第115話 別行動

――――――――――23時37分・・・町外の廃城


ファムはブツブツ考えながら・・・あっちこっちを行ったり来たりを繰り返し・・・ああでもないこうでもないとひたすら考え・・・考えが思い浮かんだのか俺の目の前で立ち止まった―――――


「そうだ!ここで出会ったのも何かの縁だ・・・私をムクロの懐に匿ってはくれないだろうか?」

構わないんだが・・・他のヤツが何て言うか・・・・」

俺がファムをホームに招き入れるとユリハ達からどんな処罰をくらうのか少し不安になりながらも・・・苦い顔をしながら仕方ないと返事をした。


「それじゃ、二度目だけど・・・これからよろしく・・・ムクロ。」

「あぁ・・・少し胃が痛くなってきたが・・・よろしく。」

俺は取り合えず、またこの場所に来る時まで自分で身を潜めるように言うと・・・ファムは二つ返事で答え・・・どこかへ消えてしまった。


「また、皆にどやされるな・・・こりゃ――――――」

俺は何かを失い傷ついたファムを1人にすることができず、断ることができなかった自分に言い聞かせるように・・・どうにかするさと言いながらログアウトした。


―――――――登校中・・・・


「涼孤さん、悠一おっはよ~~~」

「悠一君、涼孤さん、おはよう。」

「お二人ともおはようございます。」

「おはよう・・・あぁ~今日も学校かぁ・・・スゲぇ眠い・・・」

「皆おはよう、悠一・・・だらしないぞ?男子はしっかりしないと駄目だ!!

まさか、また昨日1人であのままグロリアをしてたんじゃないだろうな?」

鋭い姉さんの質問に俺は冷や汗をかきながら・・・否定するが・・・・


「悠一君・・・何かあった?」

「い、いやいやいや・・・何でもない!!ほら、由里学校に遅れるぞ!!!」

「って、ちょ・・・・」

「逃げましたね―――――」

「どうしたんだ・・・悠一・・・私に隠し事なんて・・・珍しい。」

俺は由里の手を握って学校近くまで走ると、後ろの方に姉さんたちがいないことを確かめると・・・由里に昨日のアレから起こった出来事を話すと―――――


「へぇ~そんなことが・・・でも、ちゃんと話してくれたから・・・私はいいんだけど・・・皆にも話さないとダメだよ?」

「それはわかってるが・・・由里には最初に話しておこうと思ってな。」

「お~い、待ってよ2人とも~愛の逃避行には早すぎるよ!!!

まだ高校生なのに!!」

「な、なッ!?私は逃避行なんて認めないからな!」

「その、涼孤さん落ち着いて・・・・」

遅れて3人は俺たちに追いつくと、全員で校舎に入り・・・各自、教室に向かうと・・・ブロッサムに由里から朝の話をちゃんとするように・・・とメールが書かれており、俺はそのメールに対して・・・きちんと話すとメールに書き、由里に返すと・・・耀子が俺の机にやってきて・・・朝、俺が由利の手を握って走り出したことについて・・・何を隠しているのか探りを入れてきた。


「ねぇねぇ~本当にあのまま逃避行するつもりだったのぉ?

それとも逃げたのにはまた別の意味があったり???」

「いや・・・そんな事は・・・ない事も無くはない・・・」

「悠一、今日は何だか変・・・体調でも悪いの?

一緒に保健室に行く??」

コトハは俺のひたいに手を当て、自分との体温を比較しながら保健室へ行くかと提案してくれたのだが・・・俺の体調を気遣ってくれているコトハに悪いと思い俺は―――――


「・・・・そうだな、由里にも言われた通りにするか―――――今日の昼休みにでも本当の事を話すから、それまで待っていてくれないか?」

「もう、しょうがないなぁ~悠一の頼みなら断れないし・・・いいよ、お昼まで待っててあげるよ。」

「体調が悪い訳じゃなくて良かった。

でも、一体何の話を・・・・」

2人は俺の事をこれ以上追及する事無く自分たちの席に戻ると、いいタイミングでホームルームが始まり・・・そのまま授業へと流れていった―――――


――――――――屋上・・・・


「――――でねでね・・・・っと・・・やっぱりクラスと屋上ココが近いと来るのが早いね。」

「あぁ・・・そうだとも、ずっとこのモヤモヤが消化できずで爆発しそうだったんだ・・・・さぁ~今朝の話の続きをしようじゃないか!!!」

「悠一君・・・そろそろ限界だからバトンタッチしてくれると助かる・・・かな。」

「由里は涼孤先輩に事情聴取じじょうちょうしゅされてた様子・・・・

悠一、速やかに先程話すと言っていた内容の開示をした方がいい。」

「由里、すまなかったな・・・ウチの姉さんが迷惑をかけた。

これも全て俺が逃げて話さなかった事が原因だ・・・と、言うわけで姉さん・・・それに皆。

今から皆と解散した後に起こったの出来事を話す―――――」

俺の話を聞きながら皆は弁当を食べていたが、俺の話が終わると・・・食べるのを止めて話しに質問を入れてきた。


「悠一、その天使は信用できるのか?

私達は天使と対立する立場でもあるのだぞ?」

「う~ん、その点は私も同じことを考えてたかな・・・・

もし、悠一君を狙う為の演技や細工をしていたと考えると少し怖い――――――」

「でもでも、その子はルーン?だっけ?そのアイテムで悠一の無実を確認して襲う事を止めたわけだから・・・・どのみちあたしは悠一が選んだ方に付いていくだけどね。」

「久々に意見が合って少し安心・・・いえ、不安?

その話はともかく、私も耀子と同じように悠一がしたいようにすればいいと思う・・・悠一は並大抵のモブやプレイヤーでは倒せない事も私達は知っているのだから。」

由里や姉さんは不安な点を、耀子やコトハは俺の自由に付いてくると言い・・・俺は悩みに悩み・・・・・・・


「よし、今回の件は俺の責任だ・・・だから耀子、コトハすまない・・・・」

「それってどう言う・・・・・」

「悠一・・・怒らないから何を考えているのか話して・・・・」

「コトハちゃん・・・すでに怒っているトーンだよ・・・・」

「悠一・・・一体どうしようと言うのだ?」

姉さんの質問に俺は皆の前で決断した事を話した――――――


「俺はその使2で少しの間を共に行動する。」

「なッ・・・・何言ってんの!?

悠一!!馬鹿じゃないの!?それは無茶がどうとかいう問題じゃないよ!!」

「本当にどれだけ無茶と私達に心配をかけると気が済むの・・・・」

「本気なのか?悠一・・・・・今ならまだ笑い話で流す事もできるが・・・・」

「悠一君、待って待って・・・どうしてその天使と2人でなの?

私達は・・・仲間でしょ?それなら私達も・・・・・」

由里や皆は俺がしようとしている事を必死に止めようとしていたが、俺が言いだした事はどうやっても変わらない事を皆は知っており・・・ぐッと奥歯を噛み締めながら由里が必死に感情を押し殺していた。


「これには理由があるが・・・まず、天使の事を皆が信用できない状態でホームに入れる事は得策じゃない事・・・それに、お互いに居心地の悪い状況を作りたくない。

ここは・・・グロリアは・・・ゲームだけど俺たちが生きてるもう一つの世界であって・・・誰とでも楽しむことのできる世界だ、だから俺はファムと一緒に行動して互いの事を知るべきだと思ったんだ。」

「そこまで言うのなら・・・悠一の好きなようにするといい。」

「涼孤さん!?本当にそれでいいの!?」

「でも、悠一がああ言ったら聞かない事を一番知ってるのも涼孤先輩だよ・・・きっとね。

だから、私達も心配だけど・・・悠一のやりたいようにさせるのが一番って事かな・・・・

だけど、後をつけちゃダメって言われてないから・・・つけちゃうけど・・・一緒に来る?」

「耀子・・・アナタは本当に・・・悪い考えを・・・でも今回は少し気になるので同行するけど・・・由里はどうするの?悠一の事が気にならないの?」

「き、気にならない訳ないじゃない!!!

わ、私も付いて行くから・・・そ、その・・・ブロッサムに連絡して・・・絶対だよ―――――」

由里や耀子たちと3人で何やら良くないコソコソ話をしていたが俺は、話が決まった事で今日からファムとの行動することとなった――――――――


――――――――――屋上・・・・・

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