第94話 王様ゲーム

――――――――――22時28分・・・宴会会場VIP席


スースーと眠るアヤカとお酒のビンを抱いてブツブツ話すクーリアから解放されたエリとミストもこちらに混ざり、ちびちびと5人で飲んでいると、レイが急に何かを思いついたかのようにウェイターを呼びつけ何かの用意をさせた。


「ご主人様、僭越ながらこの場を盛り上げるためにゲームをしましょう。」

「ん?ゲームの中でゲームか?一体何をするんだ?」

「それって、私達も参加できるのかな?」

「うむ、面白い事には参加せねばな!なぁ?エリ?」

「ですね、それにこの空気・・・何か怪しい。」

「アタイも食べ飽きたから参加するのじゃ!」

がつがつ料理を食べていたユキシロも加わり6人でゲームをすることとなり、レイが頼んだ物をウェイターが用意して持ってくると――――――


「さぁ、始めましょう・・・・第1回王様ゲームを!!」

「レイちゃんからまさか・・・王様ゲームが出てくるなんて・・・でも、もしかしてコレってチャンスなんじゃ・・・・」

「ふむ、ゲーム内容はいまいちだが・・・どうやって遊ぶモノなんだ?」

「私もこういったアナログなゲームはよくわからないので・・・説明を願います。」

「アタイは楽しければ何でもいいのじゃ~」

「それじゃ、レイ・・・王様ゲームをやるにあたって説明をよろしく頼むよ。」

俺も王様ゲームの内容がイマイチで実行者のレイに説明を任せると、待ってましたと言わんばかりにウェイターから受け取ったセットをテーブルに置き説明し始めた。


「まず、王様ゲームのルールを説明します・・・・・

このグラスには人数分の棒が刺さっています・・・

それを一斉に引き抜き、先端に書かれた王の文字を持つモノが数字を持った参加者に好きな命令を与えられると言う事ですが・・・・数字は王が命令を与えるまで他の者に見せたり知らせる行為は禁止とします。

そして、命令が終わるとまたグラスに戻し再度引き直すと言うループになります。

御理解いただけましたでしょうか?」

「何だろう・・・すごく怖いんだが・・・・モブ討伐よりも身の危険を感じるんだが・・・」

「大丈夫だよムクロ君、ゲームなんだから!」

「そ、そうだな・・・ゲームなら何をしても・・・いやいや、マナーは守らないといけないぞ!

だが、これはゲームの中のゲームだ・・・少しくらいハメを外しても問題ないのか?」

「ミストが自問自答を始めてしまいました・・・・

でも、好きな命令を与えられるのは面白いゲームですね。

是非、王にならないと・・・・」

「ルールは分かったからさっさとゲームを始めようぞ!」

ユキシロの一言で、6人は棒を摘まむと・・・一斉に引き抜いた――――――


「チッ・・・・それでは、今回の王様はどなたでしょうか?」

「え、あ・・・ハイ・・・私が王様―――――」

「ユリハが王様か・・・・それじゃ、命令はどうするんだ?」

「―――――――ごくり・・・」

「ユリハの命令なら他の方と違ってまともそうで安心・・・・・」

「ワクワク!!さぁ番号の指定と命令をするのじゃ!!」

ユリハはレイに指定した番号同士で何かをさせれるのかと聞くと、レイは頷きできると答えると・・・・


「それじゃ最初と言う事もあるから・・・・2番と4番が・・・・握手!」

「俺が2番だ・・・4番は誰だ?」

「ムクロ・・・私が4番・・・」

俺はユリハの命令でエリと握手をすると、何故かユリハ達が羨ましそうに握手を見ていた。


「ほほぅ・・・こんな感じでやるのだな、参考になったのじゃ!」

「うむ、だが・・・コレは・・・王でも番号でもどちらに転んでも美味いんじゃ・・・・」

「ミストは気付きましたか・・・このゲームの真意に・・・」

そして握手が終わると、棒をグラスに戻し・・・混ぜてから再度引き直すと・・・・


「次はアタイが王様じゃな!さて、何を命令しようかの~

ん~そうじゃ!1番が2番を肩車をするって言うのはどうじゃ?」

「私が2番で御座いますが・・・・1番はどなたでしょうか?」

「・・・・・・・・・・」

「ムクロ君どうしたの?・・・・・まさか・・・・2番?」

「どうやらそうらしいな・・・何せ他に名乗り出るモノがいない所から見ると・・・・」

「これはゲームですが破る事の出来ないルールです・・・頑張ってきなさい。

骨は拾ってあげるから―――――」

俺はしゃがむとレイが俺の肩に足を乗せ、力強くレイを持ち上げた。


「レイってすごく軽いんだな?」

「あ、ありがとうございます・・・・そ、その・・・ご主人様・・・太ももをそのように強く握らないでくださ・・・くふぅ!?――――」

「なんだ、あの御褒美は!!私も是非ムクロに太ももを強く握って欲しいのだが!!」

「なんだろ・・・ゲームなのにすごく心の中がモヤモヤする・・・」

「ユリハ、ココはぐっと我慢です・・・

私も羨ま・・・いえ、なんでもない・・・気にしないで。」

「主殿は割と力持ちなのじゃな~だが、このゲーム・・・番号がわからない以上どちらがどっちをさせるかといった部分が難しいのじゃ。」

俺はレイが肩から降りると言うまで喜んでくれていると思い、肩に乗せていたのだが・・・レイが肩から降りると満足したような良い顔をしていた。


「レイ、大丈夫か?息が荒いが・・・」

「だ、大丈夫です!その、色々心の準備ができていなかったと言いますか・・・予想外の良さがあったと言いますか・・・・コホン、では・・・続きと参りましょう。」

レイが呼吸を戻すと、再び棒を引き抜くと―――――――


「お、やっと俺が王様か~命令は何にしようか・・・」

「ムクロ君が王様って・・・フフ・・・何だかニュアンスが面白いね。」

「あぁ・・・いつだってこのグロリアで好き放題やっているムクロが王様ゲームで王になったとしても特に驚きはしないな。」

「でも、ムクロの命令が何なのかは気になる。」

「主殿はきっととてつもなく凄い事を要求するのじゃろうな。」

「それではご主人様、番号の指定と命令をどうぞ。」

俺は番号もそうだが命令も全くピンと来るものが無く、少し考え命令が決まると・・・まずは数字を指定した。


「それじゃ3番が・・・・」

「「「「「ゴクリ」」」」」

俺は番号を指定すると5人はごくりと唾をのみ命令の内容が何かと真剣な顔をして待機し、そして俺は期待に応えるように命令の内容を話し始めた。


「好きな人を叫ぶ!!ってのはどうだ!言えないのならパスでも構わないけど・・・・」

「なッ!?・・・私は3番ではないが、それは流石に無茶すぎるぞ!!」

「ムクロはたまにデリカシーが無い時がある・・・・この後はお仕置きタイムかな?」

「むむぅ~アタイも3番じゃないのぉ~」

「ふむ、私も番号は違いますね・・・と言う事は・・・・・」

レイは消去法で考え・・・無言のまま話さないユリハを見ると、全員は何かを感じ取ったのか無言のままユリハの行動を待っていたのだが・・・・


「あぁッ!ユリハが3番じゃ!ほれほれ、ユリハ~誰が好きなんじゃ~~どばっと胸の奥にある声を吐き出してみるのじゃ!」

ユキシロがユリハの手に持った棒を見ると・・・やはり3と書いており、皆の予想は的中し・・・・ユリハが気合を入れて話し始めた。


「私が3番だから、王の命令だから言うね!

私は・・・・・ムクロ君の事が・・・・・ずっとこれからも大好きだよ!!!」

「ありがとな、ユリハ。」

「ユリハの公開宣言・・・これはすごい威力だな・・・っておい!?

エリ大丈夫か!?」

「わ、私は平気・・・少し心に深刻なダメージを追っただけだから・・・

まさか本当に言うとは思わなかったの・・・・で・・・・ぐふっ・・・・」

「ほほぅ・・・主殿が好きなのじゃな~

アタイも主殿が大好きじゃ~」

「フム、これは勢いで言うチャンスなのでは?・・・失礼ながらご主人様、私もお酒の力で言わせてもらいます・・・・私もご主人様の事が大好きでございます。」

ユリハに盗られまいと両腕にレイとユキシロが抱きつくと・・・ユリハも酔っているのか俺に向かってダイブして来た―――――――


「私だって~それ~~」

「まったく、ユリハ達も結構酔いが回ってきているな・・・・ゲーム内でしか酔いの効果が無いにしてもスゴイ効力だな・・・現実だとこういう事にならないようにして飲まないと・・・・

あぁなるのか―――――――」

俺は奥の方で寝ているアヤカとクーリアを見ているとお酒の飲み過ぎを考えさせられた。


「それにしても下は下で盛り上がっているな。

ライザーの団員とゴルバスの団員が腕相撲大会をしているぞ。

男ならではの企画だな・・・・参加者には女性プレイヤーも混ざっているが・・・・」

「そうか、各自で楽しく飲んで食って笑って・・・いい思い出にしてくれればそれでいい。

今回はイベントクリアの宴会と言ってたが・・・メインは皆との交流と楽しい思い出作りだからな。」

「そうだね、でも・・・私はムクロ君と一緒なら・・・皆と一緒ならいつも楽しくて毎日が良い思い出になってるよ。」

「アタイも主殿と一緒ならどこだって最高じゃ!」

「そうですね・・・皆でいい思い出をたくさん作りましょう・・・・」

俺はレイやユキシロ達に押しつぶされながら今日の事はある意味忘れられない思い出となっていった―――――――――


―――――――――――22時47分・・・宴会会場VIP席

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