第446話 雷を纏いし雷鳥

――――――――――――――イベントダンジョン:宝探し


 瞬間移動したゴブリンはスペルのチャージをしておらず、ユリハ達の動きをじっと見つめていると。

ユリハとヴァニスのダメージが気になったミストが近寄り・・・容体を確認すると2人とも軽傷でデバフもかかっていない事からそのまま戦闘を続行することになり。

視線をユリハ達に向けている間にムクロはクイックシフトで攻撃を背後から叩き込んでいた。



「さっきの2人に入れた分のお返しだ!!!

ゼイアァアアァァッ!!!!クーリア、エリ!!!俺ごとでいいからスペルで攻撃してくれ!!!早く!!!」

「ま、マジで言ってんの!?そんなことしたらフレンドリーファイヤーでムクロッちにもダメージが・・・・・ひぃッ!?」

「何をビクビク言ってるのよ・・・ムクロがやれって言ったのなら信じてスペルを撃つだけよ。

ほら・・・やるわよ・・・ムクロの事を信じてるのなら最後の最後まで信じてやるだけよ。

ムクロ、コレで最後になるかもしれないけど文句は言わないでよ!!!

――――――――――氷の舞華フリーズローズ!!!」

エリエントの言葉からクーリアもムクロを巻き込むことを想定内としたスペルを発動し・・・・ムクロとゴブリンを諸共スペルに巻き込むと。

爆炎の中からムクロが現れて倒れるや・・・・その背後からムクロに止めを刺そうとしてよろめきながらやって来たゴブリンを負傷しながらもやって来たユリハ達の一撃によって体力バーを消滅させると、ゴブリンの体が消え去り周りに飛び散っていたスペルも消え・・・ミストたちは倒れて動かないムクロに駆け寄った。



「む、ムクロ・・・・くッ・・・・どうしていつもこんな無茶を!!!

他にも手があっただろ!!!」

「そうだよ・・・ムクロ君はいつも自分を犠牲にし過ぎだよ・・・

だから早くムクロ君の治療を―――――――」

「ん?どうしたのエリ??え?何で笑ってんのさ!?今はバカな真似をしたムクロッちに対して激しく怒る場面だよ!!

それにエリはムクロッちに甘い時があるけど今がそれだ・・・・よ??」

「あれ!?ムクロが・・・・2人!?どういう事!?」

「えぇっと・・・それはシャドーでこっちの俺がなんだ。

このモブはシャドーと俺の正体の見分けがついていなかったからこの作戦が成功したんだが・・・・ユリハ達すごい顔をしてるけど・・・大丈夫か?」

シャドーの体がさらさらと消えさっていく中、心配していた気持ちから怒りに変わったユリハ達はムクロを囲んで思いの丈を咆え。

ユリハ達にこっぴどく叱られたムクロは正座をしながら謝罪すると、ユリハやミストたちの機嫌が戻り・・・・辺りに異変が起き始めた。



「ほら、ユリハ達・・・・そこでムクロを囲んでないでアレを見て見なさい。

柱の前にポータルが現れたわ。

きっとこの先にさらに何かがあるんでしょうけど・・・・クーリア、マップに新しく何かヒントか何か出ていないかしら?」

「あぁ、そうだった!!あのモブを倒したって事は次の何かが書かれてるかもしれないね!!

それじゃ・・・・どれどれ・・・「天空を裂きし雷を打破せよ。」だって・・・」

「つまり雷を使うモブがこの先に待っていると言う事か。

だが、これだけは言っておく。

ムクロ・・・もうさっきの様な無茶は駄目だぞ?それが私たちを巻き込むとか怪我をさせないようにしようとしてもだ。

私たちも多少のダメージや痛みは平気だ・・・・むしろムクロにばかり無茶をさせて自分たちが情けなくなってしまうからな。

だから本当に私たちの事を思うのなら共に戦おう。」

「私たちだって本当に強くなったんだから過保護にしたらダメだよ?

使えるときにはしっかりと使って欲しいんだから!!

――――――――ね?ヴァニス?」

「そ、そうねぇ~~~私は別に楽が出来たらそれでいいんだけれど・・・・

まぁ高貴な私の力をまた見せてあげなくもないけど!?」

高笑いをしつつ威張るヴァニスたちにムクロは悪かったと再び詫びを入れると、次の場所を目指してポータルに触れて転移した。



「で、着いたのは良いんだけれど・・・・ここ・・・・めっちゃ高くない!?

下に落ちたら終わっちゃうよねこれ!?」

「そうね・・・この高さだから間違いなく即死。

それに助けに向かう事もできないから覚悟して移動しないと駄目ね。」

クーリアたちがポータルで移動してきた場所は高度の高い浮遊島であり。

その下には森や湖がマップ上に載っていることから地上へ戻って来たのだが・・・地上から遠いと言う事もあって早く地上へ戻るために先に進むことになり、ムクロたちは1本道を歩みだした。



「あわわわ・・・私、別に高所恐怖症じゃないけどコレはさすがにブルっちゃうんだけど!?

下から吹き上げる風を受ける度に落ちちゃいそうになるしさ・・・・

本当にこういうステージは止めて欲しいよ・・・ムクロッちぃ覗かないでよ?」

「え?何をだ??ユリハもミストも何をしているんだ??」

「む、ムクロは気にしなくていいから先頭を歩いてくれないか?」

「そ、そうだよ・・・ムクロ君が先頭を切ってくれる方がモブが急に表れても問題ないでしょ?それに・・・ね・・・」

ユリハ達は何か違うものの心配をしているのかムクロを先頭に立たせて移動を開始し。

一本道を進んでいると・・・・大きな島に辿り着いた。



「ふぅ、ここなら大丈夫そうだね・・・・で、ここが行き止まり??」

「どうやらそのようだ・・・・あそこにいるのがきっと指定されたモブの雷鳥サンダーグリフォンだ。」

「でも、見た目はそこまで怖そうには思えないけど・・・・ってか寝てるんじゃない??」

「そうね、こんなモブもプレイヤーも来ない場所なら寝るくらいしかやることがなさそうだもの。

だけどそれはそれで好都合ね・・・今のうちにスペルを唱えて最大チャージで攻撃をすれば大ダメージを与えられるわ。

そう言う事だからクーリアも私の攻撃に手を貸しなさい。」

ムクロたちの先には大きな体のサンダーグリフォンが鼻ちょうちんを作って寝ており。

その無防備な状態に対してクーリアとエリエントは最大までチャージしたスペルを

サンダーグリフォンに直撃させると・・・・



「手応えは合った・・・・だけどどういうわけかしら??

全然攻撃が効いていないように思えるのだけれど・・・・アレは一体・・・」

「いや、そうじゃない・・・・よく見て見ろ。

サンダーグリフォンの体には薄い膜が張られている・・・・つまり攻撃をあの膜で防いだシールドか何かだろう。

上級層のモブにはあぁ言うシールド持ちが現れるんだが・・・ついに上級層のモブが入り出して来たか。」

「うぇぇぇ!?マジ!?急に上級層モブとの戦闘になっちゃったわけ!?

私たちは中級層でヒーハーしてたのに・・・・だ、だ丈夫なの!?」

「つべこべ言わずに2人は移動して安全地点から攻撃を仕掛けてくれ!!!

私たちは前に出て2人に近づかないようにする!!!

さぁ前衛部隊の私たちはムクロに続いて攻撃だ!!!」

「えぇ!?ムクロ君はもう出て行っちゃったの!?

あれだけ言ったのにまた1人で勝手に・・・というよりもワクワクして突っ込んで行っちゃったのかな??だったら仕方ないのかな??」

「そんな悠長な事を言う前に前から飛んでくる雷を避けてよ!!!

ひゅわッ!?すごいビリビリ・・・・あんなの喰らったら絶対に感電状態になっちゃうじゃないの・・・・本当に高貴な私にはハード過ぎるわよ・・・・」

ヴァニスたちはギリギリで雷攻撃をかわしつつ移動しムクロに追いつくと。

ムクロの攻撃に合わせてシールドに攻撃を仕掛けて剥がしの作業に入った。

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