第217話 黒刀バルファレート

――――――――――――――ガヘリスの工房


工房の中に入り・・・広い作業場に向かうと、中でガヘリスが剣の鞘を作りながら待っていた。

そして、集中しているのかガヘリスに声が届いておらず・・・少し大きな声で呼びながら顔を近づけると、その作っていた鞘でぶん殴られた。


「ご、ごめん・・・その、びっくりしちゃって・・・・大丈夫??

で、このウサ子は誰??この前言ってたお仲間さん???」

「ハ~イ、私はムクロッちの仲間のクーリア~ヨロシクネ♪

にしてもすっごい大きな工房だね・・・って、いつまでムクロッちは寝てるの??」

「割といいのが決まって痛いんだ・・・・いててて。」

座り込んでいる俺に対して2人は同時に手を差し出し・・・睨み合って硬直状態が続き―――――


「へ、へへへぇ・・・譲らない気・・なんだね・・・

さぁムクロッち!!!私の手を取って立ち上がって!!!」

「何を言っているんだ??私の方が数秒早かったんだ、私の手を取るべきだぞ??さぁ、手を取って立ち上がるといい。さぁ!!!さぁ!!!!」

「えっと・・・2人とも顔が近いんだが・・・・俺なら大丈夫だからさ。

よっと・・・で、ガヘリス俺の剣はコレか??」

2人の手を取らずに自力で立ち上がり・・・テーブルに飾ってある前までにはない剣を見てガヘリスに尋ねると、今回の剣は今までに作ってきた中で最高の出来だと言い・・・その剣を掴むと、今までに扱ったことのない程に軽さと重さの調和がとれたバランスのいい剣で・・・色々な方向で見ていると、クーリアが生暖かい目で俺を見つめていた。


「ど、どうしたんだ??そんな目で俺を見つめて・・・」

「ううん・・・ムクロッちってやっぱり男の子なんだなぁって・・・・

剣とか見たら目をキラキラさせちゃってさぁ~~私たちを見るときもそんくらい輝かせてもいいと思うんだけど・・・・」

「何だか、ワケありそうな言い方だけど・・・・まぁ、それは置いといて・・・

その剣はムクロの要望通りにしておいたから手に馴染むと思うよ??

それにしても・・・本当に手間のかかる剣だったけどそれなりに面白い作業ができたよ・・・ありがとね、ムクロ。」

ガヘリスはそう言って俺に手を差し出し、俺も感謝をしながら手を握ると・・・クーリアに引っ張られながらガヘリスの工房を後にした――――――


「はぁ~ムクロッちって本当に何もわかってない・・・・ありゃ、既に落ちちゃってるかもしれないなぁ・・・また面倒なことになってきたぞ。」

「何の話だ???落ちたって・・・レアドロップの事か???

それは、あの魔将からはある程度レアアイテムは落ちたが・・・・・おい、クーリア待てって。」

クーリアはやれやれと言いながら先にポータルで大空洞まで移動し、俺も後を追いかけると・・・クーリアは背伸びをしてあくびをかいていた。


「ふわぁぁ~~~ん~~さぁ・・・どうしよっか???

レイ達はまだやりあってると思うけど・・・・」

「そりゃ、戻って報告するしかないだろ???

この新しい剣も手に入れたんだし・・・・早速組み手を・・・・」

新品の剣を取り出してそう言うと・・・クーリアは呆れた顔をしながら頭をかいて俺にタックルを仕掛けてきた。


「でさぁでさぁ~~さっきユリハと2人でどこに行ってたのぉ???

もしかしてお楽しみだったぁ??クスクス。」

「そんなわけないだろ・・・ユリハに謝って・・・許してもらっただけだ。

それ以上もそれ以下も何でもない。

ほら、つまらないこと言ってないで合流するぞ~~」

と、言い聞かせながら歩いて行くと・・・クーリアはつまらなさそうにして後を追って付いてきた。


「あ、ムクロ君だ・・・みんなムクロ君たちが帰ってきたよぉ~~」

「ハァハァ・・・ふむぅ・・・ひとまずはこの辺りで休憩かのぉ・・・ファム??」

「そうだね・・・ハァハァ・・・何とか互いに様になったかもしれないけど・・・未だ頑張らないとね。」

「ハッハッハ、2人とも良い動きになってきたと思うぞ??

それに、休憩も1つの訓練だ・・・・休めるときに休めないと無理が出来なくなるからな!!!だろ?ムクロ??」

「あはは・・・そうだな、それと・・みんなただいま。

それで、これがガヘリスに作ってもらった剣の黒剣バルファレートだ。」

俺は剣を鞘から抜き・・・みんなに見せると、ユリハが剣よりも気になっていたことを尋ねてきた。


「で、その・・・他には何にもなかったの???」

「他にって???コレをもらう以外にな特に無かったが・・・・なぁ?クリーア?」

「う、うん・・・そうだね、そう言えば・・受け取る前にムクロッちが顔を近づけすぎて鞘で殴られてたよね~~あれは超ウケたよ~~あはは―――――ん??どったの???皆??」

「主殿を殴るとは許せんのじゃ・・・・少しお灸を入れんといかんのじゃ・・・」

「そうだな・・・ガヘリスだかモノリスだかしらないが・・・私の大切なムクロに傷を付けたことを後悔させてやる。」

「ふ、2人とも落ち着いて・・・ワザとじゃないと思うし・・・その、落ち着いてはなそ??ね?」

ファムの必死な対応にミストとユキシロは冷静になるために壁に向かってストレスを壁に発散し続け・・・・ユリハが鞘でケガをした場所を見るからと、俺の頭をぐいぐいと引っ張って膝枕に乗せると――――――


「ユリハ~~それはダメでしょ??ムクロッちにご褒美過ぎない??

ここはユリハも怒ってムキーっていうところじゃない??

今日はより冷静だけど・・・なんかあった??」

「そんなことないよ・・・ただ、ムクロ君は正直に話してくれたから・・・何も言う事はないなって思って、それにケガが気になったから。」

「お、俺のケガは特に問題ないから平気だ・・・・グロリアでの回復力は早いからな。

それじゃ、剣の試し切りと言うわけで少しぶらぶらしてるからユリハ達はここで特訓して待っててくれ。」

と、言って・・・ユリハの膝枕から飛び出して魔将の現れた場所よりも奥にあるモブが出やすいポイントにやって来ると・・・早速、グリーンタフゴブリンが現れ戦闘を始めたのだが――――――


――――――――Guraraaaaaaaa!!!!

「こりゃ・・・滅茶苦茶切れるな!!!ガヘリスに感謝だ・・・ゼイヤァッ!」

ゴブリンの攻撃に対して剣を差し込むと・・・ゴブリンの武器を一緒にまとめて切り倒すほどに切れ味と軽い力でも威力の出る武器に仕上がっていた。

そして、ゴブリンを倒してさらに奥に進むと・・・ブラックヘヴィゴーレムが現れ、こちらに反応して岩石を投げて攻撃を仕掛けてきた。


「岩石も果物を切るみたいに軽く切れるな・・・本当にいい剣だ。

それじゃ・・・今度はこっちからだ!!!!

―――――――――――クイックシフト!!!!」

―――――――――――Gogogoooogogoo・・・・!?!?

ゴーレムは速度に追いつかず、さらには自慢の体が過ぎ去って瞬間に切り崩されているとは想像もできないまま消滅して崩れさっていった。


「ゴーレムもこんなにバッサリ斬れるのか・・・黒い剣・・・昔を思い出すな。」

「何を思い出すって???」

と、俺が独り言を言っていると・・・背後からユリハがヒョコっと顔を出してきた。


「びっくりした・・・アレ?レイ達は大丈夫なのか???」

「少しムクロ君を見てくるって言って抜けて来たから平気だよ。

少し離れた所から見てたけど・・・その剣すごい威力だね。

その鍛冶師のガヘリス??だっけ・・・その人の製作技量がものすごく高いのは分かったけど・・・あまり、1人で女の人の家に言ったりしちゃだめだよ???」

その理由を聞くのはユリハじゃなくてもダメな気がして聞くことができず・・・俺はしぶしぶ「ハイ」と答えてユリハと奥へと目指して話しながら歩いて行った。


―――――――――――――――天空遺跡:大空洞

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