休息 3
相沢が帰郷していた、その日。広島の球団事務所では森国と故障から復帰して来たフランケルが対面していた。身長は190センチ近くあり、ガッチリとした体格と隆々とした筋肉。丁寧に整えられたあごひげが特徴的だった。
「怪我はどうだ?もう、万全の状態か?」
フランケルは「ええ、もう大丈夫です」と流暢な日本語で答える。
フランケルは元々、親日家で短期だが日本に留学していた経験もある。そのため、日本語を話すことにもかなり長けており、日常会話程度なら違和感なくコミュニケーションが取れていた。
「まあ、良かったよ。フランケルが居なかったら打線の軸が不在になるところだったからな。栃谷もまだ四番を任せるには力不足な気もしたしな」
コンコン。
事務所のドアがノックされる。
「失礼します」
そこで事務所に入って来たのは、先日森国と電話で話していた田中だった。
「おお、田中か。ちょうど良かった。知ってると思うが、こいつが開幕で四番を打つことになるフランケルだ」
田中はフランケルに向かってぺこりと会釈をする。
フランケルもそれに倣って軽く頭を下げた。
「森国さん、何とか間に合いました。できましたよ」
田中は森国に向けて一枚の封筒を差し出す。
「早かったじゃないか。さすが田中だ。仕事の腕は職人級だな。野球でもそれ以外も超一流だ」
田中は照れ臭そうに笑っている。
「また、誉め殺しですか?まあ、そう言われて悪い気はしませんけどね」
その様子を眺めていたフランケルは、その封筒の中身が気になって仕方がなかった。
「監督、その封筒は?」
森国は勿体ぶるようにその存在を明かさなかった。
「開幕前日に見せるさ。お前たち選手全員にな」
そう告げた森国は不敵な笑みをただ浮かべるだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます