林間学校⑨
林間学校3日目、最終日。
目が覚めたら朝の5時30分を回っていた。女子5人はまだ寝ている。結局あのついたてはベランダに置いたままだった。
俺は大浴場に向かった。露天風呂にも入ったが、さすがに朝は誰もいないようだ。
風呂から上がると俺は部屋に戻った。部屋に戻った時は女子が着替え中だったので数分待たされた。着替えが終わり部屋に入ると相川さんから、「優斗、おはよう」と言われ、小言で「私、まだあきらめないから」と言われた。
7時、大広間で班長会議。ただし今日は和室だった。平野先生と山口先生から今日の行程の説明を受ける。今日は午前中ハイキングで昼食後東京に戻るらしい。そして朝食の準備、その頃7時半の朝食に合わせて生徒が続々と大広間に入る。今日は和食だ。
朝食後は部屋へ戻り荷物をまとめる。9時、荷物を抱えてホテル1階のロビーに集合。大量の土産物を抱えた生徒もいる。集合後は平野先生から今日のハイキングについての説明があった。その後バスに荷物をまとめて、9時半に今日の目的地へバスは出発した。
約30分後、バスは目的地のハイキングコースに到着した。これから約2時間、班ごとで列を組みハイキングを行う。
ハイキングコースは平野先生曰く、起伏が緩い初心者向けのコースだった。ハイキングの案内をしてくれるガイドさんもいて、安全面には問題ないという。
ハイキング中、俺は相川さんと2人きりだった。少しぎこちない。しかし、常時数メートル後ろには他の4人もいる。なんか強烈な視線を感じるが。
「優斗、これから私のこと真奈って呼んで」
ハイキング中、相川さんは唐突にこんなことを喋り出した。
「なんで?」
「私が名前で呼ぶようになったのに、優斗は名字呼びのまま。なんかぎこちないの」
「別にこれから付き合うわけじゃないのに・・・」
「そうだけど、友達じゃない!」
「でもなぁ、友達だから名前で呼ぶってのもなぁ。名前呼びなんて名字が被るから区別するか、よっぽどの親友じゃないと・・・」
「優斗、お願い!さもないと私と優斗は付き合ってるってTwitterに載せて、私のアイドル人生を終わらせるわよ!」
「なんだよ相川!そこまで言うことか?」
とはいえ、そこまで言うことなら仕方ないな。もし相川さんが本当にこのことをしたら、相川さんのアイドル人生が終わるどころか俺も被害被る。
「仕方ない。ま、真奈・・・」
「ありがとう、優斗」
俺は真奈とハイキング中、こんなやりとりをしていた。
そしてハイキング開始から1時間が経過し、折り返し地点の展望台にたどり着いた。展望台にたどり着いた頃には6班以外の班がすでに到着し、これから山を下る班もいた。
「優斗、富士山が見えるよ~」
「おっ、そうだな」
俺と真奈のやり取り。
「私、みんなより先に優斗に告白してよかった。実は私の他に優斗が好きなクラスメイト、4人いるの。」
ああ、昨夜のあの件か。俺は残りの4人が誰かはわからんかったが。
「その中には、私たちと同じ6班の子もいたの。その子は親友だと思ってる。あ、裕奈も和美もうららもアリスもみんな親友だと思ってるからね!誰かは言わないよ!一瞬ショックだったけど、平野先生に一番相性がいいと思ったから告白しなさいと言われて勝ったなと思ったの」
そうだったのか。他の4人だったら植田さんが一番タイプかな。
「優斗はアイドルが恋愛をするなって言ってるけど、確かに事務所から最初恋愛禁止だと言われていた。でも私が高校生になってちょっと事情が変わったの。恋愛禁止から恋愛は自己責任に変わった。そういえば私より年上のメンバーはもう何人か付き合ってるという噂を聞いた。だから私も恋愛していいんだと思った。そして高校に進学して知り合った男子が優斗だった。私、小中7年間女子校だったから好きになる男子もいなかったし。私の学生時代で唯一できた男子の同級生は正直タイプだった。私はあの時優斗に一目惚れしたの」
俺は真奈の話を真剣に聞いていた。後ろには4人がいる。一体4人のうち、誰が俺のこと好きなんだ?
「あ、そろそろ下山しないといけないね。裕奈、和美、うらら、アリス!そろそろ帰路につくわよ!」
俺たち6人はこうして山を下りた。行きは1時間かかったのに、帰りは意外とテンポが早く進み、40分で着いた。ハイキングコースの出口に着く頃には、他の班とほぼ同じ時刻に着いていた。
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