第141話 限界と無茶の先へ

――――――――――コロシアム:第2ラウンド デスマッチ


俺はアヤカの手に持った見覚えのある形があったため、アヤカに例の剣はどこにあるんだと・・・恐る恐る尋ねて見ると――――――


「ごめん、練習で使い込んでたら折れちゃって・・・ムクロとの大切な約束のモノだから、こうして私の設計した新しいハンドガンの中で今も生き続けているわ。

だって、この剣を返す事が私のこのゲームでの生き甲斐になったから―――――」

「だったら、もっと大事に扱ってくれよ・・・・

だが、折れるくらいアヤカが使い込んでくれたのは・・・少し嬉しい―――――

すまん・・・話しが過ぎた、それじゃ早速その新武器の威力を見せてもらうとするかな!!!!」

俺はアヤカにフラムを放つと、アヤカは剣の部分でフラムを断ち・・・俺に近接戦を仕掛けてきた。


「さぁ・・・ここからが本当の戦いよ、ムクロ!!!ハァァァ!!!」

「あぁ・・・そうだなッ!!!」

攻撃の隙間にフラムをアヤカに放つが、アヤカは器用にフラムを射撃して相殺し・・・・俺達は互いに底が尽くまで撃ち合うと・・・残るは剣での近接戦のみとなっていたが―――――


「はぁはぁ・・・互いに弾切れ、近接戦で決着を着けようにも体力差で私の負ける確率の方が少し高い―――――――だったら!!私にもガンナーとしてFPSプレイヤーとして意地がある!!

だから、最後のとっておきをプレゼントして上げるわ!!!」

「――――――しまった・・・グレネード!?

ピンを抜いてカウントしてたのかッ!?」

アヤカは話し終わるタイミングで俺にグレネードを投げ込むと・・・アヤカは地面に滑り込んで退避すると――――――俺はどうしようもなく覚悟を決めてグレネードを喰らおうとした瞬間――――――


「ムクロ君、ダメェェ!!!

――――――走って!!!まだ終わってないよ!!!」

それは唐突だった・・・グレネードが投げ込まれ、アヤカが地面に滑り込むのと同じタイミングの瞬間、俺は走馬灯を見ているかのようにユリハが俺に走れと叫ぶのが聞こえると・・・・・


「―――――あぁ・・・そうだったな。

――――――この体が動くのなら・・・この頭で考えられるのなら・・・最後の最後までやらないとな!!!!

―――――――――うおぉぉぉぉ!!!!クイックシフトォォォォォ!!!!!」

クイックシフトを使用するタイミングと同じと言ってもいい誤差でグレネードが大きく爆発し、黒煙を上げながら地面を抉り飛ばしていた。


「―――――あぁ・・・そんな・・・ムクロ君・・・

私と戦ってくれるんじゃなかったの!

先にいなくなったら・・・ダメだよ・・・・うぅ・・・ムクロ君―――――」

「ハァハァ・・・やっとムクロに勝った!!!

なんとか、勝てた・・・でもおかしい。

ユリハが来たのはだったけど、勝利アナウンスが流れてこないって事は・・・まさかね、そんなワケ―――――あのグレネードはとっておきの中のとっておき・・・威力も殺傷力もケタ違いで耐えてるワケが・・・・」

、まさかだッ!!!!

よぉ、アヤカ・・・ギリギリ死に損なったぜ。

くッ・・・あと、ユリハ・・・ありがとな、こうやって立てているのはユリハのおかげだ――――――

―――――ガハッ・・・くッ・・・あのタイミングで抜け出せたのはいいが・・・

思ってたよりもスッゲェダメージだ・・・・こりゃ早くケリつけねぇとマジでヤバイ。」

ユリハが涙を流して俺の元へとやって来たが・・・俺はユリハに手でストップをかけ、アヤカとの勝負の最中だと告げると――――ユリハは頷き、俺達から離れ・・・遠くから見守る態勢に入ると、アヤカがムクっと立ち上がり剣を構えた。


「あのグレネードで本当に決めるつもりだったんだけど・・・・まさか本当に耐えるなんて、さすがムクロね。

本当にユリハの勘がすごいのか、ムクロの技量が高いのか分からないんだけど。

でも、これで本当に決着を付けるわよ!!!!」

「――――――あぁ・・・つべこべ言わずにかかってこいよ!!

――――――――俺はここからがしぶといぜ?」

と言いつつ、俺は体力バーを再度確認したものの・・・俺の体力は赤色のバーを切っており、それに対してアヤカの体力はギリギリ黄色のバーで留まっている状態であり・・・互いに余裕はないが、明らかに俺が体力上不利な状態であった。


「んむぅ~~モニター越しに色々見せつけられて歯がゆいのじゃ~~」

「ユキシロ、落ち着いて・・・まだご主人様は立っておられます。

そして、あの目はまだ戦うモノの眼・・・ご主人様は未だ負けを認めず勝利を目指そうとしておられます。

この状況下ではアヤカが有利かと思われますが、勝利に飢えたご主人様ならきっとアヤカを下し勝利する姿を見せてくれることでしょう。」

レイとユキシロは巨大モニターから目を離そうとせず、アヤカに勝利するその瞬間まで固唾をのんで見続けていた。


―――――――敗者待合:ケア室・・・・


「ガハハハ、いい戦いをしておるの~~

ムクロといい、アヤカといい2人ともど偉く強い猛者よのぉ。

フム、だが・・・この僅差、いや・・・ムクロの方が不利な状況で尋ねたい。

、お前さんはが勝つと思う?」

「本当にいい戦いだね。

私の力も使いきっちゃったみたいだし・・・んん~そうだね、ムクロが勝つ可能性は果てしなく低いかもしれない、だけど―――――ムクロって・・・いつも不思議なんだよね、だから私はそのムクロを信じて見たい。

アヤカもムクロも仲間だから、どっちが勝っても私は2人を尊敬し・・・称えるよ。」

ブシンはその回答を聞くと、笑いながらモニターを見つめていた。


「ヤッ!!!!!ハァッ!!!!」」

「ぐッ・・・・ふんッ!!!!ハッ!!!!」

互いに剣と剣をぶつけ合い、火花を散らせながら激しくぶつかり・・・アヤカは体力上自身があったのか、いつもより攻めが激しく・・・俺に攻撃させる暇を与えない攻撃であった―――――――


「アヤカの攻撃がいつもより激しい・・・ムクロ君の負傷状況をしりつつ狙っている・・・でもコレは戦い・・・モブ戦と同じように弱点を突いて攻撃する事はセオリー中のセオリー・・・だけど、こんなのって―――――――」

「ムクロ、そろそろ限界なんじゃないのッ!!

――――息が上がってきているわよッ!!!」

「はぁはぁ・・・・そりゃ、あんないい爆弾モノを喰らったんだ・・・・

そりゃ、限界も近くなるっての!!!ハァッ!!!」

アヤカとの剣を交えているだけでわかる・・・体がいつもより重い事、例えで良く出てくる鉛のように重くとよく言うがまさにこの事だろう・・・だが、やっと掴んだチャンス・・・俺はこの攻撃が入れば悔いはないと、最後の最後で無理矢理クイックシフトを発動し・・・・アヤカに一撃を叩き込んだ――――――――


「―――――ぐッ届いた・・・か?

―――――――ぐぁッ・・・痛ッ・・・かッ・・・ク、久々に無理し過ぎたか。」

「あははは・・・本当に、ムクロって無茶するわね・・・今ままで戦ってきたプレイヤーの中で一番勝利に飢えてるって言った方が良いのかな?

でも、あ~あ・・・のになぁ~~」

アヤカはドサッと倒れ、俺は振り向き・・・アヤカの体力を見ると、体力バーが消滅していた・・・・・

その瞬間・・・会場に歓声が上がると―――――――


「ム、ムクロ君が勝った!!!!!

――――――あ、アヤカッ!ねぇ、大丈夫!?」

「まぁ、負けちゃったケド・・・なんとかね。

でも、やれるだけの事はやったわ――――――

また帰ったら頑張らないと・・・と、その前にユリハ達の優勝争いを見ないとね。」

アヤカは消える瞬間に悪戯をするような悪い笑顔をしながら消え、ケア室へと飛ばされ―――――――


「お疲れ様!!!!第2ラウンドデスマッチの勝者は見事勝ち残った、ユリハとムクロの2名に決定だぁぁぁぁ!!!!

そして、この後22時45分からファイナルバトルを開始予定だから皆、見逃すなよォ!!

それじゃ、疲労の中悪いんだけど・・・ムクロ、何か一言あるかい?」

「あはは・・・そうだな、こんなボロボロな俺だが・・・応援をしてくれてる人、俺に思いを託して消えて行った人の分の意思を継ぎ、俺は優勝する!!!」

「―――――――うぉおおおおおお、お前に全財産賭けたんだから勝ってくれよ!!!」

「――――――ムクロの周りにイイ女が多すぎてアレだが、頑張れよ!!!」

「―――――優勝したら是非ウチのお店に遊びに来てねぇ~~~~ムクロきゅん!!」

「―――――まさかここまでやるとは思わなかったぜ!!!ここまで来たんだ、もっとお前のアツイ姿を見せてくれよな!!!!」

「うわぁ~すごいのじゃ~コロシアム内がウルサイくらいに主殿の声援なのじゃ~」

「もちろんです、ご主人様は万人に愛されるお方・・・それに、あのような激しい戦いをこの場の皆が見たのです・・・それだけでファンはウナギ登りに―――――

ですが、悪い蟲は駆除しなくてはいけません。

――――――その時はユキシロ・・・あなたもご協力を。」

レイの一部の発言にユキシロはレイから何かが通じたのか・・・即答し、ナイフを研ぎ始めてた。


「それじゃそれじゃ、お次はこの・・・お花の様な美形女騎士ことユリハにインタビューだ!!!」

「え、何その言い回し!?

―――――コホン、えっと・・・私も相手がムクロ君と言う事で本気も本気で、この剣の一撃一撃に思いを込め・・・勝利したいと、ううん・・・勝利すると誓うわ!!!!」

「―――――――いいぞ!!!!その調子でムクロの野郎に鉄槌を!!!!」

「―――――――そうだそうだ!!!天狗のように伸びたそのムクロの剣を折っちまえ!!!!」

「――――――潰せ!!!潰せ!!潰せ!!!」

何故かユリハのインタビュー後に流れる声援は何故か物騒で・・・コロシアム内で俺に不満を持つプレイヤーからの心の叫びと言うべきか、その怒りや悲しみが声援に混ざり混沌としていた――――――――――


―――――――――コロシアム:第2ラウンド デスマッチ終了

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