林間学校⑩

ハイキングを終えた俺たち生徒一行は、バスに戻り近くのレストランで昼食を取った。昼食はバイキング形式だった。班ごとにテーブルと椅子が用意されている。食事中は少しぎこちなかった。右隣には真奈が左隣には植田さんがいる。2人からやや鋭い目線を感じる。そして、植田さんが俺にこう告げた。


「渡辺くん、帰りのバスで話があるの」




そして、昼食が終わると俺たち生徒はバスに乗り、東京に戻る。バスは行き同様、席は班ごとにまとめられている。


「渡辺くん、私たち隣同士の席だね」


植田さんが喋った。


「真奈に少し悪いことしたかも。でも裕奈と仲良く喋ってるし・・・」


しかし真奈は頻繁に後ろの俺たち2人を覗き見る。


「渡辺くん、いや優斗・・・これから和美って呼んで。優斗と真奈が名前で呼ぶようになったのに私はまだ名字呼びなのはなんか負けた感がして。私もこれから名前で呼ぶから」


植田さんは俺にささやくようにこう言った。そして、


「渡辺優斗くん。私、植田和美はあなたのことが好きです」


えっ・・・


「私も真奈同様、小中7年間ずっと女子校だったわ。だから男付き合いがよくわからなかったの。そして、高校で知り合った唯一の男子は優斗だった。正直タイプだと思った。私は優斗に一目惚れしたの。昨日の露天風呂で優斗が好きだと挙げたのに、平野先生は私ではなく真奈に告白しなさいと言った。その時私は負けたと思ったわ。でも優斗が真奈のことフッてまだ勝機はあると思ったの」


「ちょっと急すぎてわからない・・・」


「だから優斗、これから私のことを和美って呼んで。真奈は親友だと思ってるわ。だから真奈には負けたくないの。でも、私は真奈同様アイドルという立場だから恋愛してはマズいかなと思ってるの。だから今は返事をしなくていい」


「和美・・・」


俺はこう呟いた。そして真奈も、「和美、とうとう優斗に告っちゃったんだね・・・私も負けないよ」と呟いているのを聞いた。そして和美も、「真奈、絶対に負けないわ」と呟いていた。




学校に着いたのは夕方の4時前だった。明日は土曜日で、来週は連休。寮に戻る生徒もいれば、実家に戻る生徒もいる。とりあえず真奈も和美もこれから仕事漬けだ。連休が終わったら色々話そう。

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