×××××ハ、ゴチソウ!

 舞が走る中、ミチルにジャックされた放送が始まった。内容は単純に、『給食のスープ、特に入っている肉を食べてはいけない』という物だった。


「食べるなよ、フリでも何でもなく絶対食べるなよ……!」


 舞はそう呟いて、走り続けた。



 舞が辿り着いたのは、給食室だった。


「あんなのが混入するとかこの学校だとココ位しかあり得ないし……。あと血の臭いがするし」


 舞はそう独りごちると、勢い良く給食室の扉を開けた。


「…………」


 扉を開いた直後、血と臓物の臭い、何かの羽音のような不快な低音が微風に乗って流れてきた。

 舞は表情を消すと、給食室に足を踏み入れた。

 給食室の奥まで行くと、調理用の台に鮮血が飛び散っているのが見えた。そこを中心として血が飛び散っていた。


「あ、めっけ」


 ちらりと壁を見た舞が呟いた。

 壁には、二体の蜂のような異形がいた。二体仲良く内臓を貪っていた。


「スズメバチビースト、二体、か。……食い物の恨み……」


 舞がそう呟くと、それに反応したように異形――スズメバチビーストが宙に浮かんだ。


「ゴチソウ」

「アア、ゴチソウダ」


 二体のスズメバチビーストが、大顎をガチガチと鳴らしながら言った。


「そっちからしたらそうだよねぇ……。でも食べられる訳にいかないし、何より給食を台無しにした恨み晴らしたいから」


 舞が殺気を込めて言った。

 それと同時に、スズメバチビーストの片方が舞に襲いかかった。

 スズメバチビーストは舞に覆い被さるように飛び掛かると、胴体の先端から針を伸ばし、舞に突き出した。

 舞はそれを左腕の刃で切り落とすと、胴体の細くなっている部分を狙って右腕を振り抜き、胴体を切断した。

 スズメバチビーストが悲鳴を上げるのを無視して、舞はスズメバチビーストの翅を毟り取った。スズメバチビーストが落下していく途中で、


「一つ」


 舞はそう呟きながら、右手でスズメバチビーストの心臓を抉った。抉り取った心臓を握り潰し、もう一体のスズメバチビーストの眼前に放り投げる。

 もう一体のスズメバチビーストが激昂した瞬間には、舞はそのスズメバチビーストの眼前に迫っていた。

 舞はスズメバチビーストの左右の大顎をそれぞれ両手で掴むと、力任せに引きちぎった。

 スズメバチビーストは悲鳴を上げながら胴体を持ち上げ、舞の足を突き刺そうとしたが、黒いブーツに針が弾かれた。

 驚愕の色を帯びたスズメバチビーストの顔面を、


「さようなら」


 呟きながら、舞が左手で複眼となっている眼を貫き、脳を引き摺り出した。即座に握り潰す。

 スズメバチビーストは奇妙な声を上げながら、給食室の床にべしゃりと落ちた。


「はあ……ご飯食べたかったなあ……。……これは暫く休校かなあ」


 舞は、がっくりと肩を落とした。

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