第387話 チャンスに恵まれない者
――――――――――――――中級層荒野:オアシス近くの狩場
ムクロのアドバイスを聞いた2人はさっそく言われた通りに行動すると。
上手くできたのか同時に杖を見せて来くや・・・
自分の方がうまくできたと言うクーリアとこっちの方が綺麗に仕上がっていると言うエリにどっちがうまくできたのかと聞かれ。
ムクロはどちらも上手くメンテで来てると苦笑いしながら語ると。
2人はため息をついてオアシスに向かって行った。
「ふぅ・・・やっと落ち着いて武器のメンテができるな。
にしても・・・この剣は全然刃こぼれもしてないし切れ味もなかなか落ちないし。
本当にガヘリス様様だな。
よし、あとは綺麗に磨いてメンテは終わりにするか・・・・」
そう言ってムクロは剣に軽く研磨をかけてから綺麗に磨きあげると。
2人の賑やかな声のする方へ向かって行った。
「あ、ムクロッち。
武器のメンテは終わったの?終わったのなら一緒に遊ぼうよ~」
「でもムクロは水着が無いのよね?
だったら水の掛け合いはできないわね。
他に何かいい遊びはないのかしら?」
「いや、俺は2人の安全を見守るだけでいい。
だから2人で存分に水の掛け合いでも好きに遊んでいて大丈夫だ。」
ムクロはクーリアたちにそう語ると・・・2人は頑なに遊びたがらないムクロの手を取って連れ出すと。
足を水の中につけるだけでもしたらいいと言われ。
言われるがまま足をつけると・・・
「オアシスの水って思っていたよりも冷たくないんだな。
それに・・・こうやって水に足を付けるのもある意味初めてかもしれないな。」
「へぇ~ムクロッちのソロ時代とかエリとのタッグ時代にもこういう体験はなかったんだね。」
「そうね、大概は戦闘か2人で通っていた店で寛ぐのが定番だったものね。
それに・・・遊ぶ時間があればモブを狩ることを私が勧めていたのも原因かしらね。
あの時は本当にムクロを鍛える事だけが趣味のようになっていたから無理もないわよね。」
エリは少しだけ過去の事を思い出してクスクス笑うと。
ムクロも色々あったと笑い出し、その2人だけの空間にイラっとしたのか。
クーリアはムクロの足を掴んでオアシスの中に引きずり込んだ。
「ぶはッ・・・クーリア急にどうしたんだ?モブでも出たのか?」
「ち、違うよッ!?どうしてこの流れで・・・ぐぐぅぅ・・・ムクロッちって本当に・・・もう・・・こうなったら私たちだけの真の思い出を作ってやる!!!」
「ふふ、そう言う事・・・ムクロ。
きっとクーリアはさっきの過去の話に置いてけぼりにされて寂しかったようよ。
だけどクーリア・・・いいのかしら?
こんなロマンチックのかけらもない思い出ばかり増やして。
過去にはムクロとのいい思い出が少なからずあったわよ?
それに比べてこの状況は・・・・ねぇ?どうかしらね?」
エリの鋭い言葉にクーリアの動きは鈍り・・・どうしようもない感情から髪をかきむしってオアシスを泳ぎ始めた。
「ふふ・・・本当にクーリアは分かりやすいわね。
ほら、ムクロ・・・手を掴んで登ってきなさい。」
「あぁ・・・助かる。
にしても本当にクーリアは何がしたかったんだ?
おかげで服がびしょびしょだ・・・」
「そ、それは・・・私のせいじゃないんだからね!!!
ムクロッちとエリが仲良さげに話してたから悪いんだからね!!!」
クーリアが叫ぶ中・・・エリはムクロの手を握って引き上げようとしたのだが。
エリの足場が急にひび割れ・・・ムクロを支えることができずに体を引きずり込まれる形となって落ち―――――――――
「あ、ふ・・・2人とも大丈夫!?
なんかすんごい音がしたけど・・・・・げッ!?」
「んん・・・・あら・・・ムクロってば私のどこを触っているのかしら?
まぁユリハには黙っておいてあげるけど・・・目の前で怒ってるクーリアを何とかした方がよさそうね。」
「んむ!?ぶはッ!?エリ・・・大丈夫か?
ん?クーリア・・・・・これはその・・・事故――――――――」
エリの言葉にムクロはすぐに密着するエリから離れるが・・・
その先には怒ったクーリアが立っており。
杖ではなく何故か護身用のハンマーを取り出し・・・ムクロに強力なスタン攻撃を見舞った。
「で、私たちがパーツを買って戻って来るまでにそんなことがあったのね。
にしても・・・どれだけ強力な攻撃をしたのよ・・・全然目覚めていない様子じゃない。」
「うぅぅ・・・だってぇ・・・私がムクロッちと思い出を作る予定だったのにエリと2人でハプニングな思い出を作るのが悪いよ!!
私は悪くないもん!!!ムクロッちが悪いんだよ!!」
「でもこのまま目覚めないのもアレよね。
こういう場合は王子に目覚めのキスをして目覚めさせるシーンじゃないのかしら?」
「え?それってなんか違うような気がするんだけど・・・
私でもわかるよ?その発言が違うって言う事・・・
でも・・・私にもチャンスがあるのなら・・・ゴクリ・・・乗ってみようかな~なんて・・・」
気絶したムクロを前に・・・ユリハ達がいない事をいいことにアヤカは下らないとそっぽを向いて銃の修理を始めると。
クーリアは我先にとムクロの方へ近づくのであった。
「ちょっと待ちなさい・・・
この状況でクーリアが先に行動するのは不公平よ。
こういう場合はじゃんけんか何か公平に順位を決められる方法でないとファーストは譲りたくないモノよ。
ファムもそう思うわよね?」
「え、あ・・・うん・・・それに・・・早くしないとムクロが目覚めちゃうかもしれないから手っ取り早くじゃんけんでいいんじゃないかな?」
「んん・・・・・ぐぅ・・・」
「どうでもいいけどムクロを安静に目覚めさせるって方法はクーリアたちにはないの?
何だかうなされている様だけど。」
気絶中のムクロを気遣うアヤカの言葉を聞いたクーリアたちであったが。
それはそれと言って・・・すぐに目覚めた方がいいと言う力業な発想からじゃんけんを行い。
勝利したクーリアから順にムクロ側に移動し・・・・
「ムクロッち・・・今、目覚めのキスを・・・・してあげるから・・・・」
「いいから早くしなさい。
後がつかえてるのよ?それに目覚めたら意味ないのよ?」
「ああぁぁぁ・・・なんだかこうやってするのを見てると見ちゃいけないモノを見てるような気がする・・・・あわぁぁ~~~」
「・・・・・・・・・」
アヤカは黙って見つめ・・・クーリアの唇がムクロに触れようとした瞬間・・・
「んん・・・いたた・・・ん?クーリア?一体何をしてるんだ?
それにみんなも・・・アヤカ戻ってたのかお帰り。」
「えぇ、無事にパーツが買えて戻ってきたらこの有様よ。
で・・・痛い所とか何か違和感はない?」
「そ、そんなのあるわけないじゃん!?
何をバカなこと言っちゃってんの!?アヤカは本当に心配性だよ~~アハハハハ!!!」
「チッ・・・・クーリアがもたもたしたせいでデザートを食べそびれたじゃないの。
でも・・・ムクロが気が付いてよかったわ。
危うくクーリアに汚され・・・いいえ、無理矢理に起こされるところだったのよ?」
「あはは・・・うん・・・でもこれで無事に済んだしいいんじゃないかな・・・
で、アヤカはどれくらいで直せそう?」
クーリアはエリエントに自分は汚れてもないし綺麗な体だと主張する傍でファムがアヤカに武器の修理状況を確認すると。
思っていたよりも破損状況が悪く・・・修理に難航している様子であった。
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