第584話 夏休みの始まり

――――――――――――――――――プライベートホーム



 レイに案内されリビングのソファーに腰を落ち着かせたムクロは気が抜けたのか大きなため息を吐きその様子をバッチリとユリハたちに見られておりクスクスと笑っているとアヤカは武器のメンテをすると言って自分の部屋へと消えて行ってしまった。



「アヤカってマメだよねぇ。

武器に愛着があるっていうかさ??あそこまで必死にしている理由って何だと思う??」

「そんなの簡単じゃない。

高い目標がここにいる・・・だから戦闘が終わった後はいつも我先にと自分の部屋でせっせと武器のメンテをするんじゃないかしらね。

私たちのジョブはスペルがメインだからあまり杖を意識してメンテすることはないけれど剣やサブ装備の点検をすることは他のジョブもだけど必須だと思うわよ。」

「うん、私も最近弓を作ってサブにしているのだけどアヤカにはやっぱり敵わないよ。

メインの武器って言うこともあるけど私の弓のブレ具合とかすぐに見抜いてメンテしてくれて・・・私とは何か決定的に違うんだと思ったよ。

だから弓や銃だとアヤカに追いつけるように頑張らなくっちゃ!!」

「それじゃ私もこの場で剣の手入れでもするとするか。

とは言っても砥石で研いで切れ味を上げるくらいなんだが・・・それでもマスタリーを上げるのに必要な項目だからクーリアたちもよかったらどうだ?」

ミストの提案にムクロは賛成して剣を取り出すとクーリアもサブ武器に設定していたショートソードを取り出し砥石で研ぎ始め。

ヴァニスにユキシロたちもダガーやメインの槍を持つファムでさえも砥石で研ぎだした。



「ぬぅ~~ファムのその槍は砥石で研いでどれくらい変わるのかのぉ??」

「すごく変わるよ!!硬い装甲を持つ相手には装甲に大きく影響するし柔らかい相手なら貫通力が増すんだよ?

そもそも殺傷力に優れた剣等の一部武器とは違って盾の装備ができるのもランサーの良い所なんだ。

私は盾を持つと攻撃がやりにくいから持たない戦法だけど・・・次はどんなモブと戦えるのかなぁ~楽しみだよ。」

「次のモブか、次のモブはまた別として今回戦ったあの3人は何が狙いだったんだろうな。」

「そんなの簡単じゃん!!!私たちをコケにしてレアアイテムを横取りする作戦だったんだと思うよ!!!あぁ言う連中は時々いるんだよねぇ~

最後の最後まで手を出さずに倒せそうなタイミングで攻撃しかけてくるんだよ。

ホントやになっちゃう面倒なプレイヤー達だよ。」

「だけどあの強さは本当だった。

ブラックアクアリーゼを使った様子もなかったし・・・本当にレア素材を目的にしているのか私たちの想像できない別の目的があったのかだよね。

考えれば考えるほどモヤモヤしちゃうけれど私たちは私たち全員で勝てたんだよ。

だからこれ以上あのプレイヤー達の話をしないで楽しい話をしようよ!!ね?」

「よし研磨は終わりだ。

それじゃこの場を借りてリアルイベントのキャンプの話でもしよう。

まず移動はアヤカの車で移動しキャンプ場につき次第キャンプ場の運営者から器材を受け取りテントを張り夜のための準備を行うといった流れだ。

2泊3日という短い期間でのイベントだが存分に楽しもうじゃないか!!」

ミストの説明に納得したムクロたちは各自がもってくる食材等の話を終えるとレイドボス戦が終わった時間が遅かったため深夜になっており。

今日はこのまま解散しようと言う流れでムクロは床に就いていた。



そして次の日の早朝・・・悠一は何かが聞こえると目が覚め目を開くと自分の隣には涼孤が堂々と寝ており夏休みには恒例とも言える現象が起こっており。

音のするものを探すとどうやら涼孤のブロッサムが唸っているように見えた悠一は涼孤の肩をちょんちょんと突き起こそうとしたのだが・・・・



「姉さんブロッサムに通話が来ているんじゃないか??

姉さん・・・姉さん??

――――――――――――うふぁッ!」

「ん~~~悠ちゃん・・・・まだ夏休みは始まったばかり・・・・

ん~悠ちゃんおはよう・・・どうしたの私の部屋に・・・あぁまたやっちゃたみたいだね・・・それじゃお休みしよっか・・・」

と、抱きしめつつも再度寝ようとした姉を悠一は必死に訴えかけブロッサムに連絡が来ていることを伝えると寝ぼけながら涼孤はブロッサムの通話に反応した。



「ん?由里??どうしたんだ??

まだ朝の7時だと言うのに・・・・ん?昨日の約束??

―――――――――しまった!?ついうっかり寝過ごしてしまった!!!

――――――――――悠ちゃん!!これからすぐに服を着替えるんだ!!これからとある場所へ行くぞ!!」

「えぇ??俺も??というか・・・由里が玄関先で待ってるのか??」

悠一は恐る恐る玄関を開けてみるとそこには待ちぼうけを喰らって笑顔のまま香り着いた由里の姿があり。

悠一はひとまず由里をリビングに招きお茶を淹れてもてなした。



「急に誘ったのは私だから伝え忘れもわかるのだけれど・・・・

まさか涼孤さんに限って通話のスルーはないと思っていたのだど・・・」

「本当にすまなかった。

昨日あれから悠一に話をしようと部屋に向かったのだがすでに悠一は夢の中で連絡できずでな。

だが安心して欲しい時間はまだまだある!!!そう夏休みだからな!!」

「で、服を着替えてどこに行くつもりなんだ??

何も聞かされてい状況ないんだが・・・・」

悠一は不思議そうな顔をしながら由里達にどこに行くのかと問うと。

由里は肩からしょっていたカバンから白い封筒を取り出し悠一に見せた。



「ここに今日は涼孤さんと3人で行こうかなって思っているんだけど。

悠一君・・・今更だけど断ったりしないよね??」

「へぇ~水族館か・・・もう何年もいってないな。

俺は暇だから由里たちが迷惑じゃなければついて行こうかな。」

「迷惑なわけがないだろ??

悠一、こういう時は由里の気持ちを無下にしないために楽しむべきだ。

由里もそうだと言っているだろ??なぁ?」

由里は涼孤に無理矢理言わされた風に頷くと悠一は由里に白い封筒を返し今日はよろしくと言うと3人は水族館へと足を運んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る