61話

―魔王城―


「魔闘将よ、うぬは【闘者の斧】に興味はあるか?」


 魔王は玉座にて自らが呼び寄せた魔闘将、先日ダストとやりとりをしたに向けゆっくりと尋ねた。

 

「はっ、勿論あります」


 魔将軍はひざまづきながら敬意を示した。

 

「ならば【闘者の斧】はうぬに任せよう、入手方法はダストに聞くが良い」


 魔王がそう言ったところで、今居る部屋にダストがやって来た。

 

「チッ、俺様は療養しろと言われたっつーのに何の様だ!」


 【賢者の石】を持つ慢心からか元の性格か分からないが、ダストは魔王を目の前だろうが構わず悪態を取った。


「【闘者の斧】の在処を教えろ」

「あぁ? そんな下らねぇ事かよ、チッ、しかたねぇ、ルッセルに復讐する為に教えてやるだけだからな? 勘違いするんじゃねぇぞ?」


 ダストは【賢者の石】に触れ意識を集中させた。

 しばらくしたところで魔闘将に在処を汚い言葉で説明した。


「どうせこの斧はルッセルの野郎も目を付けてるだろ、奴が見付けた所を奪っちまえ」


 ダストはケッケッケと小高く笑った。


「フン、小癪な戦術だな、俺はその様な事は好かん」

「ケッ、てめー魔族の癖に甘っちょろいじゃねーか、テメーが見付けたってルッセルの野郎は正義だのなんだの振りかざしてテメーをぶっ殺してでも奪うに決まってんだろ」


 ダストは、綺麗な言葉を重ねるが結局やってる事は魔族達と変わらないルッセルに対してイラつきを覚えている様だ。


「そうか、貴様の言い分も一理ある」

「全くふざけた話だ、俺様みてぇに汚い言葉を吐けば何をやっても悪者扱いで、ルッセルの野郎みてぇに綺麗な言葉吐けば何をやっても正義扱いだかんな」


 ダストは腕を組み人間がいかに理不尽な生物かと言いたげに右足で地面をコツコツとならす。


「貴様にしては珍しく興味深い話をしてくれる」

「ハッ、おだててた所で何も出さねぇぞ」


 魔将軍に褒められたダストは調子が狂うと言わんばかりに首を左右に小さく振った。

 

「そんなつもりは無いがな、では【闘者の斧】がある場所に向かうとする」

「ふん、転移魔法程度なら掛けてやらんことも無いぞ」


 ダストは魔将軍に向けていた視線を少しそらしながら小声で言った。


「フッ、では準備が整い次第ありがたく掛けてもらおうとしようか、丁度俺もその場所に辿り着く方法を悩んでいたところだ」


 魔将軍はどこか不器用なダストの背中をポン、と叩くと【闘者の斧】を入手する為の準備を整える為今居る部屋を後にした。

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