解決してない

「おはよー…………」


 ミチルは、二階の自室からリビングに降りてきて、そこにいた両親に眠そうに言った。

 両親からの返事を余所に眠そうに、ミチルは目を擦りながらテレビの電源を入れた。

 チャンネルはミチルが朝いつも見ているニュース番組で、丁度ニュースが流れ始めた所だった。


『――次のニュースです。警察によりますと、今日未明、福島県、市ヶ目いちがめ市で、『全裸の男性が鎖を巻かれた状態で倒れている』という通報があり、駆け付けた所、男性は意識がなく、搬送先の病院で死亡が確認されました。警察では、殺人を視野に入れた捜査を行っています』


 淡々とした報道に、


「はっ、はああっ!?」


 ミチルは、両親がいるのも忘れて、驚いて大声を上げていた。



 同時刻。

 自宅のリビングで、心咲みさきむくとソファに、左から心咲、舞、椋の順に並んで座り、ミチルが観ていた物と同じニュース番組を観ていた舞は、


「ああ、やっぱりか……」


 ミチルとは逆に、冷静かつ気怠げに、ボソリと言った。


「やっぱり?」


 椋が、舞を見て聞き返した。


「カラスビーストがしでかした惨状……詳しく言ったら朝ごはんをリバースする事になるだろうから言わないけど、とにかくあれを見た後だとカラスビーストが犯人の割には遺体が綺麗過ぎたから」


 舞が嫌そうに言ったので、


「そ、そう……」


 椋は、詮索しない事にした。


「でも、ビーストがやっていないなら、誰がこんな事してるの?」


 心咲が首を傾げて言った。


「…………わからない」


 舞はかぶりを振りながら言った。


「ビーストの感応波を感知しにくくなったのも、心咲を殺した犯人も、この事件の真犯人も…………わからない事が多すぎる。しかも答えの手がかりすらなくて、宙ぶらりんの状態だし」


 舞は、眉間に少しだけ皺を寄せて言った。


「…………あのさ、舞ちゃん、無理だけはしないでね」


 そんな舞を、心咲は、心配そうに覗き込んで言った。


「…………うん、わかってる。出来る限り気をつけるよ。……でも、無理をしないとどうにもならない場合は、迷わず無理するからね」


 舞は、心咲の深い茶色の瞳を覗き込んで言った。


「……うん」


 心咲は、小さく頷いた。


「…………よし! それじゃあ、勉強しますか! 今日中に終わらせて、明日からのお泊まり会も、来週の夏祭りも、盛大に楽しむために!」


 舞は、重くなっていた空気を払拭するかのように、大きく、明るい声で言って、二階の自室に向かっていった。

 置いてきぼりをくらった心咲と椋は、


「うへえ……」「うわあ……」


 何とも言えない表情になっていた。

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