灯明寺の読み
坂之上からマウンドを引き継いだ鹿野は、ダイヤモンズの下位打線との対決となった。
七番から九番は、ダイヤモンズ打線といえど多少は上位に比べて破壊力が劣り、九番は投手の大八木。鹿野は七番の朝倉をショートゴロ、八番の島津をセンターフライに打ち取り、九番の大八木は三振に仕留めてみせた。
ここまで、両チームとも三人ずつで相手の各回の攻撃を抑えている。
灯明寺はレッドスターズの不穏な動きを察知し、コーチへと指示をする。
「おい、相手の残りの投手は誰がいる?!」
レッドスターズのベンチには、先発ローテーション候補の友家とウィル、藤堂が残っており、中継ぎのエースである左腕の武内と、右腕の地蔵(じぞう)、昨シーズンまでの守護神である榊(さかき)、もう一人の抑え投手である白川が控えていた。
「全部で七人か。そして…残るイニングは6と。さあ、次は誰を投入してくるか」
灯明寺は森国の作戦をこの時点である程度読みきっていた。
恐らく森国は、全イニングで投手交代をしてくる。つまり、一人一回の分業制でこの開幕戦を乗り切ろうとか考えていたのだ。
そうすれば各投手の負担は1イニング分となり、各回ごとに投手が変われば、ダイヤモンズの選手たちの目を慣れさせないようにする対策にもなる。
ただ、まだ疑問が残っていた。
もし、当番した投手が得点を奪われたり、走者を背負ってピンチを迎えたりした時に、森国は投手を変えるのかどうか。
それによって戦い方もまた変わってくるだろう。
今のところはレッドスターズを追い込めていない為、灯明寺は待った。じっと耐えていた。やがて得点機が必ず来ると信じながら。
ただ、レッドスターズが仕掛けようとしていた奇襲は投手の起用だけではない。
野球とは得点を与えなければ負けないが、得点を奪わなければ勝てない。
逆に言えば、得点を奪われても、それ以上に奪えば勝ちだ。
その攻撃の突破口となったのは、三回裏ツーアウトから打席に立った九番石川だった。
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