第487話 別れの涙とこれからの道

―――――――――――――――プライベートホーム


 ホームの中に入ると、足音を聞きつけた懐かしいモノ達が駆け寄り。

そのうちの2人にムクロは押し倒され・・・・ユリハはその光景を見て笑みをこぼしていた。



「フフフ、ムクロ君と久しぶりに会えて2人とも喜んでるようだし私は先にリビングで待ってるね。」

「主殿ッ!!!お帰りなのじゃ!!!

クンクン・・・クンクンクン・・・ヌ??主殿・・・はどこなのじゃ??」

「ムクロぉぉ~~ホントにひさしぶりだね~~

私もお土産が欲しいなぁ~~」

「2人とも・・・私よりも先にご主人様の胸にダイブするとはお仕置きものです。

いえ、そんな事よりもクーリアたちから色々とあちらでの話を聞きました。

フィールたちとうまくラスボスを倒したと・・・・本当にお疲れ様でございます。

では2人を片付けて奥のリビングへ向かいましょう。」

レイはそう言って剛腕装甲で2人をひょいッと掴んで運び・・・ムクロはそのまま奥へと進んで行くと。

クーリアは未だに悲しいのか顔を隠して座っていた。



「ムクロが最後のようね。

コレで全員無事に帰還したけれど・・・少し物足りないわね。

あっちの世界でしか行動のできないフィールと過ごした数日は本当に掛け替えのない大切な日々だったわ。

だけどずっと悲しんでもいられないのよ?私たちにはまだまだ先があるの。

だからそろそろ顔を上げたらどうかしら??」

「うぅぅ・・・・そうだけどさぁ・・・やっぱり考えたら考えるだけ悲しくなっちゃうじゃん!!

フィールも一緒にこっちに来られたらって思うし・・・・そりゃコラボイベントだからずっと一緒ってワケにもいかないと思うけれど・・・・

だけどそれだけ大切な仲間だったって事だから・・・・」

「それはこの場にいる私たち全員同じ気持ちだ。

だからこそ私たちはフィールの意思を引き継いで明日に向かわないとな。

それに私は新たなスキルを開眼できそうだからこれからスキルの開発に出ようかと思っている。

本当にフィールとの出会いと別れは私たちに与えたものが多すぎる。

だが・・・それらをどう受け止め、今後に生かすのかが今の私たちがしなければならない選択だと思う。

だから私は新たなる剣技・・・スキルを身に付けにから鍛錬してくる。」

「ミスト・・・そう・・・それなら私も付き合う!!!

私だって高貴な存在ではあるけれどそれはランクで合って技術的な事じゃないから私もフィールとの戦いで何かを閃きそうだったの。

だから私も一緒に鍛錬をしてスキルを作る!!」

「本当に戻って来てからヴァニスも言うようになったじゃない。

そうね・・・そう言う事なら私も新たな銃弾を作りにガンフィールドでサバイバルでもしてこようかしら。

あっちの世界じゃ私の銃弾がそこまで通用したようにも思えなかったから・・・これからの事を考えると銃弾の種類を考えずに使えるモノの開発をしないと。

それじゃ私も出かけてくるわね。」

話の流れからミストたちはホームを出て行き。

残ったムクロたちは久々にレイのお茶を飲みながら一息ついていたのだが・・・・



「ぬぅ・・・クーリア・・・そろそろ口を付けないと温くなってしまうのじゃ。」

「ユキシロ、大丈夫・・・・そのうち元気になるから・・・きっとね。

だから今は心の整理がつくまでそっとしておいてあげて。」

「今回はユリハの言葉を信じてクーリアを見守りましょう。

で、ご主人様・・・お茶のおかわりはどうですか?」

「いや俺もこれでいいかな。

ちょっと外に出てくる・・・・」

「そう、だったらこのクーリアでも連れてってあげたらいいんじゃない??

1人だと何かしらのイベントが起こりやすいムクロの護衛役としてね。」

「そう言う事らしいけど・・・クーリア??

行かないのなら私が代わりに行くけどいいの??」

ファムの言葉にクーリアはバッと立ち上がって否定し、ズズッと紅茶を飲み干し。

ムクロの手を握ってクーリアは外に飛び出して行った。



「お、おいクーリア!!!ストップストップ!!!

俺の行きたいところはこの始まりの都の先にある丘なんだ。」

「え?丘??そんな所に何があるの??

って、ちょっと待ってよぉ~~~」

ムクロの言う丘を目指してクーリアはついて行き・・・その丘に辿り着くと。

そこには夜になっているからか空に様々な色で光り輝く星々があり・・・・ムクロは地べたに座ってそれを眺めており、クーリアも星を眺めながらムクロの隣に座った。



「こんなに星が綺麗に見える場所があったなんて・・・・情報通なマジカルクーリアちゃんも知らなかったよ。

―――――――――灯台下暗しって言うやつかな??」

「そうだな・・・意外とこの丘から夜空を眺めるプレイヤーはいないから穴場だな。

それにしてもこの星もそうだが・・・あのFFの世界で見た星空もすごかったよな。」

ムクロは今見ている星空とFFの世界で見た星空と重ねて見て呟くと、クーリアもあの時に見た星空を重し出しながら見ると・・・再び涙が溢れ出し・・・顔をくしゃくしゃにしてついには声を上げて泣き出してしまっていた。



「うぐ・・・本当に・・・もうフィールと会えないのかな・・・・

あれだけ楽しかったことも何もかも・・・なかったようになっちゃうのかな??」

「それはきっとクーリア自身の問題じゃないか・・・・

俺はこうやってフィールたちと離れたことに対して寂しい気持ちはあるけどさ。

フィールは最後にこう言ったんだ・・・・「自分の事を覚えててくれるか」って・・・・だから俺は絶対にフィールの事もあの世界で戦った日々も全部忘れないつもりだ。

あそこで生きた1分1秒は俺たちの大切な思い出でありフィールとの思い出だからさ。」

ムクロはそう言ってクーリアの頭を撫でて泣き止ませて星を見ていると、クーリアは目から流れ落ちている涙を拭きとって立ち上がり。

ムクロと同じように自分もフィールの事を絶対に忘れないと誓い・・・ムクロに手を差し伸べて立たせ。

元気になったクーリアと共にムクロはエリエントやユリハたちのいるホームへ戻って行った―――――――――

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