじいちゃん?」


 私が話しかけると、老人の霊はキッと私達を睨んだ。


「儂の寄贈した本を傷つけるからだ」


「え?」


 私は思わず江原ッチと顔を見合わせた。


「儂は遺言で、儂の書斎にある全ての本をこの図書館に贈った。生まれ育ったこの町が好きだったからな」


 老人は悲しそうだ。私もその悲しみを感じ、気分が落ち込む。


「しかし、最近、その本に落書きをしたり、自分の欲しいところを破り取ったりする馬鹿者が増えた。悲しい事だ」


 私も江原ッチも、何も言えない。


「だから、そういう不逞ふていやからには、制裁を加えるのだ」


 何だか難しい事を言ってる。あれれ? 波動が変わってる!


 老人の顔が兇悪になった。いけない! 悪霊になってしまう。


「わかった、おじいさん。俺が代わりに注意するよ。だから、もう逝くべきところに逝ってくれ。貴方が悪霊になるのは、見たくない」


 江原ッチが静かに諭す。すると老人の顔が穏やかさを取り戻した。


「ありがとう、少年よ。そうするよ。後は頼むよ」


 老人は笑顔で消えて行った。


 さすが江原ッチ。


「カッコ良かった、江原ッチ。まどか、惚れ直したわん」


 私は江原ッチの腕を掴んで言った。


「へへ、そう?」


 江原ッチは照れ笑いして言った。




 図書館の人に確かめてみると、さっき怪我をした中年男性は、本の中身を破り取っていたらしい。


 その人は、結構頻繁にそんな事をしていたので、遂に警察を呼ばれた。


 当然の報いね。反省しなさい。




 私達は明菜達のところに戻った。


 そしてさっきあった事を話した。


「許せないわね、そういうバカは」


 不正が大嫌いな明菜は憤激した。美輪君が、


「今度そういう奴を見つけたら、俺が制裁を加えてやる」


と妙に嬉しそうに言ったのは、ちょっと怖い。


「これもそのおじいちゃんに怒られる?」


 靖子ちゃんが指差したのは、本の上によだれを垂らして眠っているリッキーだった。


「今制裁を加えてあげるわ!」


 私はリッキーの頭をゴツンと殴った。


「いて!」


 涎まみれのリッキーがムクリと起き上がる。それを見た美輪君が、


「良かったな、力丸、頭殴られただけで。まどかちゃんは怒ると、金た……」


と言いかけたのを、明菜が真っ赤になって口を塞いで止めてくれた。


「図書館で何言い出すのよ、美輪君!」


 明菜は自分のお喋りのせいで私の必殺技(?)を美輪君に知られたのを気にしているようだ。


 それにしても、やめてよね、美輪君! 江原ッチも笑い過ぎよ!




 でも、ちょっぴりいい体験をしたまどかだった。

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