ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011) 2
d.スティーブン・ダルドリー
t.エリック・ロス
c.ドラマ
トム・ハンクス(パパ/トーマス)
サンドラ・ブロック(ママ/リンダ)
トーマス・ホーン(オスカー・シェル)
……少年オスカーの父親は宝石店を営んでいる。研究者になる夢を手放し、家族のために経営者になることを選んだのだ。
父親はアスペルガー症候群の傾向があるオスカーに「調査探検」という遊びを提供し、他人と関わる機会を作っていた。
しかし、次の調査探検の課題である「NYの幻の第6区を探す」を達成する前に父親は9.11に巻き込まれて亡くなってしまう。
その1年後、オスカーは父の遺品の花瓶の中に入っている鍵を見つける。この鍵は父に通じている。そう確信したオスカーはそれが何を開ける鍵なのかを明かすための調査探検を始める。
タイトルの意味は作品をちゃんと観ればキチンとわかる。
悲しいことに、私は人間に対して冷たい感想を抱いている部分があるんだけど、この作品からは人間の心のあたたかい部分を確かに感じられるから、オスカーを通して自分まで救済されるような感覚がした。捨てたもんじゃないというか。皆大切なものを失って、痛みを抱えて生きている。ずっと傷は癒えないの。傷があることが当たり前になるから、誰もが普通に生きているように見えるだけ。
激しい絶望と虚無感の中に置き去りにされても 愛を持って撫でてくれる手や、包んでくれる他者の身体に救われたりする。どんなに思い出の人を心の支えにしていたとしても、触れ合うことで他者を慈しむ、これは生きている者同士にしかできないこと。
後悔と努力と模索と希求と探求と焦燥と愛情と冒険と恐怖心と不可抗力と幸と不幸と人間と縁と人情と………。
いろんなものを乗り越えて、それでも父に通じたいと願って一歩を踏み出し続けるオスカー。誰よりも恐怖を抱いているものが多いのに、誰よりも頑張って探し物をしている。本当に素敵。私は自分と戦う人が好きだから。
親子だからって理由だけで必ずしも互いに最愛の存在にはなれないと思うからこそ、オスカーの行動理由・指針になる父の存在の大きさ、失ったものの大きさを想うとこれを書いている今でも涙が出そうになる。
オスカー役にはとあるクイズ番組に出ていた少年をスカウトしたらしい。つまり、演技経験のない少年を抜擢したということ。彼の演技、とても素敵だった。すごいね。
以下、たくさんある好きなシーンについて。ネタバレ有り。
9.11の日、パニックの最中、パパはママに電話する。「君に出会えてよかった。愛してる」と、最後を覚悟して言葉を伝えるパパと、最後を拒むママのやり取りにもう号泣。愛してるという言葉はここぞ、というときに紡いでこそ響く。悲しすぎる。
愛してるの繋がりで言うと、ママを傷つけた後の
「本当はそんなこと思っていないよ」
「思ってるわ 本音よ」
「I love you」
も最高だった。
何百人のブラックさんに会うも手がかりが一向に掴めず、パニック状態になるオスカー。
「始めた時と何も変わっちゃいない!もうこれ以上はムリってくらい努力した! 」
ものすごく心掴まれた。彼の状況を少し自分と置き換えたから余計に熱くなった。彼は本当にものすごく頑張っているから。その気持ちの爆発にカタルシスを覚えた。
鍵探し初日、出かける前にかつてパパと一緒に稽古したテコンドーの型を復習うところ。
すぐにハグするブラックさん。
おじいさん・鍵の持ち主に出会った時に秘めていたことを打ち明けるシーンも最高。
指を使って数字を表す、アレ好き。もう僕は限界だった。
ママに膝枕されながら、パパがかつてママに関して「あんなイイ子は他にいない。」とオスカーに話していたことをママに伝えるところ。父親が母親を褒める言葉を子どもに伝えるって、なんて素晴らしいことなんだろうね。
あんなに恐れていた地下鉄。と、ガスマスク。心底怖がっている表情。
幻の第6区を見つけて、あの時乗れなかったアレに乗って迎えるラスト。
とても聡明で神経質で器用なのに不器用な彼が人との関わりの中で感じたことや恐怖を敗るところ、オスカーの生き様をちゃんと見ていさえすれば、ものすごく響く。
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