第2話 奇妙な同居人
ロッティの、この男に対する第一印象は、神経質そうだなというものだった。切れ長の細い目、彫りの深い顔、高い鼻、シュッとした細い顎etc.神経質そうだなと思うような特徴を全て持ち合わせていたからである
家に入ってすぐ、彼はロッティの名前を尋ねた
「まず、君の名を聞こう。これからは私の助手だからな。助手の名前がわからんなんてことは万が一にも無いようにしたい」
「私の名前はロッティ!ロッティ・スプリント。年はまだ14才。たま~に男の子と間違われるけど女の子だから」
ロッティは男の問いに元気に答えた
「ふぅむ。ロッティ‥‥ね、良い名前じゃあないか。それじゃあ一つ質問をしていいかな」
「どうぞ」
「君はそんなに小さいのに、何故家を出たんだい?両親が心配してるんじゃあないのか?」
「え?おじさん知らないの?この国じゃ14才になったら家を出ないといけないんだよ」
男は不思議そうな顔をしてボソッと呟いた
「なるほど‥‥元の世界とは常識が違うのか‥‥」
「なにか言った?おじさん」
「いや、なんでもない。それより、私はまだおじさんと呼ばれる年じゃあない」
「私の名前は‥‥まぁ、ホームズとでも呼んでくれ。それと年は25だ。
一応探偵をしている」
男の自己紹介が終わると、ロッティは頭の上に多数の疑問符を浮かべた
「タンテー?タンテーってなに?お仕事?」
「むぅ、この世界には警察組織もなければ探偵もないのか」
「この世界?ケーサツ?どういうことぉ?」
ホームズと名乗った男の呟きを聞いたロッティはますます頭の上に疑問符を浮かべた
「隠してもしょうがないか‥‥。正直に言おう。私は別の世界から来たんだ」
「別の世界‥‥?」
「あぁ、そうだ私はイギリスというところからここにきた」
ロッティの頭はパンク寸前だった。
突然、別の世界から来たと言われた上に、意味の分からない単語を並べられたのだ。彼女にとっては呪文を聞いているようなものだろう
「ホームズさん‥だっけ。あなた私をからかってるんじゃないの!?子供だからって馬鹿にしないでよ!」
ロッティの疑問がついに怒りに変わった。
「信じるか信じないかは君の自由だが、これは真実だよ。私だってまだ
よく分からないがね‥‥」
ホームズは真剣な顔でそう言った。
あまりにもし真剣な顔だったので、
さすがのロッティも言葉がつまった
「うぅ、本当‥‥みたいね‥‥。でもなんで?なんでこの世界に来ちゃったの?」
「そんなのは知らん。ただ、心当たりはある‥‥」
「心当たり?ちょっと教えてよ」
ロッティは、まだ14。年頃の女の子で、好奇心旺盛なのだ
「ああ、教えてあげよう。あれは確か、一昨日のことだ。私は探偵として、ある事件を追っていたんだ‥‥」
ーーーー
「ついに追い詰めたぞ。セバス、セバスチャン・ビート。」
私は4年間追い続けてきた凶悪犯、セバスチャン・ビートとの決着をつけようとしていたんだ。だが‥‥‥
「なんだよぉ、お前。四年も俺を追っかけてきたわりには俺のことをなにも知らねーんだなァ。期待外れだぜ‥‥もう‥‥死にな‥‥」
そういって奴は、私に対して銃を向けながらそう言った‥‥
「貴様!まだお前は殺し足りないのか!?あれだけの人を殺してもまだ!?」
「だァかァらァ、言ってんだろーがぁ。てめぇは俺のことをなんも知らねーってよぉー」
そういいながら、奴は私に向かって‥‥発砲した‥。確か二発だったか、放たれた銃弾は私の腹部を貫いていった
「き‥‥‥さ‥‥まぁ‥‥、ま‥‥て、わたしは‥‥‥貴様‥‥を‥‥」
そこで私の意識は、闇の中に落ちていった‥‥‥
そして目覚めたときには‥‥‥私はこの世界に‥‥‥
ーーーー
「いた、ということだ。分かってくれたかね?」
「うん、良く分かった。結構大変なのね、探偵って」
「もちろん。いつだって死と隣り合わせさ」
ホームズの話を聞いて、ロッティの頭には一つの疑問が残った
「でもぉ、じゃあなんでタンテーになったの?」
「それは‥‥‥」
ホームズは近くにあった小説をロッティに見せながらこう言った
「私がこの小説の主人公、シャーロック・ホームズに憧れているからさ。この服、しゃべり方、推理の仕方まで真似してるぐらいさ」
「だからあなたの名前も、ホームズなのね」
「そういうことだよ。ちょっと名前を借りてるのさ」
「やっぱりあなたって変な人ね!」
ロッティは悪びれずにそう言った
「よく言われるよ‥‥‥でもいいのさ。変人じゃなかったらホームズじゃないからね」
「君も私の助手として読んでいた方がいい。ぜひ、ワトスン君のような良い助手になってくれたまえ」
こうしてロッティの奇妙な同居人との生活が、幕を開けた。
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