19話「合体魔法」
「分かった? ルミ、無茶な事したらダメだからね?」
「うぅ……お姉ちゃん、分かったよ……」
俺達が辿り着くとアリアさんに説教されてガックリとうなだれている少女の姿があった。
うん? 今ルミって言ってたよな? で、あの可愛い外見を加えると……あ! あれはルミリナさんじゃないか!
へぇ、ルミリナさんもこのギルドに入ったんだ、ふーん……って今アリアさんの事をお姉ちゃんって言ったよね!?
アリアさんとルミリナさんが姉妹って事だよね!?
「おはようございます、アリアさん、ルミリナさん。 ルミリナさんにカイルさんとルッカさんを紹介しに来ました」
「おはようございます」
「え? え? はわわわ……カ、カイルさん!? ふえぇ!? 私、もっと強くなってからお会いしたいと思ってましたよ!?」
どうも、ルミリナさんも俺がこのギルドに入った事は考えていなかったみたいで物凄くあたふたしている。
「そ、そっか、ははは、俺ももっと日にちをおいて冒険者として行き詰ったら相談しに来るかなーって思ってたけど、まさかこんな早く再開するとは思ってなかったよ」
「……カイル君?」
ルッカさんが、物凄い低い声で俺の名前を呼び、物凄く鋭い眼光で睨み付けている。
「カイルさん? その女性は誰でしょうか?」
ルミリナさんは単純に疑問を思って言っているだけだが……。
「え? あ、ただの同級生だよ?」
「はじめまして、ルッカです、この馬鹿とは永遠のライバルなので、プリースト風情が手を出さないで貰いたいですね」
ルッカさんは何故かルミリナさんに対して敵意剥き出しの喧嘩腰で対応をしている。
「はわわ、ご、ごめんなさい、何か私変な事言っちゃいました?」
ルッカさんから威嚇されたルミリナさんが仔羊の様に怯えている。
「手を出さないでって?」
「つっ……何でもないわよ!」
ルッカさんは唇を噛み締めながらそっぽを向いた。
「カイルさん、ルミリナさんをご存じでしたか? カイルさんにはルッカさんが居ますよね? へへへ、だからルミリナさんは僕が……」
俺にはルッカさんが居るってどーゆーこっちゃ? 誰があんな暇さえあればライトニングぶっ放してくる暴力女を。
「消えろ下衆共」
アリアさんが、右手から氷属性の魔法でも放つ勢いで言葉を投げかけた。
「わ、お姉ちゃん!? カイルさんは悪い人じゃないよ!?」
実際に魔法が放たれる事は無さそうだったが、それを見たルミリナさんが慌ててアリアさんを止めた。
「そう、貴方がルミを助けてくれたカイルなのね。姉としてお礼を言わせて貰う、有難う。 だからと言って勘違いするのだけは勘弁して欲しい」
勘違いって一体全体何の話? 言ってもこじれるだけだから止めとくけど。
「助けたって、俺何かしましたっけ?」
「ゴブリン洞窟の件」
「俺はただ一緒に依頼をこなしただけで助けたつもりなんて無いですけど」
「そう、貴方に取ってはそうかもしれないけど、私達プリーストにとっては助けたと同意義」
うーん、ルミリナさんが言うなら兎も角、思わず氷の魔女と言いたくなるアリアさんがそう言うなら多少なりとも信用出来そうだけど。
「そう言う物なんですかねぇ?」
しかし、リンカさんが言っていたプリースト像と真逆の事を言っているんだけど……。
「ルミが大袈裟に言った事は否定しない」
「えへへ……大袈裟になんか言ってないもーん」
はにかみながら嬉しそうにしているルミリナさん、その隣ではルッカさんが今にもライトニングを放ちそうなオーラを纏っている。
「ルミ? 彼が特別お人好しなだけで冒険者は野蛮な狼しか居ないと思いなさい」
「はーい」
むぅ、リンカさんが俺に言った事と同じ様な事を言ってる。
前衛職を食い物にするプリーストも居れば、プリーストを食い物にする前衛職も居るって事だろうか?
「ねぇ? カイル君? 明日のご飯がどうなっても良いかしら?」
「ん? どーゆー事?」
ルッカさんが俺の耳元で囁いた。
「カイル君? お塩って白いよね? お砂糖も白いよね? 間違って入れちゃったら大変だよね?」
「そうかもしれないけどそれはそれで面白いんじゃない?」
「もう! どうして君はそんなに鈍感なんだよ!」
ええー? 俺何か悪いこと言った? てか、ルッカさんが行き成り大声出すから周りの人達は思いっきり驚いてますよ?
「ルミ? 砂糖と塩を入れ間違えてもカイルは気にしないって」
「わーーーお姉ちゃん!? その事は内緒だよーーーー」
俺とルッカさんのやり取りの裏で、アリアさんとルミリナさんも小声で会話をしていたみたいだ。
この後、ルッカさんは機嫌を取り戻すことなくギルドハウスの中で不貞腐れ続けていた。
そんなルッカさんに対して、ヴァイスリッターの先輩達はこんな可愛い女の子の機嫌を損ねた奴は誰だ!? と言う噂で持ち切りになった。
ルッカさんは犯人について一切言わなかったが、居心地を悪く感じた俺は、仔羊様から教えられた事を練習しようとセザール学園に配備されている修練場へと向かった。
「合体魔法か……」
俺の持ってる4属性で一体何が出来るんだろう? 組み合わせは12通りある、取り敢えず地と炎で合体魔法を試してみよう!
俺は試しに『ストーン・アロー』を放った後、それに追従させる形で『ファイア・アロー』を放ったのだが、後から放った『ファイア・アロー』が『ストーン・アロー』に追い付けず魔法の合体は失敗した。
「ぐ……追いつけねぇでやんの……」
じゃあ、どうしよう?『ストーン・アロー』を斜め45度の角度で放って、後から『ファイア・アロー』をぶつけるのは?
そう思って試してみたが……。
先に撃った『ストーン・アロー』が落下し始めて地面に辿り着くまでの間に『ファイア・アロー』が到達できるタイミングがあまりにも短過ぎるせいで、俺の魔力が底尽きても成功する事は無かった。
「ぐぅ、タイミングがシビア過ぎる……」
魔力が底尽きてしまった俺は地面に大の字で寝っころがった。
「ほう、合体魔法の練習とは相変わらず熱心だな」
「ミュラー先生!?」
少しばかり天を仰ぎながら頭の中で考えていたら、俺のクラスを担任してくれたミュラー先生がやって来た。
「がっはっは! たまたまここを通ったら魔法の練習をしてるお前が目に映ってな、暫く見学させてもらったぞ」
「そ、そうですか」
「お前、左手から魔法使った事あるか?」
「剣を持ってる時は左手から発動させます」
「だろ? つまり、魔法って奴はどっちの手からも発動させる事ができるんだよ」
どっちの手からも発動させれる? だからどうだって言うんだろう? いや、右手から放って左手から放つならほぼ同時に出す事が出来るのでは?
「そうか! ちょっと魔力を回復してきます!」
「いや、待て、説明はまだ終わってねぇぞ……あーいっちまったか、まっカイルらしいっちゃカイルらしいな」
何でこんな簡単な事に気づかなかったんだろう? でも、おかげで合体魔法が完成させれそうだ!
俺は、はやる気持ちを抑えながらも魔力が回復出来る部屋へ小走りで向かい、魔力を回復させるとすぐさま修練場へ戻った。
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