アメリ
アメリ(2001) 1
d.t.ジャン・ピエール=ジュネ
t.ギヨーム・ローラン
c.恋愛/ドラマ フランス映画
……アメリ22歳。どこにでもいるようで、この世にたった一人しかいない人たちとの煩雑とした日常を切り取ったお話。特別劇的なことは起こらない。
以下、ネタバレ有り。
アメリは少し内向的な女性。
彼女は街を眺めている今この瞬間に絶頂に達したカップルの組を数えているという。私の心の中に住む関西人は何やってんねんとツッコんだ。
「不器用な女性」と言われているアメリ。ニノ(アメリが惹かれている男性)に届け物をする際手回しと根回しを尽くし、誘拐犯のように公衆電話を鳴らし、貼り紙で彼を誘導し、彼が置き去りにしたカバンにシュッと届け物を入れて脱兎のごとく去る。シャイガールすぎるね。なんなら一周回って手口が鮮やかに見える。不器用を通り越して逆に器用じゃないかとも思うが……。
そんなアメリだが、一方でわりと上手に人と関われているのでは? というシーンもある。
同僚(アメリはカフェで働いている)と常連の客をくっつけるキューピッドになったり(のび太が若かりし頃の両親を仲直りさせた時とよく似た手法で)、よく行く店の店員の報復のために、その店の店主の家に忍び込んでイタズラをしたりする。かなりアグレッシブである。
アメリは"どう転ぼうが自分の生活に支障のない距離で起こる出来事"に対しては、要領良く冷やかしを入れられる。
一方で、自分のこととなるとどうしていいのかわからず、戸惑ってしまう。可愛いような、面倒くさいような、人間らしいような。
明言はされていないけれど、恐らくアメリには求めているものがある。自分が何かを求めていることは自覚しているが、何を求めているのかは自覚していない。そんな風に感じられた。
話が前後してしまうけど、序盤で忘れ物を届けにうん十年前の住人を探そうとするシーンがあって、少しだけ「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の鍵の持ち主探しを想起させられた。「アメリ」も同様に忘れ物の持ち主探しを軸に展開するのかな? と期待したので、解決したときはなんだか裏切られた気分になった。もしかしたら、アメリも私と同じガッカリを感じたのかもしれない。もしかしたらそれは、アメリが求めている何かに届かなかったことによる虚無感なのかもしれない。
アメリに照準を合わせて感想を書いたけれど、内容は想像以上に群像的で、それぞれの登場人物の今までの人生の説明が頻繁に入るから、初見だとあっちこっちそっちと忙しいかも。
他の映画だと語られることのない人たちの、(悪く言うと、本当に失礼だけど)取るに足らない人生。大体の人がそうやって生きているっていう生活の真実が描かれている。アーーっと叫びたくなる。
そんな風に多方面に散弾していたものは、ラストに行くにつれ、アメリとニノにストーリーが絞られていく。
(あと、映像作品ではご法度とされる"カメラ目線"が、作品の中に2.3度現れる。アメリと目が合うと居心地が悪く、背筋が凍るようだった。異化効果半端ない!)
余談。ドラマ、東京タラレバ娘で倫子さんが映画の話をした時、彼女のお気に入りの映画としてアメリの名前が挙がった。その後、倫子さんの台詞に「フランス映画苦手なんだよな〜〜」というものがあったが、アメリもフランス映画やぞ〜〜! 関西人呼ぶぞ〜〜!
そう、私は「心の中の関西人」というワードをただただ言いたいだけである。最近のお気に入りなんだ。
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