第479話 さらわれたフィール
――――――――――――――――漆黒の大地:城内
魔族の王ベイルスに連れられて畳のある部屋にやって来たムクロたちはそのまま畳の上に座ってくつろぐと。
ベイルスは指を鳴らして座布団を全員に配置し・・・座り直し。
そのままベイルスはムクロたちにお茶を淹れると言って再び指を鳴らして茶器を用意した。
「最近私はこのお茶にハマっていてな。
さぁ・・・口に合うかわからぬが飲むといい。
「その前に全員分のお茶に何か仕込まれてないかアンチスペルで確認しちゃうよ!!!
はぁ・・・うん、呑んで大丈夫だよ・・・毒とか呪いとか魔法の類はかかってないから。」
「で、いきなりだけど本題に移らせてもらうわよ。
早い方が人間側にも魔族側にも条件が良いの。
だから率直に聞くとけど魔族の王ベイルスは人間と敵対し戦争する気があるのかしら??」
「お、おいエリ・・・そんなにも攻撃的な問いでいいのか??
率直な意見は時に争いを生むものだぞ??」
「ここはエリの交渉術に任せて見よう。
こう見えてエリはかなり交渉がうまいんだ・・・・無理矢理にしているように見えて相手を根底を見定めつつ結果を出すあたり・・・俺とは別の意味で強いんだ。」
「ムクロ君とは別の意味で強い・・・よくわからないけどエリちゃんに任せてればいいって言う事だよね??
あと・・・フィール・・・顔色が悪いけど大丈夫??」
「だ、大丈夫だよ・・・なんだかこの地域の魔力が合わないのかな??
少し気持ちが悪く感じちゃって・・・・少しだけ風邪を浴びてくるね。」
フィールは違う土地の魔力の濃度差に当てられてフラフラしながら部屋を出てバルコニーへ出て行き。
王ベイルスはエリエントの問いに少し考えてから回答を口に出した。
「そちらの言いたいことは分かった。
私たち魔族は人間たちとの戦争など望んでおらぬ。
ただ・・・身の程をわきまえない愚者には過ちが起こる前に対処すべきだと私が手をくわえさせてもらっている。
それらも人間どもが下手に魔の研究をしなければよい事・・・
つまり戦争や魔族の武力介入をしなくて済むよう・・・人間どもに提案がある。
我々魔族が手を出さず和平を結びたちと申すのなら・・・魔の力の研究を止め平和に努めよというものだ。
それ以外であれば好きなようにすると言い。
あとはそうだ・・・この面白い人間、ムクロを特典として私の城に飾ってもいいだろうか??」
「は?何てったこの王は・・・ムクロッちを寄越せって言わなかった??」
「だ、だだだダメだよ!!!ムクロ君は渡せないよ!!!」
「そ、そうだぞ!!ムクロは私のものだ!!!」
「ミストのモノでもないのだけれど、どうして王ベイルスはムクロが欲しいのかしら??
これから先の戦いでもムクロは私たちにとって大きな戦力なの。
だから取られちゃうとマズイのよ??あと・・・どうしてムクロが欲しいのか聞きたいものね。」
「あわわわわ・・・なんだかすごい事になっちゃってるわね・・・・コレはフィールを呼んできた方がいいわね。
ちょっと私も離れるけどこれ以上話を大きくするんじゃないわよ!!」
話の流れかからヴァニスはフィールもこの場にいた方がいいと感じて跳び出していき。
エリエントの問いかけにベイルスは笑みを浮かべつつムクロに視線を投げ飛ばした。
「そうだな・・・この男なら私の特別な戦士になると思って置いておきたいのは建前として。
どのような場面でも冷静で器が大きく力量もかなりのモノだろう。
それにどんな相手でも敬意を払いつつも言いたいことはしっかりと語る強さも持つ。
コレは魔族でも人間の中でもそうはいない逸材だ。
つまりムクロを私のツガイにしたい。」
「ゼッタイにダメ!!!!ムクロ君!!!そんな約束を結んだらダメだよ!!!
いくら違う世界に来たからと言って浮気は許さないよ・・・」
「ユリハ・・・大丈夫だ、俺はユリハのモノだ。
ベイルス・・・悪いが俺の身をここに置いておくことも俺の愛を差し出すこともできない。
俺はこのユリハと深い関係にあるからな。」
「ムクロッち・・かっこよく言ってくれるけど私たちにもある意味ダメージなんだけどさ・・・まぁ今回は許すけど、それよりもベイルスの様子が変じゃない??」
「そりゃ自分の欲しいものがすでに取られていると知ったら怒りたくもなるわ。
だからベイルスをどうに落ち着かせないと危ないわよ。」
エリエントの言葉通りにベイルスの方から感じた事もないほどのプレッシャーがあふれ出しており。
状況的にムクロはベイルスに話しかけようと前へ出るが、ベイルスは目を赤く光らせて戦闘モードになっていた。
「ベイルス・・・話を聞いてくれ。
今はこんなことで身内の戦力にダメージが入るのは良くないだろ。
それに俺はベイルスには相応しくない・・・
俺には何もないからさ・・・だから俺じゃなくてもいいだろ?」
「どうして私の思うものは全て手に入れる前に消えて行くんだ・・・・
最後に残るのはいつもこの虚しい感情と怒りだけ・・・
いや、失言だった・・・忘れてくれ。
ムクロよ・・・そう言う事なのであればユリハを・・・力の限り命の限り守ってやるのだぞ?
そして・・・ムクロたちの持ち掛けた人間たちと和平条約にサインしよう。」
ムクロの言葉から冷静さを取り戻したベイルスは指を鳴らし・・・白い紙に和平を結ぶことのサインを書き。
さらに器用にデザインを施してからムクロに手渡すと、フィールを探しに出ていたヴァニスが1人で戻って来た。
「まずいよムクロ!!!フィールが・・・・フィールがラストファントムに塔の頂上で待つとか言って無理矢理連れてっちゃった!!!!」
「そうか・・・俺たちのやり取りを聞いてたのか。
だからフィールを・・・・くそッ・・・ベイルス話の通りだ。
俺たちはこの紙を王に届けた後に塔の頂上へ戦いに出る。
――――――――――――仲間を助けにな。」
「そうか・・・本当にムクロは面白い・・・
よしわかった・・・あのフィールの元へ一刻も早く迎えるよう私が王の住まう王都まで転送させてやろうぞ。
あと、私はままだお前を諦めておらぬから・・・覚悟してくりゃれ。
―――――――――――――転移:王都」
ベイルスはムクロたち全員に転移魔法をかけて王都に飛ばすと。
空に浮かぶ赤い月を睨みつけ・・・ムクロたちの武運を祈っていた―――――――
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