あとと散華

作者 島野とって

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20人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

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全体を通して感じられるのは、思索と謎解きとバトルを妄想でごった煮にした印象。まず「須永病」という設定からして、かなりぶっ飛んでる。四肢欠損や占領下日本に代表されるように、表層はかなりピーキー。血と体液、恩讐と想念でドロドロの感じ。それに呼応して、バトルも爽快系ではなく濃密系。島国日本が舞台なのに、内陸国的な閉塞感がものすごく感じられます。

SF設定が「SFのための設定」ではなく、思索のためのツールとして構築されているのは、作者ならでは特質か。そのため渋好みの思考実験的内容になっている。

しかしながら本作の真の美点は、思索を重視しながらも、ミステリ的な謎解き快楽との並立に成功している点。ラストに向けて怒涛のごとく謎が解明されていく展開を、楽しんではいかがでしょうか。

★★★ Excellent!!!

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四肢を腐らせる致死性の疫病に侵された世界で、他国の支配から逃れるために戦う義肢の少女と、その姿に妹を重ねる青年の物語。独特の世界観と硬い義肢によるアクションに目を奪われる。一方で、柔らかい肉体の表現も上手く、特に少女の幼い体のなまめかしさは背徳感さえ覚えるほど。芋虫がマユの中のサナギをへて変態する様子をモチーフにしていて、所々芋虫や繭という言葉が出てくる。始めは気持ち悪いかもしれないが、そして最後まで気持ち悪いのだが、読み進めているうちに、気にならなくなるというか、そういう世界なのだと自然に思えてくる。
終盤の怒涛の展開に目を回しそうになった。全てがラストに向かって収れんしていく。主人公の最後のセリフも、少女の最後のセリフも、とてもよかった。できれば一気読みして欲しい作品。

★★★ Excellent!!!

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手足を腐らせる奇病で最愛の妹を失った桑原が、流れ着いた人工島で。
欠損した四肢に義肢を纏い、戦う少女「あとと」と出会う。

完結したので、「待ってました!」と読みにうかがいました。

第二次大戦中に流行った奇病により、うやむやのうちに停戦。
そこから異なる歴史を辿る世界で、分断された日本。
不健全な「健全」を押し付ける独逸帝国の最新鋭兵器に、少女は義肢で肉弾戦を挑む。
妹を失い廃人状態なのに戦闘になるとスイッチが入る桑原は、どうしても彼女を放っておけない。
『須永病』の意味や、装甲服の真相が少しずつ明らかになるたびに、唸ります。
こんなところでカフカが出てくるとは思わなかった。

読了直後で興奮さめやらず、言葉がまとまりませんが、面白かったです。

★★★ Excellent!!!

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ダークな雰囲気に満ちたサイバーパンクSF作品です。

舞台は独逸帝国により分断された日本。突然の停戦を迎えたifの昭和。
廃兵であったはずの主人公と謎めいた少女との邂逅から物語は始まります。

亡くした妹を想う男の鬱屈としたモノローグ。畳み掛けるアクション。匂い立つような人工島の描写。容赦なく投入されるミリタリー語彙。
妖しく微笑む幼女。パンデミック。蔓延する奇病。銃器。義肢。幻肢痛。フランツ・カフカ。蛾。蝶。蛹。蚕……。
そして硬派かつハードボイルド的でありながら、同時に海堡というダンジョンを攻略していくゲーム的な要素も多分に含まれているという。

もうね、てんこ盛りです。
全編通してめちゃくちゃ読みごたえがあります。
おすすめです!

★★★ Excellent!!!

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少女・だるま・義肢・ハードボイルド・のじゃロリ……
特定の趣味嗜好を持つ読者層を狙い撃ちにしたかのような属性サラダボウル。
のっけからハートを掴まれました。

いっぺんに読みきるのが勿体無いとさえ思える怒涛の性癖博覧会に、ついもう一話、もう一話とスクロールさせられてしまいます。

個人的に、義肢好きなら読め、と推したい一作。
続き楽しみです。

★★★ Excellent!!!

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こ…こいつはすごい…。一読して度肝を抜かれました。返して僕の肝臓。

押井守の人狼に代表されるような、退廃都市ミリタリージャンルとでも言いますか…ありますよねそういうジャンル。
そういうジャンルにあまり触れてこなかった自分でも、ページをスクロールする手が止まりません。それはきっと本当に実力のある作者が新しいものを生み出そうとしているからでしょう。
ダークでハードボイルドでちょっと官能的。内臓が飛び出るようなアクションも素敵です。

どうしようもなく「欠けている」人間たちの咆哮が響いてくる本作は、マカロニウエスタン映画における『ジャンゴ 繋がれざる者』みたいな立ち位置の名作になる予感がぷんぷんします。

緻密に練られた須永病の設定が、身体表象論的な作品のテーマと見事に絡み合って、読み応えのある文芸を構築しています。伏線貼るの上手すぎです!
そしてラストのカタルシスは圧巻です。ダークな小説好きにもそうでない人にも、絶対オススメです!

★★★ Excellent!!!

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 島野作品はどれも面白いけど、一番情念がこもっていて娯楽性が高いのはこれだと思う。
 手足を機械化して使い捨てにする少女をはじめ、濃密なフェティシズムに満ちあふれている。変態ですばらしい。
 ドイツ軍趣味とかも良かった。
 どんでん返しの連続する終盤も良かった。
 最後にガツンとやられたのは、「装甲列車」に「ドライジーネ」とルビが振ってあった時です。
 ド、ドライジーネって自転車の原型ですよね!?
 なんだこのルビの振り方は!?

 追記
 念のため検索してみたら、ドライジーネという装甲列車は実際にあるのですね。
 不勉強で申し訳ない。
 全然関係ないルビをムリヤリ振るハッタリだと思っていました。